14 古い諍い2
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「人族が、まだ・・・?」
「そしてこう続く。
『精霊たちに見守られ、楽しく暮らしておりました』と。
精霊は代替わりはするが、その本質は不変のものだ。
精霊たちに育てられた今代の『いとし子』と精霊たちとの関係は、昔のままの自然体なのだろう。
だから心配などせずに、ただ、見守っていればいい」
だが、マリッサはますます顔色を悪くする。
「この世界は、獣人族のものだったと、おっしゃるの?」
「ああ、俺はそう思っていた。
この世界はもともと精霊と獣人族のもので、人間は俺たち渡り人のように、後からやって来たのだろうと。
だから精霊の加護のある人間は少ないのだろう、とな。
この国に住みつき、貴族としての教育を受けたが、歴史書にそんなことは一言も出てこないがな」
真っ青になったマリッサは、人差し指を唇にあて・・・
おお、なんてかわいいポーズをするんだ・・・と思っていると・・・
「あなた・・・そんなことをおっしゃると、異端裁判にかけられてしまいますわ・・・」
おおう・・・
マリッサを安心させようとして言ったのだが・・・
俺、なんか地雷を踏んだのか?・・・
隣町の冒険者ギルドに立ち寄ったグレイだったが。
「あ、グレイさん、ちょうどよかった。
伝言が一件入ってますよ」
風にひっぱたかれた後頭部に手をやったグレイは、しばしためらう。
うーん・・・
なんだ、このもやもやは・・・
風の精霊が言った言葉が、やけに気にかかる。
「すまん、依頼はしばらく受けない。
ちょっと用事を思い出した」
「え、待ってくださいグレイさん、伝言をー、
あら、もういない・・・」
あわててカウンターを離れた受付嬢は、足早に去る背中に向かって呼びかけた。
「王宮からの呼び出しなんですよっ、グレイさん!」
グレイの足がぴたりと止まる。




