第百十話 女神と巫女と僕と君と
第百十話! 久しぶりのルキアさん登場です!
『それでは、随分と遅い自己紹介となりましたが……私の名はルキア。貴方達の言う、女神……といったものです』
ルキアさんが……女神様!? いや、まさかそんな……
『あらあら。2人とも信じられない……という顔をしていますね……まあ、いいでしょう。それよりもお二人とも、この空間に見覚えはありませんか?』
見覚えはあるかって……この空間は、やっぱり……
「「夢の、空間……?」」
『正解です……が、この空間の名前は『魂の回廊』。死者の魂が天へ還る時に通る道……と言ったところですね。ちなみに、ここにいる間は時間は限りなく遅く進みますので、ゆっくりして行ってください』
魂が天に還る場所……俄かに信じがたいけど、ルキアさんが嘘をついているとは思えない。でも、なんでこんなところに僕たちが呼ばれたんだ……?
『なんでこんな所に呼ばれたのか……そう思われていますが』
「えっ!? なんでわかったの……?」
ルキアさんがやっぱり心を呼んできた……フィリアは初めてだから結構驚いてるな。
『その話をするには、まあ……こちらを見てください』
そう言ってルキアさんは、空中に……なんだこれ? 透明な板みたいなもの……ガラスか?
「「これは……?」」
「おや、また懐かしいものが……」
どうやらシルクさんはこれに心当たりがあるらしい。
『え〜き〜しょ〜う〜モ〜ニ〜タ〜〜〜!!』
「「「…………?」」」
どうしたんだ、ルキアさん……? 急に声を掠れさせて何か言い出したけど……
『……今のは忘れて下さい。エフィー、これについて説明して差し上げなさい』
あ、無かったことにした。
「ルキア様、承知しました……2人とも、これは液晶モニターっていって……いや、もう見た方が早いね」
『エフィー、これは流石に私が悪かったですね……確かに見た方が早そうです』
この人、本当に女神……なんだよな?
『ラルクさん、何か?』
「なんでもございません」
凄い、ただの球体にしか見えないのに睨みつけられているのがよくわかる……
『……まあ、とりあえずこちらを見て下さい』
ルキアさんがそう言うと、透明な板に僕の写真が映る……ん? なんで持ってんの?
『それでは……再生』
「「おおっ!」」
ルキアさんが再生と言った瞬間、なんとその写真が動き始めた! 占い師の水晶みたいだ……!
「昔はここで色々見せてもらったなぁ……」
『エフィー、結構楽しんでましたよね……全く世界樹の巫女らしくなかったですし』
「ルキア様、ひどくないですか!?」
シルクさんとルキアさんも、2人で昔の話に花を咲かせている……ん?
「シルクさん、今……」
「『世界樹の巫女』って……!」
いやいや、まさか……だって、『賢者』も『世界樹の巫女』も同一人物だなんて……
「昔は『世界樹の巫女』やってたんだけどねぇ……森を追い出されちゃったから、せめて『世界樹の巫女』として勇者のサポートでもしようかと思ってね」
『せめて』でやることではないよね!? やっぱりシルクさん、せめての意味をわかってないんじゃ……
「おふたりとも……冗談が好きなんですね、あはは……」
ほらもうフィリアも理解が追いつかなくて苦笑いだよ。それにしても、2人とも面白い冗談を言うもんだなぁ、ほんと……
『エフィーの言っていることは本当ですよ。今からその話をしますし』
「「嘘でしょ!?」」
シルクさん……前々から何かあるとは思っていたが、まさかこんな能天気でマッドサイエンティスト気質な人がそんな重要な役職だったなんて……
『ラルクさん、あなた結構エフィーのことをひどく言いますね?』
「ラルクくん!? なにを考えているのかな!?」
「……それで、過去になにがあったか、教えてくれませんか」
さて、そろそろ本題に……
「ラルクくん、神妙な面持ちで言っても無駄だよ?」
『それでは……全てを見せましょう。貴方達になにがあったのかを……!!』
「ルキア様、ちょっ────」
『エフィー、静かに』
「────! ────!?」
シルクさんが何か喋っているのは分かるが、口が動いているだけで音が出ていない…….ルキアさん、何をしたんだ!?
『魂の回廊は私が作り出した空間ですから……なんでも出来るんですよ』
「「怖い……」」
『何か言いましたか?』
「「なんでもございません」」
『そうですか……それでは、今度こそ全てを見せましょう』
そうして、ルキアさんは僕たちに見せ始めた。僕たちの過去に、何があったのかを……
もしかしたら、何も知らないほうが良かったのかもしれない。あんな真実を、僕たちが背負って生きていくくらいなら……。
side:
そろそろ、時間か……久々にあいつと会うんだ、身だしなみでも整えとかないとな……そう思って、俺はボサボサの髪を自分の手で弄る。少しは寝癖がマシになっただろうか?
「魂の回廊……ここで待ち続けた甲斐があったよ、本当に……」
今度こそ、お前は……ホープだけは、絶対に幸せにして見せる。例え俺が、この世から永遠に消え去ろうとも。
はい。ということでまさかの第三章は一旦終了(流石に長くなりすぎたので……)です。次回から新章(過去編)スタートです。




