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精霊王の庭   作者: 葉月秋子


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7 変化


「やーよー」


 相貌を崩して近づいた騎士に向かって、ざっ、と風が吹いた。

 がくん、というほど、男の首が揺れる。

「わ、驚いた。なんだこりゃ」


 子供は俺にぎゅっと抱き着き、首筋の毛に顔を埋める。

「やー」

 しかし気にすることもなく立ち直った騎士は、親し気に話しかけた。


「ねー。それはないでしょ。俺の遠吠えに答えてくれたじゃないか。

 じゃ、俺も変化(へんげ)しちゃうから。ほら」


 騎士は、俺と同じくらい大きな狼に姿を変える。

 上毛は黒いが、黄色っぽい下毛は長めで多く、ぼさぼさした毛質なので、太めの鼻と相まって、少々むさくるしい。


「ほーら」


「おおーぅ」


 機嫌を直した子供は俺の腕から滑り降りて、怖れげもなく近づき、差し出された頭をぺしぺしと叩いた。

 奴はだらしなく舌を垂らし、尻尾をぶんぶん振る。


「にーちゃんはな、アールって言うんだよ。言ってみ」


「あーゆー」


「かーわいいっ!なにこれーっ!」


 夢中になって鼻で押すから、子供はぺたんと尻餅をつき、それでもきゃっきゃっと笑い声をあげている。


「もう、かわいいーっ!団長、これお持ち帰りしましょうよーぉ」


 騎士団のマスコットにーと言いだす馬鹿に、釘をさす。


「懐かせるなよ。それはお姫様だ」



 国に戻れば『いとし子』は先代と同じように王宮の奥深くに囲われ、祝祭日以外は平民の眼に触れることもなくなるのだから。


 「豪華な籠の中の小鳥」となるのだ。


 だが、精霊に祝福された王国の象徴として、何不自由なく生きていけるのだ。

 それはそれで、保証された安全で安楽な一生ではある。

 


 


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