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第百四十九話 機械仕掛けの神

第百四十九話! もう全部フィーズさんに頼めば解決ですね(フラグ)

「……ふぅ、こんなもんかな。ラルク、大丈夫か? どこか怪我とかはないか?」


 僕が攻撃を凌ぐのさえ必死だったフォーミュラを、ほぼ一方的に蹂躙したフィーズさんが僕に向き直ってそう聞いてきた。


「え……あ、はい……」


 だが……僕は、その圧倒的な力を前にして何も言えなくなっていた。驚きと憧れが入り混じったみたいな感情。これが、『前人未踏』……冒険者最強の実力なのか。


『なんだ、この女……ホープと同じくらいゴリr』


 勇者アルスも驚いて、つい変なことを口走ってしまったみたいだ。まるで何者かによって全力で顔面を殴られた時のような音とともに喋らなくなってしまった……生きてるかな? いや、すでに死んでるんだけど。


「なにボケーっとしてんだ、ラルク。まだ気を抜くのは良くないぞ?」


「あ、すみません! それより、どうしてフィーズさんがここに? 確かシェイラさんが来れないって言ってたはずなのに……」


 そう、そういえば落ち着いて考えれば疑問に思うことがある。なぜこのタイミングで、フィーズさんがここに来たのかということだ。確か以前、シェイラさんは『今はまだ来れない』って言ってたのに……


「あぁ、それは……国の上層部の奴ら(ガンコジジイ)とちょっと『お話』してきただけだ。なんか、私の可愛いライアに危機が迫ってる気がしたから……ま、いわゆる女の勘って奴だよ」


 色々とおかしいよこの人。なんでそんな気がする、ってだけで国に歯向かってんの? しかもなんで納得させてんの? というか、それはもう女の勘というよりは……


「いや、もうそれは野生の……」


「ん? 誰がゴリラだって?」


「一言も言ってないですけど!?」


 今、一瞬だけど確かな殺気を感じた。僕もフォーミュラと同じ目にあうところだっ……いや、違う。今の殺気は()()()()()()()()。まさか、まだ……


「おいラルク、どうした?」


「フィーズさん! もしかしたら、フォーミュラはまだ……」


「嘘だろ!? あれだけ殴って死なないなんて有り得ないだろ……なあ、ラルク。あれ……なんなんだ?」


 そう言って、世界樹の方向を指差すフィーズさん。その先には……まだ燃えている世界樹と、その上にあるとてつもなく巨大な、白く輝く球体があった。


 フォーミュラめ、まだあんな魔力を隠し持って……いや、僕たちに気づかれないように森の残りの魔力をかき集めたんだろう。


「フィーズさん、大変です! あれはフォーミュラの魔力弾……あいつ、完全に世界樹を道連れにするつもりです!!」


「あんな魔力の塊、見たことないぞ……私でも止められるか……」


 そんな……


「とにかく、近づくぞラルク! 着いてこい!」


「はいっ!!」


 もしかしたら、何か出来ることがあるかもしれない。そんな一縷の望みに賭けて、僕たちは世界樹へ向かって『空中歩行』を駆使して全力で向かっていったのだった。





「うわっ……これ、私じゃどうしようもないぞ……精々、衝突した時の衝撃を少し相殺できるかどうか……」


「そんなの……絶望的じゃないですか」


 世界樹の近くまで来たはいいものの、結局打つ手がないことに変わりはなかった。フィーズさんでもお手上げ、かと言って本体(フォーミュラ)を探して叩く時間はない……どうすれば……あっ!!


「フィーズさん、アルトさんならなんとかできるんじゃ!? あの人の能力なら……」


 アルトさんの能力、詳しいことは知らないけどきっと大きな空間を作り出したり、瞬間移動が出来たりする能力なんだろう。入試の時にも学園を完全にコピーしてたし……


「無理だ。そもそもあいつはここまで来れない」


「なんでですか!?」


「アルトの能力……『空間操作』はその名の通り空間を作り出したり空間内を転移したりとなんでもできる能力なんだが……あいつが転移できるのは、『一度自分の足で行ったことがあるところ』だけだ。アルトはこの里の生まれだが……王族じゃないから、ここに来たことは多分ない」


 つまり、本当に打つ手がないってこと……? シェイラさんはテイマーだから、多分こういうのには向いていないだろうし……


『……いや、ラルク。まだ手はあるぞ』


 諦めかけたその時、勇者アルスが僕にそう話しかけてくる。まだこの状況を挽回する手段があるのか……!?


『なあ、ラルク。お前も気づいてるんだろ。本当はまだ出来ることはあるってことに』


 …………いや、そんなことは……


『本当か? もしここで逃げたら……一生、後悔することになるぞ?』


 …………たしかに、勇者アルスの言う通りだ。まだ一つ、たった一つだけこの魔力弾を止められる方法があるとしたら……それは……


『だが、俺から言っといてなんだが……ここの選択は、お前に任せる。命賭けて世界樹を守るか、自分の命を大切にして運命を受け入れるか……どっちを選んでもいい。どんな選択をしようと、お前が責められる筋合いはないからな』


 ……僕は、どっちを選べば……もしここで()()を使えば、もしかしたら僕は壊れてしまうかもしれない。でも、ここで使わなければ……世界が、終わるかもしれない。


 僕はどうすればいい? 正直言って、今ものすごく怖い。もしもあの痛みに耐えられなかったら。もしも心が壊れたら。もしも失敗したら。そんな想像が、頭の中を駆け巡る。でも……


『ラルク……みんなを、よろしくね?』


 でも、それよりも……自分でもおかしいと思うけど、それよりもフィリアとの約束を破るのはもっと怖いんだ。もっと嫌なんだ。フィリアに嫌われるのも、フィリアの悲しい顔を見るのも、あの痛みよりも僕にとっては苦痛なんだ。だから……


「フィーズさん、一つ提案があります」


 僕はやってやる。たとえ、僕がどうなるかわからないとしても。


「……ラルク?」


 やってやるさ。たとえ、この想いが借り物だとしても。


「あれは……僕が止めます。絶対に止めてみせます」


 僕が……『スキルバースト』を使って、この魔力弾を止める。フィリアとの約束を守るために。

意地を見せろ主人公!!

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