第百話 またかよ
第百話!! ついに3桁に突入しました!!
……頭の後ろから伝わる柔らかい感触。体の上にはほんの少し重みのあるふわふわとしたものがかけられており、体を温めてくれている。どうやら……夢から醒めたみたいだ。
心地よい微睡みの中、僕はゆっくりと目を開ける。すると……
「おはよう、ラルク」
僕の視界に入ってきたのは、白色の天井をバックにしたライアの顔……ん? んんん!?
「ライア!?」
この体勢……膝枕じゃないか! というかなんで僕は王都に来てから2回も同年代の女の子に膝枕されてるんだよ! まだフィリアにはしてもらったことないのに!!
「なんで膝枕してるの……? というか君も疲れてたはずなのに」
「うーん……まあ、ラルクよりも早く起きたから寝起きドッキリでもしてあげようかな、なんて。年頃の女の子の膝枕だよ? ご褒美でしょ?」
夢の中のホープさんと似たようなことを……まあ、間違いではないんだけど、僕にはフィリアがいるし。
「はいはい嬉しい嬉しい」
とりあえずこういうのには特に何も考えず返していればいいと、先人たちから教わっ……
「よっと」
「痛っ!?」
そう適当に返した瞬間、ライアが急に僕の頭の下にあった足を引きぬいて、僕の頭は地面に打ち付けられた。
「そんなこと言うならもう貸してあげない!」
「いてて……すみませんでした」
僕たちがそんな漫才みたいな問答をしていると……
「……2人とも、結構仲良くなったんだね」
「あ、アルトさん……」
どこからともなくアルトさんが現れた。というかこの部屋……一見普通の部屋だけど、よく見たら扉がないな。部屋も一面真っ白だし……
「ここは私の自室……作り出した空間の中にあるから……ちょっと時間の流れを遅くしておいた。10時間くらい寝ていたけど……この部屋の外ではまだ試験終了から1時間くらいしか経ってないよ」
つまり、一次試験が始まってからまだ1日も経ってないのか。
「ほら、2人とも起きたならもう外に出すよ……自分の部屋に人をあげるのは苦手だから」
そう、少し急かすようにいうアルトさん。まだ目が覚めきっていないが、僕はいつ外に出てもいいように立ち上がっておく。地べたに寝転ぶのはごめんだ。
「こんなこと言ってるけど……私たちが起きるまで部屋の中でずっと横にいてくれたんだよ」
「それは……ライアが、抱きしめて離さなかったから」
「じゃあ、そういうことにしておきますね」
「むぅ……もう話は終わり。早く出るよ」
そんな微笑ましいやり取りの後、僕たちはアルトさんとともに一瞬で別の部屋に瞬間移動させられた。
その部屋の内装は高級感を帯びていて、壁には高そうな絵画やお酒が置いてある。一対のソファとアンティークっぽい机も置いてあり、応接間のような内装になっている。ここは一体どこなんだ……?
「それじゃあ、ラルクには先に言っちゃったけど……試験の結果を発表します」
急に移動させられて困惑している僕を置いてけぼりにするように、アルトさんが言う。横から唾を飲む音が聞こえ、ライアが少し緊張しているのがわかる。
「試験の結果は……「合格だっ!!」
「「うわっ!?」」
アルトさんの声に被せるように、部屋の中に大きな声が響く。この声は……
「ねえフィーズ、これやらないとダメなの?」
「もちろん! びっくりしている顔を見るのが楽しいんだ」
まるで悪戯好きの子供のような理論を展開しながらアンティークの机の裏から出てきたその声の主はフィーズさんだった。そういえば、ファイルガリア学園の学園長だったな、この人。
「お姉ちゃん!? 驚かさないでよ……」
「フィーズさん、驚かさないで下さいよ」
……ということは、この部屋は学園長室なのかな……って、そんなことを考えながら部屋を見渡していると、フィーズさんが突撃してくる────!?
「ライアぁぁぁあ!! 合格おめでt」
「『イリュージョンマント』」
「……ライア、なんでいつも私を盾にするの? 咄嗟に閉じ込めちゃったじゃん……」
すごい、フィーズさんの突撃に合わせてライアが『イリュージョンマント』を発動、アルトさんと交代した瞬間にアルトさんが別の空間を開いてフィーズさんを飲み込んでしまった。
「すみません、いつもの癖で……」
「これが日常茶飯事なんですか!?」
「「………………。」」
うん、なんとなく察した。フィーズさんはライアのことが大好きなんだな……
「────ぉぉぉぉぉぉぉおおお!!」
閉じかけていた空間の狭間からそこをこじ開けて出てきた!? 僕の頭の中に一瞬、半裸筋肉の姿が浮かんだのは秘密だ。
「ライア、流石私の妹だな! 受かると思ってたぞ!」
「でも、黒騎士との戦いはギリギリだったけどね……」
「アルト、ちょっと行ってくる。10回くらい」
「フィーズ、落ち着いて……」
フィーズさん、1人であの黒騎士を倒せるのか……
「というかフィーズ、そろそろ行かないと」
「あぁ、忘れてた。じゃ、行くか」
え、行くってどこに……? 確か試験の後は帰るだけのはず……
「ねえ、どこに行くの?」
「ああ、まだ伝えてなかったな……2人が合格したSクラスの授業……というか活動は、もう始まってるんだ」
「「……え?」」
「Sクラスの活動場所は王都とは別のところにあるからな……じゃあ2人とも、準備はいいか?」
フィーズさんがそう言ったのと同時に、いつの間にやら僕とライアの体はフィーズさんに抱えられていた。って、これは────!!
「フィーズ、私が────」
「行くぞぉぉぉぉお!!」
アルトさんの制止を無視して、僕らを抱えたままフィーズさんは部屋の窓から飛び出した!!
「「うわぁぁぁぁぁ!!」」
またこれかぁぁぁあ!!
side:アルト
2人とも、もう行っちゃった。……フィーズも明るくしてるけど、きっと内心では心を痛めているんだろう……私たちは、2人を騙しているみたいなものなんだから。
Sクラス。その、本当の目的は────
【作者からのお願いです!】
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