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第百五十話 天をも穿つ全力

第百五十話! ぶっ飛ばせ、ラルク!!

「ラルク……お前……」


 僕がこの魔力弾を止める。そうフィーズさんには言ったものの……やっぱり、フィーズさんは本当にできるのか疑問に思っているようだ。でも、ここはなんとか説得して……


「……いいぞ、やってみろ」


「はい?」


「やってみろ、って言ったんだ。出来るんだろ?」


「いいんですか?」


 いや、たしかに出来るとは言ったし、出来る算段もやる決意もあるが……でも、こんなにすんなり許されていいのか? 


「いいんですか、って……やりたいのかやりたくないのかどっちなんだよ……お前のやりたいようにやれ、ラルク。これも()()だ」


 ……こんな時に、しかもここで初めて学園長みたいなこと言って……本当に、この人は。


「……分かりましたよ、学園長」


「おう、私は本体を探してくる」


 そう言って、飛ぶように去っていったフィーズさん。さて、後は僕がこれをどうするかだけど……


『これ、飛んでくるまでやることねえな?』


 そうなんだよな……僕がこの魔力弾を止める手段はふたつ。


 ひとつはあの魔力弾が飛んでくる前に消しとばす……無理だろ。僕が100人いても足りないよ。しかも、すでに『魔力操作』を破壊してしまっているから、たとえ一瞬でも魔力では競り合うことは不可能だ。


 だから僕が取れる方法は、ふたつ目……飛んできた魔力弾の勢いを利用し、なんらかの方法で吹き飛ばすか消しとばす。多分、『身体強化』あたりかな……


『ラルク……上見ろ、上』


「……マジか」


 さっきまでは魔力弾が膨張を続けていたのに、今はそれが止まっている……ってことは!!


『来るぞっ!!』


 勇者アルスがその言葉を言った直後、魔力弾はゆっくりと世界樹はの落下を始めた。


「まずは……スキル複合発動、『渾身の一撃』『当身』『覚醒』『縮地』『跳躍』『空中歩行』『受け身』『粉砕』『鋼の肉体』……『彗星跳(コメットジャンプ)』!!」


 僕はスキルを複合発動し、一気に落ちてくる魔力弾に向かって近づいていく。


『ラルク、策はあるのか!? なにを破壊するつもりだ?』


「それは……これだっ!! 『スキルバースト:覚醒』!!」


 その瞬間、僕の体にまた心臓を引きちぎられるようなあの痛みが走る。それでも……


「ぁぁぁぁぁあ……!! 痛い痛い痛い痛いっっ!! でも……さっきよりは……マシだっ!!」


 たしかにとんでもなく痛い。痛いが……何故か分からないが、まだギリギリ耐えられる痛みだ。さっきは本当に痛すぎて分からなかったが、体の底から溢れ出すこの力は……今までの僕の力とは、格が違う!!


「これが……『スキルバースト』……!!」


 これがスキルを破壊し、凄まじい痛みを受けることを代償に得られる力。これなら……()()()との約束も……


(……あれ、誰……だっけ……?)


 ……まあいいか。今は……この魔力弾を……!!


「っ!! でも、重いっ……!!」


 それでも……重すぎる……っ!! このままじゃ、押し切られて世界樹が……


「いや、まだ手は……」


 こうなったら、もう一つ……


『おい、ラルク!? お前まさか!!』


 ……もう一つ、壊すしか……


『落ち着け! お前、どうしたんだよ!? さっきよりは相当マシだが……あの痛みがもう一度だぞ!? お前の心が持たない……』


 僕の……心、か。なぜだろうか、さっきから、何故か……()()()()()()()()()。だから……


『……おい、ラルク!』


「行くぞ! 『スキルバースト:渾身の一撃』っ!!」


 『スキルバースト』連続発動。その代償は────



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 ……頭が痛い……確か僕は、『スキルバースト』を発動して……


『はぁ。だから言っただろうが……』


「ここは……?」


 魂の回廊のように、あたりが真っ白な空間。そして目の前に呆れ顔で佇んでいる勇者アルス。もしかして、僕死んだのか?


『違えよ。お前が馬鹿みたいに『スキルバースト』連発して気絶する寸前にこっちに()()()んだよ馬鹿。なに馬鹿みてえなことしてんだ、馬鹿か』


「……すみません……待って、今4回馬鹿って言った?」


『なに言ってんだ、調子乗って気絶して死にかけてる奴のどこが馬鹿じゃねえんだよ』


「ぐうの音も出ません」


 ……確かに、調子に乗りすぎてた気が……


『……って、言いたいところだが。ちょっとこれは訳が違うみたいだな?』


「……はい?」


『ラルク……お前、絶対に次のスキルバーストで決めろ』


「そのつもりですけど……」


『ならいい。あと、それは出来る限り使うな』


「え、どうして……」


『今は話してる暇はねえ……戻すぞ?』


「いや、ちょっと……」


『痛みに備えろ、ラルク』


 そう言う勇者アルスの表情は、今まで見せたどの表情よりも険しい顔をしていた……




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 よし、現実に意識が────


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」


 僕の……馬鹿っ……!! これは……ヤバい! 意識が飛ぶ!! 耐えろ、耐えろ僕!! ここで気絶したら……みんなが……


(みんな……? それって……)


 誰のこと……いや、そんなことを考えてる暇はない!! 今は……目の前の魔力弾を跳ね返すことに集中しろ!!


 僕は飛びそうになる意識を唇を血が出てくるほどに噛み締めることでなんとか保つ。痛みで気絶しかけている中、その痛みが意識を繋ぎ止めてるなんて……皮肉だな!!


「吹っ飛べぇぇぇぇぇぇえ!!!!」


 『スキルバースト』連続発動。その代償は、一度目とは比にならないほどの痛み。ただ……破壊したそのふたつを使えば!!


(最後の力を振り絞れ、僕……そして、僕のスキル!!)


「スキル複合発動!! 『渾身の一撃』『覚醒』×『スキルバースト』……」


 まさに、今の僕の全身全霊。溢れ出す力を一点に込めたその一撃は……


「『覚醒の脈動コール・オブ・ウェイク』!!」


 冒険者最強でさえ匙を投げた魔力弾をいとも容易く破壊し……世界を、揺らした。

『スキルバースト』まだまだ何かあるようですね♪

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