第百十七話 教育係
第百十七話! なろう系の展開があります(なお、主人公ではない模様)
「……貴女が、私達ほどの実力を持っていると?」
「ええ。こう見えても結構強いんですよ?」
私は、アルスについて行くためどうにかしてエルヴィン騎士団長を説得しようと試みる。それに……私は、アルスについて行かないといけない気がする。
「ご冗談を。まさか二十歳にも満たない貴女が、何年も訓練を続けてきた私たちに勝てるなど……」
……この人、エルフかもしれないとは思わないのかな……って、そっか。私は普通のエルフじゃないから、他の子達よりも逆に大人に見えちゃうのか……
……ここで普通に決闘を申し込んでも、子供の戯言としていなされるだけだ。だったら……
「……じゃあ、試してみます?」
私は、そうやって少し煽るように聞いてみる。もちろん、この程度で騎士団長ともあろう人が揺らぐとは思えないが……
「……いいでしょう。ついて来てください」
えぇ、嘘でしょ!? 私は案外簡単に決闘まで持ち込めたことに少し動揺しながら、私は馬車に乗ったのだった……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
馬車に乗せて連れてこられたのは、王都の中心部にある王城の下に備え付けられた、騎士団の駐屯地。その中にある、円形の闘技場の中で……
「何だ……この、化け物は……」
「強え……全く歯がたたねぇや……」
「…………まさか、ここまでとは」
私は、エルヴィン騎士団長が用意した騎士団のメンバー数人を相手に、様々な固有スキルを使い分けて、存分に力を見せつけるための模擬戦を行った。うんうん、エルヴィン騎士団長も驚いてるね……
「……これでも、まだ足りませんか?」
私はエルヴィン騎士団長の方に振り向き、そう問いかける。すると、エルヴィン騎士団長は……
「……先程の言葉は撤回します。貴女は、私の想像よりも遥かに強かった……私の無礼を許して頂きたい」
そう、頭を下げて謝った……別にそこまでしなくても、アルスと居させてくれたらそれでいいんだけどなぁ……
「全然気にしてませんよ。それより、私を……アルスの教育係にしていただけますか?」
「ああ、もちろんです。こちらからもよろしくお願いします」
そう言われた瞬間、私は小さくガッツポーズをする。やった、これでアルスと────
(……っ!? 頭が────)
その瞬間、私はとてつもない頭痛に襲われて意識が途切れた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(……ここは?)
少し身体に怠さを憶えながら目を開くと、まず目に入ったのは木製の天井。そして、少し周りを見渡すと、包帯や薬が置いてある棚がある……どうやらここは、医療所の中のようだ。
「エフィーさん!」
横たわる私の目が覚めたことに気づき、少し離れた場所に置かれた椅子に座っていたアルスが駆け寄ってくる。
「エフィーさん……模擬戦のあと、急に倒れて……よかった」
……そうか。やっぱりそうなっちゃったか……
「……アルス、心配かけてごめんね……もう、大丈夫だから。ほら、この通り!」
そう言って私は、ベッドから飛び降りる。うん、特に体に異常も無いみたいだ。
「目覚められましたか。突然倒れたので、驚きましたよ」
そんなことをしていると、さっきまではいなかったはずのエルヴィン騎士団長が私に話しかけてくる。
「すみません。急に意識が飛んじゃって……」
「いえいえ。貴女も少し模擬戦で疲れていたのでしょう」
良かった、なんとか誤魔化せたみたい……? 誤魔化せた……のかな? うん、誤魔化せた。そういうことにしとこう。
「しかしながら……いやはや、まさかあそこまでの強さとは、お見それしました。私でも勝てるかどうか……」
「ははは……流石にそこまでは」
うん、どうやら少しは認めてもらえたみたいだ。やったよ、アルス……
「それでは……これから、勇者様たちの教育係のひとりとして、よろしくお願いします、エフィロスさん」
「こちらこそ……よろしくお願いします」
やった、作戦成功……って、あれ? 今、勇者様『たち』って……
「え、アルスだけじゃないんですか!?」
「ええ、もう1人、勇者様と同等の力を発現された方も担当して頂きます」
『勇者』と同等の力……!? そんな固有スキル……まさか!
「さあ、お入り下さい」
そうエルヴィン騎士団長に呼びかけられて、中に入ってきたのは……
「どうも、ホープ・グロウハートと言います! 固有スキルは『剣聖の加護』です。よろしくお願いします、師匠!」
アルスと同い年くらいの、綺麗な銀髪を下ろした少女、『剣』のグロウハート家の中でも抜きん出た才能を持っていると王都でも噂が立っていた、ホープ・グロウハートだった。
「それでは……この2人に、色々と教えてあげてくださいね、エフィロスさん。期待していますよ」
ちょっと……というか、かなり荷が重くないかい!?
ドロー! モンスターカァァァァド!!(訳:次は11時半に更新します)




