表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

124/204

第百二十四話 追憶と覚悟

第百二十四話! ここからついに、物語は核心に迫っていく────!

『まあ、結論から言おう。俺たちがここに留まり続けているのは、俺を……【背信の勇者】アルスを殺すためだ』


 【背信の勇者】……アルス? そんな人、聞いたことがない。


『聞いたことがないのも当然です。()自身も……そして、貴方達人間も、その存在を隠しているのですから』


『……ったく、本当に皮肉なもんだよ。俺たちが守ろうとしたものが、俺たちを殺したんだぜ? 笑えねえや』


 ……一体、この人たちは何を言ってるんだ? 色々と知らないことがありすぎて、何が何やら……


『おお、悪い悪い。そういや、お前らはまだ何も知らないんだったな……ルキアさん、思い出させられますかね?』


『ええ、そろそろ潮時でしょう。2人とも、こちらへ』


 そう言われ、僕たちはルキアさんの近くに寄っていく。


『今から、あなたたちの封じられた……いえ、私たちが封じた記憶を……魂に刻まれた前世の記憶を呼び起こします。それが……私があなたたちを、ここに呼んだ一番の理由です』


 魂に刻まれた記憶を、呼び起こす……? つまり、僕の……そして、フィリアの前世に何かあったのか?


『さあ、2人とも……自らの過去を思い出す準備はできましたか?』


「「僕(私)は────」」


『……ちょっと待て。お前ら、本当に覚悟はできてるか?』


 僕たちがルキアさんに返事をしようとすると、『勇者』アルスがそう聞いてきた。


「「覚悟……?」」


『ああ、全てを……お前たちがどうして生まれたのか、どうしてここに連れてこられたのか、どうして『武芸百般』なんてスキルが生まれたのか……そして、お前たちがこれからどうなるか。それを知る覚悟は、出来てるか?』


 ……全てを知る覚悟、か。そんなの、答えは決まってるだろ?


「出来てるわけ……ないじゃないですか。自分も知らない自分のことなんて、ほんとは怖くて聞きたくないですよ。出来れば……何も知らずに、このまま普通の日々を過ごしていたいですよ」


 当たり前だ。急にここに連れてこられて、わけ分からないことばっかり言ってるのを聞かされて……覚悟どころか、自分に何が起こっているのかさえわからない。


『そうか。だったら……』


「……でも」


 わからない。分からないけど……


「それでも……それ以上に、何も知らないままでいるのが嫌なんです。これ以上、何も知らないままで……自分のことさえも分からないままでいたくない」


『…………そうかよ。じゃあ、勝手にしろ』


 それでも、きっと……いくら先延ばしにしても、いつかはきっと知らなきゃならなくなる。それに、僕だって……これ以上、訳もわからず勇者(あんた)と一緒にされるのは懲り懲りなんだ。


『で、お前はどうするんだ、フィリア?』


「……私も、してもらいます。今まで知らなかった自分のことを……全部、知りたいんです。それに、わざわざ今まで記憶を封じていたことには訳があるんですよね? だとしたら私は、ラルク1人だけに、それを背負わせたくないから」


『……ったく、やっぱりそうか。じゃあもう、俺からは何も言わねえよ』


 その言葉を最後に、勇者アルスはそれ以上僕たちに何も言わなかった。そして少しの静寂の後、ルキアさんが僕たちにもう一度こう聞いてくる。


『さあ、2人とも……自らの過去を思い出す準備はできましたか?』


 その言葉に、僕たちは今度こそはっきりと返す。


「「僕(私)に……全てを、教えて下さい」」


『……分かりました。それでは始めましょう……』


「ちょっと待った」


 ……シルクさん?


「ルキア様……私も、それを教えてもらうことは出来ますか?」


『……エフィー、それはラルクの記憶と同期させて見る形であれば可能ですが……』


『でもエフィーさん、別にあんたは……』


「知らなくて良い、なんて言わないでくださいよ? 私はアルスの親で、ラルクくんの結婚相手なんですから。ラルクくんの過去を見る権利と義務がある」


 うん、しれっと結婚相手にされているのはもう面倒だから放っておいて……シルクさんも、僕の過去を見るつもりみたいだ。


『……()()()()と言うことは、エフィーは大方見当はついているようですね?』


「まぁ……そうですね」


『……良いでしょう。では、あなたもこちらへ』


「ありがとうございます」


 そしてシルクさんもこちら側にきて、今度こそルキアさんは僕たちの過去を解き放とうとする。


『では、気を取り直して……始めましょうか』


 ルキアさんがそう言うと、僕は突如強烈な眠気に襲われる。そして────


『魂に深く刻まれた、その悲しみを。苦しみを。悦びを。愛しさを……あなたたちの記憶を、今こそ解き放ちましょう』


 僕の意識は、そこで途切れた。




 side:ルキア


『……なあ、ルキアさん』


『どうしましたか、アルス? そんな浮かない顔をして』


 ラルクとフィリアが自らの記憶を辿るため、意識を失った少し後。起きているのは私とアルスだけになった空間で、ふとアルスが口を開いた。


『俺は、あいつらになんて謝れば良い? あの2人は……本当は、普通の幸せな人生を送る子供だったはずだ。それを、俺の我儘で……』


『ええ、そうですね。確かに、代償を払うのはあなたです……しかし、ラルクには申し訳ないですが……辛い選択を、強いることになるでしょうね』


 さて、ラルク。あなたは全てを知った上で……どういう選択をするのでしょうか?

ラルクに課せられた運命とは、一体何なのか……明日も投稿します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://ncode.syosetu.com/n6670gw/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ