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第百三十三話 代償

第百三十三話! アルスはどうなるのか……!?

「俺が……消える?」


『そう……あなたの魂は、魔王を倒そうが倒すまいがこの世界から消え去ります』


 そんな……どうして……!


『人の魂は、魂の回廊(ここ)を永い時間をかけて通り輪廻することでその形を保つ力を回復します。しかしあなたの場合、輪廻することなくもう一度元の世界へと帰ることとなりますので……魂は生きることの負荷に耐えきれず、消耗していきいずれ消えます』


 つまり、もし転生したら俺は絶対消える……ってことか……あれ?


「それって、転生した後の俺が10歳になるまで耐えられるんですか?」


『無理ですね。持って1年といったところでしょうか?』


「それって詰みじゃないですか」


 ってことは、転生しても意味ないんじゃ……


『流石にちゃんと考えていますよ。確かに、あなたの魂は普通に活動すればおよそ1年で消えてしまいます。ですので……基本的な生命活動は、あなたの半身に任すことにします』


 俺の、半身……?


『言ったでしょう、欠けた部分の魂を【創造】すると。その作られた魂は、あなたとは違う人格を持った、別人の魂です。なのであなたの魂が休眠状態となっていても、普通に活動が可能なのですよ』


 魂って半分でも生きる上では大丈夫なのかよ……


『というより、半分でも活動可能な魂を私が作るので』


 もうなんでも作れるな女神(アンタ)


『まあ、2人の魂を合わせて一つの魂にするので、あなたの影響を強く受けるとは思いますが……基本的には、そちらの魂のほうに体の主導権を預けておけばよいのです』


 なるほど、つまり俺は大事な時まで休んだかってことだな……


「でも、もしもその半身が強くなろうとしなかったとしたら?」


『それはほぼ有り得ませんね。その半身の魂は、あなたの魂をベースに作りますので……』


 ……そうか。じゃあ、心配いらないな。


「ルキアさん、俺……その話を受けます」


『……良いんですか? あなたは、消えてしまうのですよ?』


「それでも俺は、この世界を守りたい」


『本当ですか?』


「本当です」


『後悔しませんね?』


「さあ? それは……結果次第でしょう」


 どうせこのまま輪廻しても、俺に殺されるだけ。だったら……お前(おれ)も道連れだ。


『……本当に、あなたたちは……似たもの同士ですね』


「あなたたち? それって……」


『ホープですよ。彼女も輪廻せず、転生することを選んだのです』


「えっ……!?」


 ってことは、ホープも消えてしまうんじゃ……!


『安心して下さい。彼女は魂が全て残っているので、また別の方法で転生させました。詳しくは長くなるので言いませんが、彼女の魂をコピーして作った新しい魂と彼女の魂を紐付ける……といった感じですね。なので大丈夫ですよ』


 そっか……ホープは消えずに済むんだな。


「よかった……」


『ふふふ、あなたは優しいんですね?』


「いやっ……それはまぁ、あいつは妹みたいなものなんで……」


『妹、ですか。聞きました? ホープ』


「えっ」


 今、なんて……


「アルス、酷いなぁ? 私はアルスのこと大好きなのに」


 あぁ、この声は……もう2度と聞けないと思ってたのに……


「ホープ……!」


 俺が振り向くと、そこには……頬を膨らませながら、怒った仕草をしているホープがいた。


「アルス、私、怒ってるんだよ? せっかく命がけで逃がしたのに死んじゃうし、私のこと妹としか見てないなんて言うし、世界壊しそうになってるし……」


『安心して下さい、ホープ。アルスはあなたがいなくなったときに引くくらいショックを受けてましたから』


「ルキアさんっ!?」


 それは本人の前で言われると恥ずかしすぎる……!!


「へぇ……? アルス、口ではそんなこと言うくせに……」


「調子に乗るな」


「痛っ!?」


 このチョップした時の感覚……間違いない、本物のホープだ。


『判断基準どうなってるんですか』


「なんで叩かれないといけないのぉ……」


「うーん……前のサマーソルトの仕返し?」


 ホープと当たり前にこうやって話せるのが、どうしてこんなに嬉しいんだろう……? やばい、これ以上話してると泣きそうだ……


『……ホープ、そろそろ時間ですよ?』


「もう転生しないといけないんですか? まだ話したいことが……」


 ルキアさん、ナイスタイミング。さすが女神……


『魂のコピーは完了しましたから。それに、アルスの涙腺も限界のようですし』


 訂正。やっぱりあんた悪魔だわ。


「そうですか。じゃあ、アルス……私は先に行っとくから」


「おう、行ってこい……またな」


 さっき再会したばっかりなんだけどな。


『それでは、ホープ……あなたに、(わたし)の祝福を』


 ルキアさんのその言葉とともに、ホープの体はこの場所から消える。行っちゃったな……


「ルキアさん、俺はまだなんですか?」


『あなたはもう少し後ですね。それにしても……こんな奇跡があるものですか』


「なんの話です?」


『いいえ、別に……ふふふ。やはり神に成ろうと、運命には勝てない……ということですか』


「……?」


 この女神(ひと)は何を言ってるんだ……?


『そうそう、アルス。あなたに1つ教えておきましょう。ホープは、あなたがどうなるか……つまり、あなたが消滅することは知りません。それを伝えるのか、それとも伝えないのか……それはあなた自身で決めなさい』


「それは……今はまだ、考えなくても良いですかね」


『ええ、時間だけはたっぷり有りますから』


 ……多分、教えないだろうな。俺はわがままだから、ホープの泣き顔は見たくないんだ。


『……そろそろ、あなたも時間です。準備はいいですか?』


 おっと、もうそんな時間か。


「準備って……心の準備以外、特に何もすることないでしょう」


『言ってみただけですよ』


「とりあえず……俺はいつでも」


 そんなもん、ホープが転生した時点でもう腹は括ってるさ。


『そうですか……それでは最終確認です。あなたはこれから、とある田舎町に生まれた子供として転生します。そうですね……大体生まれて6年後くらいに1度だけあなたを起こしますので、その時に状況は把握してください』


 起こすって……どういうことだ?


『まあ、それはいずれ分かりますよ。()()衝撃を与えるだけなので安心して下さい』


 本当に大丈夫か、それ?


『まあ、それはもういいでしょう。そんなことより、あなたの目的は覚えていますね?』


「魔王を……いや、俺を殺すこと」


『正解です。恐らくですが、奴のほうもしばらくの間は活動しません……というより、力が体に馴染むまでの期間は行動を起こせません。その間、およそ12年ほど……それまでに、何としても奴を……背信の勇者を仕留めるのです』


「もし間に合わなかったら?」


『勇者の力と魔王の力が完全に馴染み、神々(わたしたち)以外の誰も手がつけられなくなります。そうなれば勝ち目は勝ち目はほぼゼロと言っていいでしょう……なんせ、私たちでも手こずるでしょうから』


 うん、それは詰みだな。


「分かりました。全力を尽くします」


『それでは……あなたに、(わたし)の祝福を』


 その瞬間、意識が途絶え……俺は、ラルクという少年に転生したのだった。

そして現代へ────。

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