第百四十五話 スキルバースト
第百四十五話! 忘れ去られたあの能力が登場!?
『3-2-1────go』
その声と共に、発射されてきたのは……目の前を埋め尽くすほどの、夥しい数の魔力弾。今すぐ『電光石火』を使っても……
(避けられない!!)
1発だけなら当たっても大丈夫。だが、ここまでの数となると……この攻撃が終わった時には、僕の体には風穴が大量に……
(嫌だ、死にたくない────!!)
まだ、死にたくない。死ねない。でも、相殺のために魔法を唱えている暇はない。今は『思考加速』で思考のみを早くしているからいいものの、声に出した詠唱はもちろん仮に【無詠唱】を使っても発動までのタイムラグで食らってしまう。
(ここで終わり……)
もう、打つ手なんて残されては……
「『索敵』! 『魔力操作』!!」
そう諦めかけた瞬間、僕は無意識にその2つのスキルを発動して目の前の魔力弾の弾道を触れることなく逸らしていた。まさか、これは……『武芸百般』LV3の力だ! 最近は使わなさすぎて忘れていたが、前にも……
(『受け流し』『受け身』『縮地』『反撃』!)
ブラックオーガ5体と戦った時に、スキルを無意識下で発動していたのを覚えている。でも、どうして索敵が使えたんだ……あ、もしかして、もうこの森に、僕の索敵を妨げるほどの魔力は残ってないのか……!?
目の前の魔物、フォーミュラが森の中の魔力をかき集めたせいで……皮肉にも、僕の命は救われたってことだ。
「素直にありがとう、なんて言えないよな……」
たしかに、そのおかげで今は迫り来る魔力弾の弾道を逸らし続けているものの……『索敵』が使えるってことはつまり、それだけ魔力の密度が下がってるってこと。
それは、今まで森にあった膨大な魔力の大半がフォーミュラに集まっていることの証明でもある。僕は今、そんな奴と対峙しているわけで……
『これは、ちょっとキツいかもな……』
正直、勝ち目がない。相手の攻撃を受け切るので精一杯なのに、ましてや攻撃なんて……
まず魔力や魔法による攻撃、これは論外だ。多分だけど今のあいつの魔力量は僕の100倍くらいある。そもそも、多分まだまだ本気じゃないだろうから……放った魔法も含め僕ごと吹っ飛ばされる。
物理攻撃なら……当たればダメージは与えられるかもしれないが、多分近づいたら今より強い攻撃を撃たれて即死する。もしかして、詰み……
(……いや、無いわけじゃないのか)
『ラルク……多分、あれしかないぞ』
勇者アルスも気づいたみたいだ。もし今、あいつに対抗できる手段があるなら……
『「さっきの……使うしか、ないか」』
さっき『魂の回廊』でレベルアップした『武芸百般』の新しい力、スキルを破壊する能力。ルキアさんがさっき、スキルを破壊したら強くなる……という旨のことを言っていた。
『だが、上手くいくとは限らねえぞ? それに、まだ手段は……』
「確かにそうだけど……」
まだ、考えれば手段はあるのかもしれない。でも……さっきから気になっていた、あのカウントダウン。50%、ってことは……あと半分で、何か起こるってことだよな?
『……ああ、確かにそうだな。使ってみる価値はある』
それに、神様からのお墨付きももらった能力だ。賭ける価値はある! 僕はそれを使おう……と、するが。
「…………ふぅ……」
『……なんだ、この悪寒……?』
この能力を使おうとすると、何故だかわからないが……背筋に悪寒が走る。まるで、僕の中の何かがそれを拒否しているかのような。
それでも僕は……覚悟を、決めた。
「行くぞ、『武芸百般』レベル5……」
まだ、一度も使ったことはないが……流石、固有スキル。使い方が分かる。この能力は……
「『スキルバースト:魔力操作』発動!!」
僕は『魔力操作』を対象に新能力『スキルバースト』を発動する。その瞬間……
「痛っ────ぁぁぁぁぁあ!!!!」
今まで体験したどの痛みとも違う、今まで体験したどの痛みよりも痛い、心臓が引き裂かれているかのような尋常じゃない痛みが僕を襲う。
『いっ……でぇ……!!』
痛みで薄れる意識の中、必死で目の前の魔力弾を制御しながら意識を保っていると勇者アルスの堪えるような声が頭の中に響いてくる。まさか、あっちにも影響があるのか!?
信じられないくらい痛いし、信じられないくらい辛い。でも……体の中心から、力が溢れ出してくるのを感じる。これは……ルキアさんの言っていた、『力』?
「今、ならっ……動け!!」
魔力弾を逸らすだけじゃない。跳ね返すようなイメージで動くように念じる。今まではそれが限界だったが……なんと魔力弾が僕の思った通りに、フォーミュラに向かって返されていく!!
『error! error! 対象ノ急激ナ能力ノ変化────及ビ、攻撃ヲ確認! 防御プロトコル起動!!』
攻撃が通ってる!! まだまだ痛みは引く気配もなく、本調子じゃないが……これは、いけるかもしれない!!
これを読んだリア友『うん、最終回まで何となく読めた』とのことです。分かった方は多分正解なので感想欄に書かずに心の中で『作者ざまぁw』と笑ってあげてください。作者が泣きます。




