第百四話 エルフの里
第百四話! フィリア、参戦!!
「ありがとう、すごく頼もしいよ……フィリア」
フィリアが【アクアバブル】に気づいて、僕たちに合流してくれた……どうやら、この場は切り抜けることができそうだ。
「ラルク……と、マジシャンの人……とりあえず2人とも、ついてきて!」
そっか、フィリアとライアは初対面なんだな……
「マジシャンの人ってボクだね! 分かったライアって言うんだ!」
「そう、私はフィリア! よろしく、後ろついてきて!」
「了解!」
すごい、魔物を倒しながら周りを警戒しつつ走って自己紹介している……側から見たらシュールだなこれ。
「「ラルク、早く行くよ!!」」
そんなことを考えていると、フィリアとライアに怒られてしまった。
「あぁ、ごめん……」
僕は緩みかけていた気をもう一度引き締めて、周りの魔物を倒しながらフィリアについて行ったのだった……
フィリアに連れられてやってきたのは、さっき見えた村……世界樹を守るための拠点、『フォース』だった。
「おっ、フィリア様じゃないですか! お疲れ様です!」
「フィリアさまぁ〜! まもの、たおしてくれた?」
村の中に入るとフィリアはたくさんのエルフたちに囲まれて、心配されたり称賛されたりと……エルフ達とは仲良くやれているようだった。
僕たちは、森の外で起こっている惨状からは想像できないような、その微笑ましい光景をニマニマしながら見ていると……
「……そういえばフィリア様、この方たちは……?」
そんな中目の前でフィリアにそう聞いたのは、他のエルフたちよりも少し豪華な服を着ている、少し大人びたエルフ……なんか、他のエルフ達とは少し違う雰囲気を纏っている。
「あぁ、シルファ様。この2人は、以前手紙で言われていた増援ですよ」
「そうでしたか!」
「えっとフィリア、この人は……?」
「2人とも、この人はシルファ様……エルフの王族で、私たちが『ハイエルフ』って呼んでる……簡単に言うと、今のエルフの森で1番偉い人だよ」
「ようこそお越しくださいました……シルファと言います。どうかこの森を……世界樹を、お守りください」
えっ!? エルフの王族……早く頭下げないと……ってライアはもう跪いてるし! やっぱりSランク冒険者の妹ともなると偉い人と出会う機会もあるんだろうか……
「す、すいませんっ!」
「お会いできて光栄です……」
「ちょ、お二方!? どうか顔を上げてください……私は所詮、代わりでしかありませんので」
よかった、優しい人だった……。でも、『代わり』ってどういう……
「ありがとうございます。私の名はライアといいます」
そうだ、自己紹介しないと……
「え、えっと……僕の名前はラルクと言います。よ、よろしくお願いします……」
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、ラルク様。そもそも、こちらから来ていただくように頼んだのですから……本来頭を下げるべきはこちらの方です。ようこそお越しいただけました、ライア様、ラルク様」
「そんな、様付けなんて……」
「呼び捨てにして頂いて結構です!」
「いえいえ、口癖ですので……」
そう笑いながら頭を下げるシルファ様。貴族とか王族ってもっと怖いものだと思ってたけど、こんな人もいるんだな……そんなふうに思っていると。
「シルファ様、そんなどこの馬の骨とも分からぬ人間どもと口を聞いてはなりません! 貴様らも気軽にシルファ様に話しかけるでない!!」
そんな言葉と共にエルフたちをかき分けて出てきたのは、シルファ様より豪華な服を着ているエルフだった……誰だ?
「やめなさい、シェイド!! この方たちは私たちの助けに来てくださったのですよ!」
「しかしシルファ様……」
「下がりなさい。私の客人に無礼を働くことは許しません」
「くそっ……代替品のくせに……」
「何か言いましたか?」
「……なんでもございません」
そう言って、そのシェイドといういけすかないエルフはどこかへと去っていった。なんだあいつ……
「誠に申し訳ございません。今のはシェイド……エルフこそが至高という選民意識に囚われた、愚か者です」
ボロクソ言われるなあいつ。
「そうそう、こんな所で立ち話も何ですので、少し場所を変えませんか?」
いや、森が燃えているんですが。魔物が絶賛侵攻中なんですが……?
「ラルクとライアちゃんは、少し休んでおいでよ。私たちで森のほうはなんとかしておくから……それに、まだ時間はあるからね」
『時間はある』……? 一体、なんのことだ?
「そう言って頂けるのならば行きましょう! 話さなければならないこともありますし……」
そう言って、僕たちを手招きしながら村の奥の方に入っていくシルファさん。これは……ついて行っていいのか?
「フィリア、これって……」
「大丈夫だよ、まだそんなに魔物の侵攻も強くないし、食い止められると思うから」
そう言って、フィリアもどこかに去って行ってしまった……とりあえず、シルファ様についていくことにしよう。
「ラルク様、ライア様。ここが私たちエルフの聖地……世界樹です」
シルファ様に連れられてやってきたのは、これから僕たちが守ることになる物……世界樹の麓だった。樹木なのに『麓』という表現はおかしいかもしれないが、世界樹は天に届きそうなほど大きくて太い樹なので麓という表現が正しいだろう。
「すごく……太くておっきい」
「ねえライア、その言い方危なそうだからやめて?」
もはやお約束(?)となっているそんな僕たちのやりとりの後、少し『世界樹』について語ってくれた所でシルファさんは本題に入った。
「それでは……そろそろ、本題に入りましょうか。お二人は、恐らくなぜ私たちがファイルガリアに増援を頼んだか……というところまでは既に知っておられると思います」
「……はい。魔物が攻めてきている、と……」
「ラルク様、その通りです。そして、恐らくですが……近いうちに、魔王軍は本気でこの森を壊滅させに来ることでしょう」
……え? なんで、そんなことが……
「どうして……そんなことが、分かるんですか?」
ライアも訳が分からなかったんだろう、問い詰めるようにシルファ様にそう聞く。すると、シルファ様は……
「……それは、50年前のことでした」
そう言って、僕たちに話し始めた……なぜ魔王軍が攻めてきたのか、なぜ世界樹を滅ぼそうとするのか……そして、どうして攻めてくるのが分かるのか、ということを。
次回から過去編です……




