第百四十四話 formula
第百四十四話! 今回の敵は一味違う……?
「なんだよ……これ……!?」
僕はフィリアを逃がした後、シェイドの所に戻っていっている途中。遠くに見えるその存在は、信じられないほどに強い光と魔力を放っていた。
まるで太陽が地上に降りてきたかのような眩い光。それは少しずつ輝きを増していっているのが見てわかる。まさか……まだ魔力を集めているのか?
ただ魔力を集めるだけの行為。ただそれだけのはずなのに……不気味だ。不気味すぎる。一体、何をする気なんだ……?
そう思って、ほんの少しスピードを落として近づいていくと……無機質な声が聞こえ始めた。
『充填率……42%……43%……』
充填率? 充填率って、魔力を何かに使うつもりなのか……?
何をしたいのか分からないまま、そのカウントはどんどん進んでいく。下手に手を出すのが危険だと判断した僕は、とりあえず待機することに……
『充填率、50%。準備完了。作戦開始……異常ヲ検知。殲滅ヲ開始。3-2-1────go』
その声と共に……目の前の存在から、僕に向かって魔力の塊が……
(死ぬ!!)
目に見えて分かるほど高密度な小指くらいの大きさの魔力の塊が何発も、目に見えない程の速度で向かってきている。このままじゃ、撃ち抜かれる!!
「危な────『Next,3-2-1────go』そんな!?」
まだまだ飛んでくる!? 弾道は直線だけど、本体から僕を追尾するように飛んでくるのが厄介だな……!
『生体反応ノ維持ヲ確認……警戒ランク上昇。貯蓄魔力ノ使用ヲ許可:現在1%……殲滅可能性────現在、不明』
警戒ランク、上昇……? 一体、なんの……
『phase-1---【開 演】』
「────っ!! 『電光石火』!! さっきまでは手を抜いてたってのか!?」
まずいまずいまずいまずい!! 変なことを言い出したと思ったら、さっきとは比べ物にならないくらい多い量の魔力弾が飛んできてる!!
とにかく避けないと────
『おい、落ち着け』
……ん? この声は……
『俺だ、俺。アルスだよ』
何で!? なんで勇者アルスがルキアさんみたいに僕に話しかけてるの!?
『いいかラルク、何が起こってるのか分からないと思うが……そのままアイツの攻撃を避けながら聞け』
「この状況をスルーしろと!?」
僕は目の前から放たれる攻撃を全力で回避しながら、全力でツッコミを入れる。色々と訳がわからないんだよ……!
『そうだ、諦めろ。それにお前、焦ってる割にツッコミを入れられるくらいにはまだ余裕あるだろ』
あ、たしかに……よく考えると、数が多くなっただけでまだ全然避けられてるしな……
『生体反応ノ維持ヲ確認。警戒レベル上昇。使用許容量ヲ5%ニ増加、phase-2、移行中……』
あれ? 急に攻撃が止まった……よし、今のうちにこいつを破壊して……
『やめろ!!』
「えっ!?」
しまおうとした瞬間、勇者アルスにやめるように指示された。なんで……?
『いいから俺の話を聞け。迂闊に攻撃すると死ぬぞ!』
「でも────」
『いいから聞け!』
いままでのフランクな話し方とは違う、切迫詰まったような言い方だ。これは本当に聞いた方がいいんじゃ……
『いいか、一回しか言う暇が無いからよく聞けよ! 多分だが、お前の相手は……強さだけ見ればEランクの魔物だ』
…………は?
『驚くのも分かるが聞け! お前の目の前にいるのは、たしかにクソ弱いEランクの魔物だ。だが、そいつは普通の魔物じゃない……厳密に言うと、生物に寄生する習性を持つ超小型の魔物だ!』
生物に寄生する超小型の魔物……ばい菌みたいなものかな?
『とりあえずはそう思ってくれていいぞ』
最近心を読まれても動じなくなってきてしまったことについては何も考えないことにしよう。
『その魔物……フォーミュラっていう魔物なんだが……そいつ自体はクソ弱い。逃げ足が早いだけで、子供でも余裕で倒すことができる。だが……何かに寄生した時点で、そいつの戦闘力は格段に増す!!』
でも、寄生ってことは元が弱ければそんなに強くならないんじゃ……
『フォーミュラの怖いところはそこだ! アイツは……寄生した対象の力を限界を超えて引き出すんだ』
限界を超えて、って……
『基本的に人間含めて全ての生物は、自分の力にリミッターをかけて、100%は出さないようにしてるんだ。だが、フォーミュラにとってそんなものは関係ない。奴は寄生した対象の100%の力……いや、さらに生命力も使ってそれ以上の力を引き出すんだ』
そんな恐ろしい魔物が……!? だとしたら、一度は聞いたことがあるはず……
『いや、ないと思うぞ。だってフォーミュラはほとんど存在しない魔物だからな』
え? どういうこと?
『フォーミュラは元々、SSランクの魔物……ミスリルゴーレムっていうやつの核の欠片が魔力を浴びて突然変異を起こしたものだ。だから────』
勇者アルスがその続きを言おうとした瞬間、さっきから動かなかったフォーミュラがまた無機質な声を発する。
『phase-2……【転機】』
『クソ、もう攻撃が……ラルク、とにかくそいつの弱点は核だ! クソ野郎の体に埋まってる核をなんとかして吹き飛ばせ!!』
「分かりました!!」
なるほど、シェイドの体に埋まってるフォーミュラの核を……そう思ってシェイドの方を見ると、大量の弾幕が僕に向かって射出されようとしている────!?
『3-2-1────go』
Fatal errorとか使ってきそうですね(使いません)




