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第百二十三話 再会と真実の狭間で

第百二十九話! 今日からまたコツコツ隔日投稿していきます。

『ここまででいいでしょう。エフィー、大丈夫ですか?』


「あぁ、アルスもホープも可愛いなぁ……」


「「親バカじゃないですか」」


 『希望の勇者』アルスが謎の力を手に入れたところで、シルクさんの記憶鑑賞会は終わった……あれ? これ、結局僕たちになんの関係が?


『……それは俺から話した方が早いな』


 どこからか響くように聞こえてきたその声。もしかして、この声は……勇者、アルス!?


『あら、案外目覚めが早かったですね……お久しぶりです、アルス』


『お久しぶりっす……一応、前も一回起きましたよ? 二度寝しただけで』


『寝癖ついてますよ?』


『嘘っ!? 直したんだけどな……』


 いや、ルキアさんには何が見えているの? 僕には声しか聞こえないんだけど……


『……っと、何が何だかって顔してんな。ちょっと待てよ……ほいっと』


 ……その声とともに目の前に現れたのは、雑に生やされた黒髪をもつ20代前半くらいの見た目をした男の人……『勇者』アルスだった。


「「……『勇者』!?」」


 まさか、こんなところで『勇者』アルスと出会うなんて……でもなんか、『剣聖』ホープさんと同じで何か勇者っぽくないというか……ただの気のいいお兄さんみたいな人だ。


 でも一体、どうしてこんなところに? 確か彼は、10年前に魔王と相討ちになってホープさんとともに死んでしまったはず……


「……アルス」


 僕とフィリアが突然の登場に驚く中、僕らの後ろからシルクさんの絞り出すような声が聞こえてくる。振り向いてその顔を見ると、その双眸には涙が溜まっていた。


『エフィーさん……久しぶり。12年ぶり……だったっけ』


 『勇者』アルスも、エフィーさんの方を懐かしむような笑顔で見ている。そしてシルクさんは、『勇者』アルスに駆け寄り……自分よりもずっと背の高いその人を、思いっきり抱きしめた。感動の再会……ってやつなのかな? 


「アルス……! ごめんね、守りきれなくて……私のせいで……ごめんね、ごめんねぇ……」


 『勇者』アルスを抱きしめながら、大粒の涙をこぼしてそう謝るシルクさん……僕はどうしてそれを見て、こんなに胸が痛むんだろう?


『エフィーさん……俺も、心配ばっかかけて、何もできなくて……ごめん。今だって泣かせちゃって……』


 『勇者』アルスもシルクさんに向かって、目を瞑りながら答える。この2人の間に、一体何があったんだ?


『アルス、エフィー。感傷に浸るのもいいですが……ラルクさんとフィリアさんが困惑していますよ。そろそろ本題に入りましょう?』


『あぁ、そうですね。つい……』


「久しぶりでちょっと、抑えられなくて……」


 それに従うように、2人はその腕を解いてルキアさんのほうに向き直る。2人とも、その目にはまだ少し涙が浮かんでいて、よほど会えたことが嬉しかったんだろうな……と分かった。


『いえいえ。私も少し、再会の瞬間が見られて嬉しかったので大丈夫ですよ』


『……ならいいですけど。それよりも、ホープは? もしかしてまだ寝てます?』


『はい。しっかりと寝てます』


『半分くらいあいつの為なのに、呑気なもんですよ……』


 さっきから言っている、寝る、とか目覚める、ってなんなんだ……? 


『ラルクさん、そこに気がつくとは良い質問ですね』


 もうデフォルトで心を読んで来るね、この女神様(ひと)は。


『一言で説明しますと……魂の状態、と言ったところでしょうか?』


「「魂の状態?」」


 魂に状態なんてあるのか? 生きているか死んでいるかだけじゃ無いのかな……?


『まず、前提として……アルスもホープも、厳密には()()()()()()()()()


 ……え?


『確かに10年前、彼らの肉体は死亡しました。本来ならそこで魂は【魂の回廊(このばしょ)】を通り、天へと還ります……これがあなたたちの言う、死ですね』


 それはさっき似たようなことを聞いた。しかしだとしたら、どうして尚更『勇者』アルスはここにいるんだ? 死んでしまったなら、既にここは通り過ぎているはず……


『しかし、アルスたち2人は……彼自身の固有スキル(ちから)と、私の能力(ちから)によって魂のみをここに残しているのです。よって魂そのものが本体となるため、寝る、だとか目覚める、だとかの表現をしているだけですよ』


『まあ、普通の人の体と違って何ヶ月とか何年とかの周期で寝起きするんだけどな……俺も、つい1、2ヶ月前に起きたところさ』


 ……んんん? 色々と訳がわからない。いや、魂の状態についてはなんとなく分かったけど……


『どうしてわざわざ、魂だけでこの場所に留まっているのか……でしょう?』


「「……はい」」


 どうやらフィリアも、同じことを思っていたようだ。だって、魔王を倒したんだから、特に思い残すことなんて……


『……まあ、その話をするために俺が来たんだけどな』


 そんなことを考えていると、さっきまでの明るい声とは違い、急に真剣なトーンになった『勇者』アルスがそう告げる。


 そしてさらにその口から、僕たちに驚くべき真実が伝えられた。


『まあ、結論から言おう。俺たちがここに留まり続けているのは、俺を……【背信の勇者】アルスを殺すためだ』


 ……勇者が、2人?

だんだん話がややこしくなってまいりました────!!

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