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第百二十話 『勇者パーティー』の日常

第百二十話! 本日2回目、ほのぼの回です。

「アルス、疲れたぁ……」


「だ! か! ら! 俺の背中に乗るなっつってるだろ!」


「2人とも、ほんと小さい頃から変わらないねえ」


 私たちが『勇者パーティー』として活動し始めてから5年が経った。アルスたちはまだ16歳だが、その実力は既に世界最強と言ってもいいレベルに達していた。


 アルスとホープは既にSSランクの魔物を余裕を持ってソロで倒せるレベルまで達しており、名実ともに『勇者パーティー』として多くの人から慕われ、尊敬されていた。


 アルスは『希望の勇者』、ホープは『最強の剣聖』だなんて巷では呼ばれているらしい。


 かく言う私もその一員なのだが、私がするのは基本的にサポート。どちらかが傷ついたら固有スキル『治癒魔法』で回復したり、雑魚敵を処理したり、敵の強さを『鑑定』で確かめたり……と、基本的に本格的な戦闘には参加しなかった。


 しかし、私もいつしか正体不明の『賢者』として有名になっていた。不思議なものだ。


「私は成長したよ! 背も高くなったし」


「ホープの胸は成長してないけどな」


「アルス、首から上か、首から下かどっちがいい?」


「ねえもしかして俺死んだ?」


「まあ落ち着いて、ホープ……アルスは晩ご飯抜きね」


「すみませんでしたっ!!」


 アルスとホープは、ずっと一緒にいたせいか同い年の男女というよりかは兄妹や夫婦という表現が正しいくらいに仲良しになっていて、私も実の子供が2人いるような感じだった。


「そういえばホープ。妹ちゃんは元気なのかい?」


「グレアは元気だよ。ただ……たまに帰って遊ぼうとするんだけどあの子、剣にしか興味ないんだよ。だから帰っても剣の稽古をつけるだけで……まあお父さんは喜んでるけどさぁ……」


「グレアって……ああ、あの赤髪の。前に俺に斬りかかってきた子だな!」


「今ならもしかしたらやられちゃうかもよ?」


「もしかしたらあの子も『剣聖の加護』持ちかもな?」


「待って私弱くなっちゃうよ!?」


「それは嫌だねえ」


 ……弱くなる、か。そんなことはあってほしくないが……それを望んでいる声があるのも確かだ。


 魔王軍はもちろん、隣国のバルドライア皇国も勇者と剣聖の弱体化を望んでいる……皮肉なものだ。人類を救うための力が、人類を滅ぼすと思われて外交問題にまで発展しているんだから。


「……あ、アルス。背中のところ……怪我してる」


「ん……あぁ、ちょっと痛いとは思ってたけど。多分、鱗にやられたんだろ」


「『痛覚耐性』……こういう時は怖いね」


 アルスの背中を見ると、少し服に血が滲んでいた。服を捲ると、それなりに大きな傷になっていて……早く治さないと。


「『回復魔法』……【ハイヒール】」


 私は『世界樹の巫女』の効果で『回復魔法』を使用し、アルスの傷を癒す……


「……っづあ!!」


 頭が痛い……!? どうして、まだ今日は固有スキルを使ってないのに……!


「「エフィーさん!?」」


 その声を最後に、私の意識は途絶えた。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「……『反動』ですね。これ以上の活動は不可能です」


 私は気絶してアルスとホープに診療所に連れて行かれたのだが……そこで、医者にそう告げられた。


「……そうですか」


 ……別に悲しいわけじゃない。何となく、そろそろ潮時だとは思っていた。少しずつ固有スキルが使えなくなって、最近では1日1回が限界だった……


「……『賦与』」


 うん、まだこのスキルは使えるみたいだ……準備も出来てるし、そろそろ2人から離れる時だろうか?


「……アルス、ホープ。君達に私から、最後のプレゼントをあげよう」


 まだ少し頭痛がする中、私は1人でそう呟いたのだった。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「「エフィーさんが……引退?」」


「……君達も知ってただろう? 私のスキルは、もう限界なのさ」


 その翌日。私はアルスとホープに、私がパーティーから抜けることを伝えた。もちろん2人とも驚いていたが……


「たしかに、最近はめっきり固有スキルを使わなくなったよなぁ」


「エフィーさん、やっぱり負荷が溜まってたんだね」


 ……2人とも、私が思っていたより大人になっていたみたいだ。悲しそうな顔はしたものの、駄々は捏ねたりしなかった。


「アルス、私は悲しいよ。小さい頃は離れたくないって言ってくれたのに……」


「へぇ〜、アルスも可愛い時あったんだ」


「エフィーさん!? それは……まあ、子供でしたし」


 ……よし。こんな話をしている間にやっと、決心がついた。そろそろ話を切り出そう。


「ねえ、アルス、ホープ。もう、私はいなくなるだろ?」


「「……うん」」


 ああもう、そんな悲しそうな顔して……


「だから……2人に、プレゼントがあるのさ!」


「「プレゼント!?」」


 うん、一瞬で目が輝いたね。現金だね君達。


「まず、ホープ。君にはこれをあげよう」


 そう言って、私は『アイテムボックス』のスクロールを渡す。


「えっ!? こんなに高いもの……いいの?」


「いや、君たちもお金溜まってるでしょ? 『勇者パーティー』の活動でさ」


 これ、普通に家一つ立つ値段がするのだが、『勇者パーティー』が依頼を2、3個受ければ手に入る金額だ。この時のために、貯めておいたのさ。


「それで……アルスには、これとこれ!」


「『回復魔法』に……『鑑定』も!?」


 この2つは、私が自分でダンジョンに潜ってゲットしたものだ。いつもこの2つは、私の役目だったからね……


「アルス、いいなぁ……2個ももらえて」


「ホープの『アイテムボックス』の方がずっと貴重なんだよなぁ」


「こらこら2人とも、喧嘩しない喧嘩しない。渡さないよ?」


「「ごめんなさい!!」」


 本当現金だなこの子達。強かに育ってくれて何よりだよ。


「……そして、私からの最後のプレゼントだけど……これは、まだどっちに渡すか決めてないんだ」


「「……え?」」


 そう。問題は、私からの最後のプレゼント。それは……


「私の力、そのものを君たちのどちらかにあげよう」


 今は『固有スキル』を使えないが、それでも……ノーマルスキルならばまだ全然使用可能な、『世界樹の巫女』の力。それを、どちらかにあげようじゃないか。

投稿は続くよどこまでも(本日後2回投稿します)

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