表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

152/204

第百五十二話 お茶会【第三章・第零章エピローグ】

第百五十二話、ついにエピローグです!

 焼けて一度はボロボロになったものの、森の魔力を吸ってまた少しずつ葉を付けていっている世界樹。その1番上の開けたところで、僕たち……シルファ様とシルクさん、そして僕はここ1週間のことを、世界樹の頂上を整備して作られた平らな広場で話していた。


「……なーんて、色々あったねぇ」


「ふふふ……そうですね」


 魔物たちの大侵攻から1週間が経った。僕たちはあの後、魔物の残党を(主にフィーズさんが無双して)倒し、世界樹と森の消火を(シェイラさんが5体のウォーターリッチを召喚して)行い、ケントとセイルが避難させた人々を村に(アルトさんが時空を繋げて)戻した。


 冒険者最強のパーティ『神龍の翼』。彼女らが最強と呼ばれる所以は、戦闘能力の高さだけではないということをしみじみと思い知らされた。


 村の人々の中には混乱している人もいたが、流石エルフ。僕たちの数倍長い年月を生きている人のほうが多いため、こんなことがあっても落ち着いている人のほうが多かったらしい。


 ただもちろん、自分たちの村が焼かれて平気というわけもなく、村には重い空気が漂っていたが……


「あぁぁぁぁぁ!! 見てられねえよこんなの!!」


 そんな空気に耐えかねたフィーズさんは、そう言うや否や森の方へと駆け出し……


「シルファ様! 少し木を伐採しても良いですか!?」


「え、ええ、構いませんが……」


「よぉぉぉし! わっしょぉぉぉおい!!」


 その掛け声とともに、あたり一帯の木を一瞬にして伐採し……


「うおらぁぁぁぁぁあ!!」


 そして、家や家具を作るのに使える材料にしてしまった。その間およそ30分。後に残ったのは、畑がおよそ10個は入るであろう大きな更地とフィーズさんによって加工された木材、そして無数の切り株だけだった。何してんだこの人。


「待ってろ! 今家を作って……」


「はい、フィーズストップ」


 どうやら新しく村をもう一つ作ろうとしていたらしい。発想も行動もぶっ飛んでるな。アルトさんが止めなかったら本当にやりかねなかったのが怖いところだ。


「何でだよ!? 村の人たちが……」


「いや、そもそも私たちエルフは、家がなくても森の中にいるだけで気持ちいいし……村を作ってるのはあくまで外敵から身を守るためだから、ね?」


「そう、だったのか……早とちりしちゃったな……」


「今度から気をつけなよ……本当に」


 早とちりで済ませていい領域を超えている気がするが、もう流すことにした。この人に常識は通用しないのだ。


 

 閑話休題(ひさしぶりだなこれ)


 とまあ、とにかくそんな感じで色々とあったものの、一週間もすればある程度混乱も収まり、魔物が来る前の『普通の生活』にもどったみたいだ。


 ただそれでも、変わったことがふたつある。まずは……


「こんな子供エルフが『世界樹の巫女』なんて……変に思われないかな、姉様?」


「大丈夫ですよ、多分。ラルク様もそう思いますよね?」


 シルクさんが『世界樹の巫女』になった……いや、戻ったこと。正直、シルファ様の方が100倍巫女っぽい気がしなくもないが……やっぱり、固有スキルの有無は大切らしい。


「似合ってますよ、シルクさん。それに、子供エルフって言っても本当は……」


「ラルクくん、首から上と下どっちがいい?」


 やっぱり『世界樹の巫女』向いてないよこの人。質問が端的にバイオレンスなのはやめてほしい。


 そして、もう一つは……


「兄様にも、見せたかったなぁ……また『世界樹の巫女』になった所を」


「そう……ですね」


 元々はこの村……もとい、エルフの里のナンバー2だったシェイドが居なくなったこと。シルファ様はそれを思い出してか、時折遠くを眺めてはため息をついている。シルクさんも、寂しいのかこの話題になると一気に口数が減るのだ。


 結局、あいつが何をしたかったのかは分からないが……もしかしたら、何か事情があったのかもしれない。


『まぁだとしても、俺はあのエルフは死んでも許さん』


「もう死んでるでしょうが」


 勇者と剣聖を殺し、実の妹を村から追い出し、挙げ句の果てに世界樹を滅ぼそうとして……たしかに、どんな事情があっても許されないことをあいつはしてしまったのだ……やっぱり、この話になると空気が重くなる……


「……はい、この話終わり! 折角のお茶の時間なんですから、楽しいお話をしましょう!!」


 ありがとうシルファ様!!


「そういえばラルクくん、フィリアちゃんとはどうなのかな? 私、保護者としていろいろ知りたいんだけど」


 何でそっちの話に持っていくかな!? あと保護者って前世の話でしょそれ!!


『あぁー、もう!! エフィーさん、こういう絡みは面倒くさいんだよなぁ……まぁ、俺じゃないから見てる分には楽だけど』


 どうやら勇者アルスも、シルクさんにこう言う話をされていたらしい……というかこの人、本当に勇者なのか? 性格が割とゲスい気がする。


「えっ、保護者!? エフィー、あなたまさか……子供を……」


 もはやシルファ様に関してはなにかあらぬ誤解をしているようだ。シルクさんは未婚者なので安心して下さ……未婚者、だよな?


「……シルクさん、色々と変な誤解を生むのはやめて下さいよ」


 全く、本当に……


「……えっと、エフィー、ラルク様。あれは……?」


 そう言って、シルファ様が指さした方向には……


「「「グォォォォォン!!」」」


 空を飛んでいる3体の黒いドラゴンがこっちに向かってきている……って、これは。


「何あれ!? 何なのあれ!?」


「あぁ……今回は最高のタイミングですね」


 そのドラゴンの上に立つ人影が、少し踏ん張ったかと思うと……ものすごい勢いでこちらに向かって飛んできた。


「……ぁぁぁぁあああ!!!!」


「ラルクくん、あれ大丈夫なの!?」


「はい、大丈夫ですよ。というか何かの間違いで怪我しててもほっといて下さい、懲りないので」


「「どういう意味!?」」


 そして飛んできた『それ』は、世界樹に足をめり込ませるように着地して…… 何事も無かったように立ち上がり、喋りかけてきた。


「今、恋バナの波動を感じたぞ!?」


「「えっ、生きてる!?」


 そこにいたのは、フィリアとライアを両脇に抱えたフィーズさんだった。抱えられていた2人は、とても顔色が悪い……だからこの移動方法はやめろって言ったのに。


「……まさかお姉ちゃん、そんな理由でボクたちと一緒にここに来たんじゃないよね?」


「……学園長、流石にちょっとひどいですよ」


「いやー……あの……」


 フィリアとライアもお怒りみたいだ。まあ、少なくともフィリアが言えた立場ではないだろうが。


「フィーズ……? エルフの里の見学を中止してまで、なんのためにここに飛んだのかな……?」


「あーあ、これはお仕置きかな〜?」


 フィーズさんに続くように、アルトさんとシェイラさんもドラゴンに乗って世界樹の近くまでやって来た。


「学園長、何で懲りないんですか……」


「というか何でシルク様とシルファ様と一緒にラルクがいるんだよ!?」


 さらに、そのドラゴンに乗っていたケントとセイルも連れてこられたみたいだ……これはフィーズさん、相当怒られるのでは……?


「えーっと、ラルクくん。これはどういう状況かな……?」


「すみません、全く理解できないんですが……」


「安心してください、それが正常です」


 確か前にも、こんなことがあったなぁ……


「で、フィーズ。もう……分かってるよね?」


 そう言いながら、いつも通りの無表情でフィーズさんに近づいていくアルトさん。


「嫌だぁぁぁぁぁあ!!」


「逃がさないっ! 『イリュージョンマント』!!」


「うわっ、ライアやめ────」


「はい、フィーズ確保っと」


 そして逃げようとするフィーズさんをものともせず、鮮やかな連携プレーで別の空間にぶち込んだ。また体感一週間くらい閉じ込められるのだろう。


「えっと……急な事でよくわかりませんが、とりあえず……皆様、お茶を飲んでいかれませんか?」


 シルファ様がそう言うと、魔法で人数分のお茶が淹れられていく。


「じゃあ、お言葉に甘えて……」

「いい匂い〜。何でお茶ですか〜?」

「お姉ちゃんの分まで用意されてる……」

「ありがとうございます! ラルク、一緒に飲も!」

「セイル、紅茶飲むときのマナーとかあるのか……? お、凄く美味いぞこれ」

「とりあえずマナーを聞く前に飲むのはやめようか、ケント」

「ぬぉぉぉぉ!! 私も混ぜてくれぇぇぇえ!!」


 ……とまあ、色々あったものの……別空間から強引に出てきたフィーズさんを含め、全員でお茶の時間をゆっくりと楽しむなか……僕はそんな様子を見ながら、ここでの出来事を思い出していた。


 急に戦いが始まったと思ったら、ルキアさんに呼ばれて前世の話をされて。僕が勇者の生まれ変わりで、魔王を倒さねばならないと伝えられて。フィリアとは前世からの関係だったと聞かされて……そして、皆と協力して世界樹を守り抜いた。


 ここに来てたった1週間……なんなら、今思い出したことは全部たったの1日で起きた出来事だ。本当に、もう色々ありすぎてまだ気持ちの整理がついていないが……


「……もっと、強くならないとな」


 この戦いで、自分の無力さを思い知らされた。自分1人ではどうにも出来なかった。だから、もっと強くならないといけないんだ。


「どうしたのラルク、急にそんなこと言って……何かあった?」


 隣で紅茶を飲んでいたフィリアが、不思議そうな顔でそう問いかけてくる。


「なんでもないよ、フィリア」


「本当〜? 悩みがあったら言ってね?」


 そう言って、僕に笑いかけてくるフィリア。


 ……この笑顔を守るためにも、もっと強くならないといけないな。もっと、もっと……


(……『僕』が、消えてなくならないように)


 『スキルバースト』……痛みだけじゃない、とんでもない代償を隠し持っていた、悪魔の力を使わなくてもいいように。

まだ『スキルバースト』の代償や、魔王アルスとの戦い、ルキアさんと邪神マキアの戦いなど色々残っていますが……とにかく、この章はここで終わりです!


まさかここまで長くなるとは、思いませんでしたねぇ……というか当初の予定では、物語そのもの150話くらいで終わる予定だったんですがなんやかんや追加されてここまで来ましたよホント。


しかし、30万字を超える量の文章を楽しく書けてきたのは読んでいただいた皆様のおかげです! 読者の皆様に読んでいただけたことが励みとなりここまで書くことが出来ました!


次回からは最終章:『武芸百般』編です! 物語のクライマックス、今までよりもさらに全力を出して書いていきますのでぜひぜひ最後まで見ていって下さい!


そして最後に、


『最終章頑張れ!』

『面白かった!』

『もちろんクライマックスは毎日投稿するよな?』


と思っていただけた方は、評価や感想をよろしくお願いします! 励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://ncode.syosetu.com/n6670gw/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ