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六十五話 手はくっついても平常運転

投稿頻度が安定しない……! それはさておき、今回も好き放題いちゃいちゃします。

「むむむ……」

「うーん……」

 

 水からなんとか這い上がった二人は、揃って難しい顔をしてお互いの間にある、ぴったりと重ね合わされた手のひらを見つめる。

 押しても捻ってもびくともしないこれを前に、二人はどんな策を講じたものか考えあぐねていた。

 

「こんなのはどうかしら」

 

 先に声を上げたのはメナドだった。開いた右手で、つんつんと昨晩熾した火を指差す。この樹脂を炙ろうと言うのだ。

 こくりと頷くと、手を合わせたままの酷く動き辛そうな間の抜けた体勢のまま焚き火の前まで寄っていく。そして、ちろちろと揺れる火にゆっくりと手をかざした。

 

「……」

 

 五分、十分。

 

 時々引っ張ってみたりするものの、樹脂に変化は見られない。得られた成果と言えば、精々手が温まった程度だ。

 

「くしゅっ!」

「へーちょ!」 

 

 揃ってくしゃみを響かせて、ようやく自分たちの濡れ鼠のような有り様を思い出した二人。

 ぶるりと身震いをしながら、顔を見合わせる。

 

「……うう、風が冷たい……!」

「風邪ひいちゃうね。着替えなきゃ……んん?」

 

 水の滴る腕を伸ばし、その先を見るセルマ。視線の先には、ぴったりとくっついて離れないメナドの手が。それを見て、彼女達は重大な事実にぶち当たる。

 

 人は手を繋いだままでは着替えなど出来ないのだ。決して。

 

「む、むむ……ねえ、メナドちゃん」

「わ、分かってるわよ。とりあえず脱げるトコまで脱いじゃいましょ」

 

 その言葉に続いて、幸い自由の効く右手でぷちぷちとボタンを外していくメナド。しかし、利き手が潰れているセルマはそうもいかなかった。

 

「んしょ……ほっ……」

 

 彼女が着ている、全身をすっぽりと覆うローブ。そして更にその上に身につけたケープなどの装備品は、硬い革の手袋をつけている事も相まって中々に脱ぎづらい事になっている。全身ぐっしょりと濡れているのだから尚の事だ。

 

 手首の留め具を口で外そうとした所で、見かねたメナドが手を伸ばす。そして、右手指を器用にくねらせて手袋を外しながら口を開いた。

 

「ああ、じれったいわね。手伝ったげるからちゃっちゃと脱いじゃいなさい」

「えへへ、ありがと。じゃあ、メナドちゃんのは私が脱がしてあげる」

 

 腰を下ろして向かい合う二人の腕が交差し、動く度にじっとりと湿った衣服が草を叩く。二人の肌が外気に晒される面積は、時間毎に増えていった。

 しばらくして、二人は下着一枚に。完全に脱げない服が腕からぶら下がっているばかりだ。

 二人分の衣服が水を含み、ずっしりと重くのしかかる。

 

「うーん……重いね。袖の所切っちゃおうか」

「そうね。帰ったら新しいの買いに行きましょ。動かないでね」

 

 言いながら、メナドは地面に垂れ下がる自分のローブのポケットを漁る。程なくして、一振りのナイフを取り出した。

 買ったばかりの、値札が貼りついたままの鞘から刃を抜いて袖に沿わせる。白から黒へ、一直線に二人の袖を走り抜けると、服はどちゃりと音を立てて地面へと落下した。

 

「ふう、すっきりした。ねえ、下着はどうする?」

「あー……」

 

 当然、彼女達の下着はずぶ濡れ。ぴったりと肌に張り付き不快な事この上ない。脱げる事なら脱ぎたい二人だが……。

 

「だ、大丈夫かしら。誰か冒険者とか来たら……」

 

 ここは野外。当然他の冒険者や近くの集落からの狩人が来る可能性は十分にある。聖水で避けられるのは魔物だけなのだ。

 

「多分大丈夫だよ。変わった依頼だし、ここ結構奥の方だから人なんて来ないって……多分」

「そうかなあ……そうよね」 


 羞恥心が理性を揺るがす。それ程までに濡れた下着の感触は耐え難いものだった。

 うんうんと唸る事十数秒、意を決した表情で下着に手をかける。

 

「じゃあ……うん。脱いじゃいましょ。よいしょ……」


 下着を腰からずり下げ、するすると脱いでいくメナド。それにならって、セルマも脱ぎ始める。

 

 手を繋ぎながら、黙々と衣服を脱ぐ二人の少女。他人が見れば間違いなく勘違いをしてしまう様な光景だ。当人達は至って真面目だが。

 下着を脱ぎ終わったメナドは、続いて胸の留め具にも手をかける……が、伸ばした指はもう少しの所で届かない。

 

「よっ……ほっ……んん、届かない……」

「あらら、取ってあげるね」

 

 正面から背中に手を回し、ぱちんと留め具を外す。支えを失った下着は、ぺろんと胸から落ちる。

 

 かくして、メナドはすっかり生まれたままの姿となった。

 

「……くちっ!」

 

 素肌を朝の冷たい風が駆け抜け、身震いをしてくしゃみを一つ。そこに、セルマが寝るときに被っていた毛布をふわりとかけた。

 

「はい、どうぞ」

「ん、ありがと」

「いえいえ……お返しって訳じゃないんだけどさ、私も脱ぐの手伝ってくれないかなあ?」

 

 舌を出して笑いながら、たゆんと揺れる胸を差し出す。

 自分には無い、今後も遠く及ばないであろう存在に若干の嫉妬の視線を向けながら、メナドが口を開く。

 

「あんたのやつ、留め具が前についてるタイプじゃない。片手でも大丈夫だと思うけど?」

「あはは……そうなんだけどさあ」

 

 鼻先に突きつけた胸を、左腕に乗せてぐいっと上に持ち上げる。

 同年代のそれを圧倒的に凌ぐ質量が柔らかく形を変えながら上に退けられると、下着を繋ぎ止めている頼りない留め具が姿を現した。

 

「その、邪魔でさ……抑えてるから、外してくれないかなあって」

「……一回私も言ってみたいわよ」

 

 などとぶつくさ言いながら、むすっとした顔で胸元に手を差し入れる。

 

「羨ましがるけどさ、そんなに良いものじゃないんだよ? 蒸れるし、動くとき邪魔だし、足元見れないし……」

「持つ者はみんなそう言うのよ。持たざる者の気持ちなんか分からないわ……はい取れた」

 

 メナドの指が金具を弾くと、ばるん! と音がしそうな程に胸が弾んで外気に晒される。抑えを失った原寸大のソレは、先ほどの比ではない。メナドの顔に匹敵する程だ。

 

「ぐぬぬ、いつ見てもでっかいわね」

「あ、あんまり見られると流石に恥ずかしいかな……それより、私も毛布に入れてくれると嬉しいな。寒いや」

「あ、ごめん」

 

 腰を下ろし、二人仲良く一枚の毛布にくるまって火に当たり、暖をとる。

 次第に血色が良くなっていく二人。彼女達を最も強く温めているのは毛布でも、パチパチと爆ぜる火でもなかった。

 

「んふふ、素肌同士だとあったかいねえ」

「はふ……谷間、さいこー……」

 

 ゆったりと毛布にくるまり、肌を寄せ合う二人。胸の谷間にはメナドの頭がもっちりと挟み込まれており、なんともインモラルな光景になっている。

 

「ひゃ、そこで喋んないでよお、くすぐったいよ」

「あら、持つ者は持たざる者に施しを与える義務があるのよ?」

 

 そう言って、もぞもぞと体勢を変えて胸を鷲掴みにする。モギとって自分のものにしてしまいそうな勢いだ。

 ぐにぐにと乱暴に形を歪められる度に、セルマの口から上ずった高い声が漏れる。

 

「ひゃ、はんっ! ふうう……もう、そっちがその気なら!」

 

 がばっと毛布をずり下ろし、自分の胸に取り付いているメナドの上半身を露出させる。

 

「ん?」

 

 呆気にとられている彼女の隙を突き、その胸元、くっきりと浮き出た鎖骨を唇で挟み込んだ。

 

「はぷっ」

「んはあっ!?」


 びくんと仰け反る背筋。それを抑える様に左手を背中に回し、れろれろと赤い舌を這い回らせる。時折首筋をゆっくりと舐め上げると、電気が走った様に強く体を反り返らせた。

 

「あ、ふうっ! ごめん、ごめんって! これ以上はほんとに……きゅうう……っ」

「先に始めたのはメナドちゃんだもんね。これは正当な反撃だもん。くちゅ、ぺちゃ。れろれろ……」

「はああ……っ」

 

 朝靄のたなびく森の中に、水音と二つの嬌声が響く。


 この後二人が平静を取り戻し、くっ付いたお互いの手の事を考えられる余裕が生まれるまでには、相当の時間を要するのだった。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

良ければ、評価などぽちぽちっと。ブクマとかが増えるたびに私の時間の合間の縫い方が上手になります。当社比。

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