設定は書かない、使うものだ
設定は書かない、使うものだ……っちゅうか普段から俺に絡んでいる人は、俺が普段から「設定は作って書かない」という頓珍漢なことを言っているのをご存じかと。
まあ、あてずっぽを言っているわけじゃなくて、読者が読みたいのは小説であって仕様書じゃないよって意味なんだけどね。
つまり、魔族と人間の確執の理由がきちんと作ってあっても、それをわざわざ物語冒頭で「その昔、人と魔族は同じ大地の上に暮らしていた……」から始まる設定説明を書く必要はないよと、そういうこと。
じゃあ設定を作る必要はないかというと、そういうことでもなくて……魔族と人間の確執の理由が設定に作ってあったら、そういう確執はいま現在の人々の間にぜったいに何らかの影響を及ぼす。
魔族が人間を憎む理由があったなら、その理由をおとぎ話として聞いて育った魔族は人間を強く憎むかもしれない。それは人間とは離れて暮らすといった生活様式だったり、初対面の人間にどういった反応をするかだったり、物語の端々に『設定』が影響を及ぼす。
つまり設定って作ってはおくけどエピソード化しない、だけど物語の世界を形作る、だから必要。
もちろん物語中で読者に明らかにされる設定ってのもある。主人公がなにを目指しているのかとか、何が主人公の行く手をはばむのとか。それだって直接的な説明文として書かれるのではなく、何らかのエピソードに付随して明らかにされるだけ。
つまり言葉を略すことなく言うならば「あなたの作った設定のうち半分以上は直接物語に書き込むことはありませんよ、でも作中のありとあらゆるところに影響を与えますよ」ってのが正しい。
だから作っておいて書かない。
これを身につけるには文章に対する貧乏性を失くすことである。というのも、「せっかく作った設定」という気持ちがあるから、読者にこれを自慢しないのは損であるような気になってしまうわけで、これって言ってしまえば歯磨き粉のチューブが最後まで使い切れていないような気がして必死に搾っちゃうのに似た貧乏性……。
最初から「必要だけど文章化する必要はないもの」と覚悟して作ると、こう言った貧乏な文章を書かなくて済むというわけ。
ということで、設定を作る前にまずこの呪文を。
――設定は作っても書かない。
そしてここに書いた簡単な設定の話が、どうかあなたの作品をより一層美味しくしますように。




