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プロローグ

 荒廃したスラム街、天界に唯一存在するその荒んだ場所はまさに肥溜めと言うに相応しい場所だった。


 神としての責務を全うせずに能力を失った脱落者の集う場所。


 【怠惰を司る女神】ミレイ・ノルヴァは、そんな腐ったスラムへと足を運ぶ。


 ―――ここは天界、【地球】と【バーミア】二つの世界を繋ぎ管理している場所。


 2つの世界はやじろべえの様にバランスを取り合っており、お互いに不干渉の関係を貫いている。 

 神はそれぞれが持つ【異能】を使い2つの世界を収め、時には発展に手を貸す。


 私の持って生まれた異能は【怠惰】、この異能のせいでとんでもなく辛い思いをするハメになった。

 

 ……私はミレイ・ノルヴァ。


 怠惰の能力で本来不干渉の地球とバーミアを繋ぎ、全ての世界を破壊へと導いた史上最悪のテロリスト。


 ―――ボロボロのドアを開け馴染みの酒場に入ると、客の視線が一度に集まった。


 さっきまで賑やかなうたげムードだった店内が一瞬にして静まり返る。


「ミレイ・ノルヴァ……」


 誰かが静かにそう呟く。私もすっかり有名人になったものだ。


「ミレイか! 随分大きくなったな」


 店内が恐怖一色に染まる中、場違いな程に明るい声で語りかけてくるこの男。


 名はアーノルド、この酒場の店主で元慈愛を司る神だ。


 店内は相変わらずの大盛況だったが、一席だけ空席がある。


 忌まわしい、私がいつも座っていたと言ういわく付きの席。


 そんな私だけの特等席に座り、何を飲もうかと後ろのガラスケースを眺める。


「これまた随分とここに似つかないベッピンさんになっちゃってまぁ、今日はどうしたんだ? ここに居る負け犬共へのあてつけか?」


 ガハハと豪気な笑いを見せるアーノルドだが、後ろの客は完全に青い顔をしてガタグタ震えている。

 そこまで怯えられる覚えもないのだけれど……


「悪酔いしたくてね、心置きなく飲める場所を探したらここしか無かったのよ」


「そうか、ならこれだな」


 そう言って目の前に出されたのはスクリュードライバー。


 昔じゃまず出なかったメニューに思わず目を丸くする。


「あんたカクテル作れたの?」


「何年酒屋やってると思ってるんだ、それにコレは誰でも出来る」


 グラスに反射する自分の顔を見て、その切なそうな表情に気付く。


 まだ気持ちの踏ん切りがついて居ないのだろうか?


 ……これは、私がここまで恐れられる存在になってしまうまでの話。


 生まれながらの【捨て駒】だった女の生き様の話。

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