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第六話:ウーススの遺言

 ベトベトになった封筒……


 ネイが「うわぁ……」と若干引き気味にそれを眺める。


 やめて、本当に触りたくなくなるから。


「しょうがねぇな、俺に貸してみろ」


 そう言ってコルがベトベトになった封筒を服に擦りつける。


 正気か?とツッコミたくなったが、こういう事に躊躇いが無いのがコルの良い所だ。



【デストロイ】



 不穏な能力名と共に封筒からバキッ!メキッ!と音が鳴る。


 一体どこをどうしたらそんな音になるのかと言う疑問もそうだが、封筒から湯気が出ているのがもっと不思議だ。


「ダメだ、細工だけぶっ壊そうとしたけどビクともしねぇ……」


 気まずい空気が流れる。


 これではマヨイにバレない以前に内容が読めない。


 ボーッと封筒を眺めていると、ライリーが未だ湯気が出続けている封筒を渡してきた。


「ミレイの能力なら行けるんじゃない? 貴方宛の手紙なんだし」


「でも私の能力はマヨイが居ないと…」


 半ば強引に封筒を渡され、心を集中させる。


 マヨイに【ブランク】を引き出して貰った時のあの感覚―――


 瞬間、心臓が跳ねたかの様な衝撃が走った。


 全身に鳥肌が立ち、感情を無視した笑顔がこぼれるあの感じ。


「開けちゃった……」


 突然起こった出来事に驚きを隠せない。


 マヨイが居ないと使うことが出来なかった【ブランク】を何故か使えてしまった。


 いや、使えた理由は分かっている。


 間違いなくこの封筒だ。これを握って心を落ち着けたとき、私の中の【何か】が中身の手紙と繋がった。


 これはウーススの能力なのだろうか?

 

 マヨイと同じ様な能力をウーススも持っていたのだろうか?


 みんながポカンとした表情でこちらを見つめてくる。


「本当に開けやがった…」


「それで中身はどうなっとるんじゃ? 早く見せんか!」


 ワクワウした表情でこちらに近づくネイ。


 封筒から中身を取り出すと、先程まで散々攻撃を加えられたとは思えない程綺麗な手紙が出てきた。



―――親愛なるノルヴァの娘へ。


 この手紙を読んでいると言うことは、私はもうこの世には居ないでしょう。


 ……すまん、一度この出だしで手紙を初めて見たかったんだ。


 恐らく初めまして、ミレイ・ノルヴァ。


 今はもしかするとミレイ・ヴァレンかな?


 私はウースス・ヴァレン【原罪を司る神】だ。


 君にこの手紙を出したのは他でもない、贖罪だよ。


 さっきは冗談っぽく書いたが、私は今本当に命の危機にある。


 私を殺すのは【マヨイ・ヴァレン】、私の愛する妻だ。


 まぁ命を狙われている一番の理由は君の本当の母、【グラーティア・ノルヴァ】と関係を持ってしまった事なんだが、理由はそれだけじゃない。


 一応名誉の為に言っておくが、君のお母さんの体はとても魅力的だったぞ。


 んでもう一つの理由なんだが、それは【君の父が天界の崩壊を望んだ】ことだ。


 大罪一家に七つの大罪が全て揃うのは危険すぎる。


 傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲。この全てが一つの家に揃った時、天界の神々はそのパワーバランスを失う。


 だからこそ私は大罪の血をノルヴァ家と分けることで力の均衡を保とうとした。


 ノルヴァ家の家業は【守り】だからね、均衡を守ると言う名目ならば誰も文句は言わない。


 しかし君の父はそこまで寛容じゃなかった様だ。


 まぁ普通自分の妻から生まれた他人の子を育てるって言うのは並大抵の精神力じゃ務まらないだろう。

 

 でも何故か君の父はそれを笑顔で受け入れた、何故だと思う?


 【大罪の血】を人質に使って七つの大罪を手に入れようとしたんだよ。


 しかし生まれてきたのは【怠惰の娘】、原罪か大罪どちらかの能力を持つ神で無いとその真価を発揮できない言わば【ハズレ】だった訳だ。


 おっと、言い方が悪かった。これからもうちょっと残酷な事実を書くから泣くのはもうちょっと後にしてくれ!


 【ハズレ】を抱えたノルヴァ家は君の扱いに相当困ったことだろう。


 一応力の均衡を保つと言う名目はあるが、世間からは妾の子扱いを受ける。


 それに七つの大罪の力を欲していた君の父からすれば、人質として価値のない君を養うのはただのリスクでしかないんだ。


 ただで屈辱を飲み、おまけでヴァレン家から狙われる。


 そんな状態で君を育てるのはまぁ不可能だろう?


 数年もしないうちに君はきっとノルヴァ家から追い出される。


 そんなニュースを聞いたマヨイがどう動くかなんてのは容易に想像できるさ。


 彼女がやることだ、きっと家を追い出され精神的にも肉体的にもボロボロになった君を保護して、家で養うと言い出すだろう。


 彼女の言葉は本当に魅力的だから、君はマヨイの娘になることを選んだんだろうね。


 これでヴァレン家は七つの大罪を無事揃え、ノルヴァ家はせっかくの人質を失い、私はマヨイに殺される。


 誰も救われないバッドエンドの完成だぁ……って嘆いてたんだが、どうも状況が変わったらしい。


 その原因は君だよ、ミレイ。


 君の怠惰の能力は、その過剰なストレスによってこの世界にとんでもない【爆弾】を作り出した。





 地球とバーミア、二つの世界を繋げてしまったんだ。

 



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