第百二十六話 ラルクとアルス その2
第百二十六話! 三人称視点を書くのって難しい……後書きに作者の気持ちが書いてありますので、よかったら見てやって下さい。
「ここは……どこ?」
辺りを見渡すとそこは、草ひとつ生えていない不毛の地。紫色の空、硬い土の地面……何ここ、地獄?
(……いや、ここは……魔族の大陸!!)
これは、僕の記憶なんだ。だから、今まで知らなかったはずのことも覚えている。この地獄みたいな所は、魔族の棲む大陸。そして、僕は昔ここに……あれ? 『僕は』こんな所、来た覚えないのに……
「いつ見ても味気ねぇな、ここ。ファイルガリアが懐かしいよ……」
「もー、アルスがそれ言うの何回目? ここ1週間で30回くらい聞いた気がするんだけど?」
あ、勇者アルスと剣聖ホープだ……ってことはつまり、今はこの2人が魔王を討伐しに来たところかな?
「でもさぁ……ホープも疲れただろ? いつでも魔族に奇襲されるわ、ダンジョンでもないのにモンスター襲ってくるわ、いくら歩いても景色変わらねえわ、飛行魔法使おうにも魔物鬱陶しいから歩いた方が早いわ……いや、本当疲れた」
「まあ確かに……って、アルスが毎日毎日私を落として自分が見張りしてるからでしょ! いい加減眠りなよ……」
「大丈夫だ、問題ない」
「それって問題あるよね?」
「油断してるお前が悪いんだよ」
うん、とりあえずここに来てから勇者アルスが全く寝ていないことはわかった。さっさと寝てくれ。
「はぁ……仕方ないなぁ、よっと」
「かぁ……っ!? ホープ……おま……ぇ……」
あ、勇者アルスが綺麗なサマーソルトで落とされた。宙に浮いた身体は、そのまま剣聖ホープに抱えられ……
「おやすみ、アルス。油断しちゃダメだよ」
そう言って、勇者アルスは気絶したままおんぶされ、剣聖ホープはまた不毛の大地を歩いて行ったのだった……そして、また景色は歪み始める……!
「……ここは、城……?」
僕がまた飛ばされた先は、石造りの高くそびえたつ大きな城の前だった。何かものものしい雰囲気を放っているこの場所は……? とにかく城の全体像を見ようと、上を見上げていると……
「……ここか」
「アルス、やっと着いたね……」
背後から2人の声が聞こえてきた。やっと着いた、ってことは……魔王が、ここにいるのか? 確かにそう思えば、いかにもラスボスがいそうな雰囲気を醸し出している……
『────君たち、そんな所で立ち話してないで……上がってきたらどうだい?』
「「なっ────!?」」
どこからともなくそんな声が聞こえてきた直後、勇者アルスと剣聖ホープの足元に魔法陣が浮かび上がる……って、これ僕も巻き込まれて────
「うわぁぁぁぁあ!?」
体が、どんどん上に上がっていく……いや、これは落ちていっているんだ……空に向かって落ちていっているんだ!!
「なんだこれっ……!?」
「気持ち悪いぃぃぃ!!」
不思議な感覚だ。身体は宙に浮いていっているのに、まるで落とし穴に落ちていってるような……
『おっと、こっちこっち。受け身を取らないと……死ぬよ?』
今度は、前!? って、まずい! このままじゃ城の壁にぶつかって……
「『剣聖技・閃牙』!!」
「【アルカディックレイ】!!」
空中から放たれた2人の攻撃により、城の壁には風穴が開いた。そしてその中に、勢いのまま突っ込んでいって……その先にある玉座に向かって、一直線に向かっていく!! このままだとぶつかる……!
『はい、ストップ』
「「「うわっ!?」」」
その声と共に、僕たちの体にかかっていたはずの慣性は一瞬で失せ、地面に落とされた。そのせいで勇者アルスも剣聖ホープも、着地する時に玉座に向かって跪くような姿勢になっていた……
『あはは! いい心がけだね、自分から跪くなんて……君たち、結構面白いね』
僕と、2人の目線の先……城の中に置かれている大きな玉座に座っていたその少し高い声の主は、中性的な顔をした10歳くらいの子供だった。
だがしかし、その銀色の頭髪を分けるように生えている大きな2本のツノは、その存在が人間でないことを物語っていた……多分こいつが、魔王だ。
『おお、驚いた顔してくれるじゃないか! ボクの見た目、そんなに魔王らしくないかな?』
……なんだ、こいつは。本当に魔王なのか? なんというか、らしくない。もっとこう、仰々しい見た目をしていて、厳かな雰囲気を持っているものとばかり思っていたが……
「……なぁ、お前みたいなガキが本当に魔王なのか?」
『ガキとは失礼な! ボクはれっきとした魔王だよ!』
「らしくねぇな……」
……目の前に魔王がいるはずなのに、全く緊張感がないのはなんでだろう? いや、どっちもお互いへの殺意が満々なのは伝わってくるのだが……
『いや……まあ、いいさ。そんなことより君たちは、ボクを倒しにきた……って事でいいのかな、『希望の勇者』アルス』
「あぁ。それが『勇者』の役目だからな」
『それに、隣の女の子は……あぁ、『最強の剣聖』ホープか。『賢者』は確か来ないんだったね……2人とも、長旅お疲れ様』
「……随分と余裕みたいだね?」
飄々とした表情でそう語る魔王。その姿はまるで、自分は絶対に負けないとでもいうような自信に満ち溢れているようで……
『あぁ、余裕だね。ここでゆっくりと休んでいくといいよ……永遠に』
「「────っ!!」」
なんだ、この圧は────!? さっきまでとは桁が違う、尋常じゃないレベルの殺気。これが、魔王……!
『さて、始めようか。見せてあげよう、このボク……魔王ディルボアの力を』
そして今、戦いの火蓋は魔王の手によって、切って落とされた。
はい。どうも皆さんお待ちかねの作者です。
ということで最近フランクな感じになってきましたが、読んていただいている方々への感謝は忘れておりません(というか忘れるのは論外だと思うので)ので安心してください。ただ後書きも読んでいただけると嬉しいな……と思っているだけなのです。
本題ですが……これからは少しシリアスが続きますので、口直し(?)作者が後書きでしょうもないことをたまに言っていこうと思います。是非ぜひそれについても感想していってください☆




