131 「屋上の泣き声」
また、朝が来る。
しくしく……しくしく……。
──それはつまり、あなたがここに来なかったということ。
しくしく……しくしく……。
もう何度、この光景を見ただろう。
覚えていない。数え切れないくらい、たくさん。
あなたと再会を誓って。
あなたと別れて。
こうして待ち合わせ場所であなたを待って……だけど、あなたは今日もここにはやって来ない。
しくしく……しくしく……。
東の空が明るくなる中、私は給水塔に座って涙を流す。
こうして泣いていれば、あなたがあの日のように屋上の扉を開けて駆けつけてくれると、淡い期待を抱きつつ。
だけど、その扉は立ち入り禁止の札が掛けられて久しく、朝日がそれを虚しく照らすのみ。
しくしく……しくしく……。
ああ、私はあと何度、この光景を瞳に刻めばいいのでしょう。
あと何度、涙を流せばあなたはここに来てくれるのでしょう。
朝日が、嫌いになりそうです。
あの頃は、朝が来るのが待ち遠しかったのに。あなたに会えると思うと、あんなに胸が高鳴ったのに。
腕を伸ばし、朝日に透かす。
自分の身体が透けてしまっていることにも、すっかり慣れてしまいました。
もう自分の名前も忘れ、あなたの名前も顔も上手く思い出せないけれど。
この薬指に光る指輪が、なによりの証。
あなたと交わした約束の、たった一つの縁。
それを頼りに、私は今日もあなたを待ちましょう。
いつまでも、いつまでも。涙を流しながら。
──きっといつか再び、あなたが私を抱き締めてくれると信じて。
しくしく……しくしく……。




