第百六十話 最強の敵
第百六十話! やっと特訓終わり……
『脳筋か、お前は。いや、脳筋だよ、お前は』
僕らがおよそ1年の特訓の成果を見せるための実演発表を行った日の夜。僕はまた、夢を見る代わりに勇者アルスに意識を呼び出されていた。
「言わないで下さいよ……気にしてるんですから」
脳筋なのは自分でも分かっている。僕だってなりたくて脳筋になった訳じゃないのに……うん、これはフィーズさんのせいにしよう。そうしよう。
『いやその理論はおかしいだろ』
「時には現実を見ないことも大事ですよそんなことより、なんでここに呼んだんですか?」
『話を逸らすな』
知りませんね。
『まあ、いいか。じゃあ本題に入るぞ……こんなテンションで話すことでもないんだけどな……。じゃあ唐突だが質問だ。お前、自分でどのくらい強くなったと思う?』
……えっ? 急だな……どのくらい強くなったか、かぁ……うーん……少なくとも、『フォーマルハウト』に出てきた黒騎士とやりあえる程度にはなっただろうか……?
『お前それ本気で言ってんのか?』
うん、流石に自重しすぎた。多分だけど『絶望の魔眼』にさえ気をつけていれば余裕で勝てると思う。でも、フォーミュラに勝つのはまだきついかな……
『それでもまだ足りねえな。多分、頑張ればフォーミュラをスキルバーストなしで倒せる程度には強くなってるよ、お前』
え、嘘でしょ?
『ステータス上の変化はあまりないが、取れる戦術の幅が増えたんだよ。スキルが増えたのと、お前自身が戦い方を身につけたからな。少なくとも、前みたいに防戦一方なんてことはないだろうな』
へぇ……『神龍の翼』の人たちにボコボコにされ続けて気付いてなかったけど、そこまで強くなってたのか……
『本気で自覚がねえのが恐ろしいわ。てか神龍の翼がおかしいんだからな? あのパーティーを相手しようとしたら、多分俺でも手こずるぞ……』
勝てない、とは言わないのか。
『ん? まあな。流石に次元が違うんだよ』
それ、自分でいうのか……そういえば、よくよく考えたら僕って勇者アルスの強さをあんまり知らないんじゃないか? 確かにとんでもなく強いのは分かってるが……魔王との戦闘しかまともに見てないし。
『おぉ、確かにそれもそうだな。だったら……ちょっとだけやり合ってみるか?』
やり合ってみる、って……この空間で?
『安心しろ、手加減はしてやるからさ』
なんかちょっとムカつくな。これでも、僕だって……
「……お手柔らかにお願いしますよ」
そう言いながら僕は『修羅』を発動する。勝てるとは思っていないが、一矢報いるくらいなら……
『おっ、やる気満々じゃねえか。じゃあ────行くぜ?』
その言葉を言い終わった途端、勇者アルスの体がブレて……
『まず一回』
直後、額に激痛が走り体が吹き飛ばされた!! これは……デコピン!?
『おいおいどうした? 本番だったら一回死んでるぜ?』
攻撃が見えない……!? フィーズさんと同様、いや……それ以上に動きが速い! 痛みを感じて初めて、攻撃されたことに気づいた……近づくのは危険か……だったら!
「【フレイムランス】100連!!」
『おっ、近接戦をやめて魔法戦か? だが……それは悪手だと思うぞ』
その瞬間、形容しようがない恐怖が僕を襲う。まるで、本能が逃げろと訴えているような……
『残念、遅すぎだ』
その瞬間、莫大な量の魔力を含んだ勇者アルスの魔法が、溢れ出る光と共に【フレイムランス】をも全て飲み込みながら僕に近づいてきて────
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『……とまあ、これが今のお前の実力だ。俺が助けなきゃこっちで死んだ判定されて夢から覚めてたぞ?』
「桁違いすぎて分かりませんよ全く」
なんだったんだよこれ。ただただフルボッコにされただけじゃないか。
『確かにお前らは強い。お前とライアとフィリアは冒険者ランクで言えばSランクだろう。ケントとセイルもAランク上位はある。だが、この世界には常識外の化け物もいるってことだ』
…………なんも言えないな。フィーズさんとかもその一員だろう。
『あぁ。神龍の翼の奴らとか、剣聖とか……後、お前はウォードにも会ってたな、確か。あいつも全盛期は化け物だったぞ』
強い人は全員脳筋なのか?
『変な誤解をするな。まあ割と脳筋寄りの奴が多いのは事実だが……』
事実なんかい。
『とにかく! 確かにお前らは強くなったが……化け物と呼ばれる奴らには敵わん。それは理解したか?』
「……はい」
『そして、ここからが本番だ……俺たちが倒さなきゃいけない相手は……『背信の勇者』アルスは、その化け物の中でも化け物。このまま立ち向かったら確実に死ぬな』
……え?
終わる、よね?




