第十三話 格上との戦い
本日から少しの間忙しくなってしまいますので一日一回更新となります。すみません…
(今日のは、本当やばかったなぁ…)
手帳に今日の出来事を書き込みながら、僕は今日の戦いのことを思い出していた。
ホブゴブリンファイター。第一層のレアボスモンスターであり、ゴブリン種の中では高い防御力と体力、そして攻撃力をもっている、推奨レベル12のモンスターだ。
普通のゴブリンよりも背丈が高く、体も筋肉質で硬いという近接戦闘向きのモンスターでもある。
これは、およそ第三層のボスモンスター並の力がある。冒険者ランクに合わせると大体ランクEの上位層が相手するくらいの敵だ。
対して僕のレベルは5。相手の方が圧倒的に強い…しかし、ボス部屋は入ってから5分間は決して逃げられない。
(やるしか、ないか)
覚悟を決める。あちらからは向かってこない…が、既に戦闘態勢をとっている。近づいたらまずい。なので僕は袋から石を取り出し…
「おりゃぁぁ!」
思いっきり投げた。それはホブゴブリンファイターに着弾した!
が、ホブゴブリンファイター…以下ファイターは、少しのけぞっただけだった。しかし、僕を「敵」と認めたようで、こちらに一気に近づいてくる!
「グギャギャ!」
(早いっ!)
「一旦引く!【ウィンド】!」
僕は咄嗟に風の初級魔法【ウィンド】を使用し、ファイターから距離を取る。しかしそれでも、ファイターはじりじりと距離を詰めてくる。そこで…
「【アースウォール】!!」
今度は土の初級魔法【アースウォール】を使い、さらに飛距離を伸ばして逃げる。が、しかしそれも長くは続かず、ついに部屋の端に追い込まれる。
「くそっ…『投擲』!『投擲』!」
やけくそのように石を投げまくるが、全て回避されてしまう。
「嘘だろ…!くそ!【ファイア】!【ウィンド】!」
初級魔法で追い払おうとするも、ファイターには全く効いていない。
「グギャギギ…!」
追い詰めたぞ…と言うようにファイターは鳴き、僕にゆっくり近づいてくる。僕には、もう打つ手がない。これで終わりだ…そんな表情を浮かべる僕に、ファイターがゆっくりと近づいてくる。そして、持っておる棍棒を振り上げた。
(もう終わりだ……なんてな!!)
この時を待っていた!!今までの行動は全て演技…『近づいてしまえば僕は何もできない』とファイターに思わせて油断させ、弱点を晒させるための、演技だった。
狡いだって?関係ないね。格上に勝つにはこのくらいしないと無理なんだ。
訪れた千載一遇のチャンス。ここを逃せば勝てない。だから僕はしゃがんで、足腰に力を入れる。ファイターは攻撃をやめ防御しようとするが、もう遅い。
僕はすでに小声で光の初級魔法【ホーリー】を詠唱し終えている。これにより、僕の拳はいま、魔物に対しての特攻を持っているのだ。
それに加えて、全身全霊の力を込めた、これぞまさに…
「くらえ…『渾身の一撃』!!!」
「グギャェェェァァァァア!」
思いっきりファイターの腹を殴る。ファイターの腹に拳がめり込んで、口から血を吐く。
そしてさらに体内で…
「とどめだ…喰らえ!【ホーリー】!」
ダメ押しの光魔法を放つ。すると、ファイターは動かなくなった。さらに、頭の中に「レベルアップしました」という声が何度も響き、体の中から変な感じがする。つまり…
「僕の、勝ちだ…」
格上との戦闘。それを、今日僕は初めて経験した。戦闘中は気にしなかったが、僕は命の危機にあったのだ。そう思うと、鳥肌が立ってくる。
でも、僕は勝ったのだ。そう思い、ファイターの魔石を取り次の階層に向かった。そしてそこで「帰還の宝珠」を使い、地上へと帰るのだった。
ステータス(3日目終了時)
ラルク LV.8
職業:冒険者
HP 52
魔力 52
力 65
器用 39
敏捷 78
運 74
固有スキル 『武芸百般』
ノーマルスキル
「投擲」LV5 「渾身の一撃」LV5「魔力操作」LV9
「初級魔法・全属性」LV- 「魔力回復」LV2 「隠密」LV3




