第百二十八話 世界の真実
第百二十八話! 魔王様、語る。
「世界の真実……!?」
『ああ、この世界は……邪神と女神のゲームなのさ。いや……ゲームというより、代理戦争ってとこか?』
「……続けてくれ」
こいつは一体、何を言って……
『これは俺が邪神から聞いたことだが……何もなかったこの世界には元々、2人の人間がいた。名を、マキアとルキア。その2人は……まさに、正反対だったんだ』
今、ルキアって……!
『暴力的な男のマキアと、大人しい女のルキア。常に変化を求めるマキアと、秩序を求めるルキア。その2人は正反対ながらも上手くやっていたらしい』
大人しい、女……やっぱり。
『そして、その2人の最も正反対だったところは……生まれていた時から持っていた『力』だ。マキアは自分の思うがままに全てを破壊する力を、ルキアは自分の思うがままに全てを創造する力を持っていた』
2人ともチートじゃないか。
『だからこそ……何もない場所に生まれ、悠久の時を生きる正反対の2人にとって、それは必然だった』
「……ああ、そういうことか。理解したよ」
……どういうことだ?
『ルキアは天と地を作り、海を作り、人間を作り、亜人を作り、それらに知恵と進化する力を与えた。マキアはその力で秩序を守り、誤った道を進む可能性を壊して正しい進化へと導いた』
……いいことじゃないか。
『だが……マキアは、それに飽きてしまったのさ。秩序、安定、正しさ……彼にとっては、そんなものはゴミでしかなかった。だから彼は……物を破壊した時に生まれるエネルギーを使って、破壊を望む存在……僕たち魔族と、魔物を生み出した』
それが、さっき言っていた……必然?
『もちろん、ルキアはそれを良しとしなかった。だが……奴らは正反対。意見が合うはずも無かったのさ。でも、もし2人が本気で戦い合えば……世界は消え、何も無い完全な無になる。それは互いに望まなかった』
……っ!! そういうことか……!
『だから、彼らは考えたのさ……マキアの生み出した魔族と、ルキアの生み出した人類。その2つに互いのシンボルとなるものを破壊させよう……とね』
でもそんなの、ルキアさんの一人勝ちじゃ……
『もちろん、あくまでこれはゲーム。理不尽のないようになんやかんやルールの調整はしたらしいが……そんなことはどうでもいい。大事なのはその勝利条件だ』
それって、いったい……
「『世界樹』の破壊と、『魔王』の殺害……ってとこか」
『正解。まあ厳密にいうと、後者は僕の持つ魔王の力の消滅だけどね。互いに生み出した種族に力を与え闘争を行わせて、勝ったほうの望むように世界を変える。その上で、自分たちは特定の能力を持ったもの以外と干渉しない……それが奴らの決めたルールだったんだ』
そんなことが……!
『だから今、僕たちはこうやって争ってるのさ。この世界にいる生き物も、自然も、ダンジョンも……全て彼らの生み出したものさ。そしてボクも……死ぬことを許されていない、邪神マキアの1番重要な駒さ』
だから、人類と魔族はずっと……!!
「……そうだったのか……まあ、何というか、変な感覚だ」
『……だろうね。感じられるわけがない』
……本来なら、ここで怒りとか裏切られたみたいな感情が湧いてくるはず。それなのに……どうして、何も感じないんだろう?
『だって、僕たちは駒……どう生きようが、なにを感じようが奴らは干渉できない。ただ……奴らは2人とも、奴ら自身への反抗だけはボクたちに許さなかった』
……だから、か。変な感覚だ……特に何も思わないが、少し悲しい。
「……だとしたら、これは……この感情は、何なんだ?」
『君は……目覚めたんだね、奴らの呪縛から』
……何の話だ?
『そう、僕たちは……奴らに最も近い力を与えられた……といっても、君は少しイレギュラーらしいけどね。だが、僕たちはそのおかげで……その則をほんの少し破ることができた。抱くことができたのさ。奴らへの反抗心を』
「ああ、ほんの少しだけどな」
『だから何なんだよ、って話だけど……そのおかげでボクは世界樹を壊すよりも、強い存在と戦うことを生きがいにできた。君は『勇者』として世界を守りボクを倒すよりも、君の大切なものを守り抜くことを選べた……それだけさ』
「……そうか。だからお前は、俺を倒すより強くすることにしたんだな」
『そうさ……どうだい? 納得してくれたかい?』
「まあ、納得はしないが言ってることは分かった……だが、情けをかけるつもりはないぜ?」
『そんなこと望んじゃいないよ。むしろ……本気でボクを殺しに来てよ。ボクを殺せるくらい強い存在を……見てみたいのさ、心の底から』
「じゃあ、そろそろやり合うか?」
『おっと、最後に一つ。君は知らないみたいだから教えてあげよう……君の今のスキルの名は、『覚醒の勇者』。不完全ながらも世界樹の巫女の力を取り込み、勇者としての力を完全に解放した……まさに最強の存在さ』
「……最強、か。お前に言われると実感が湧くよ」
『それはどうも……ところで、剣聖のあの子はどうするんだい? 今の君じゃ彼女と桁違いに強いけど……』
「いや、あいつは俺の仲間だ。そばにいるだけで心強い」
『そう。準備はできた?』
「ああ、いつでも」
『じゃあ……』
『「殺りあおうか」』
そして、本当の戦いは始まった。
まあ、ステータスとかスキルがあるってことはつまりそういうことですよね……第十一話とか見返してみると面白いかも?




