4 出会い
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「もふー」
子供は幸せそうに俺の鼻に触り、首に抱きついて来た。
おい、ちょっとまて。
犬じゃないんだ、狼だぞ。獰猛な獣だぞ、俺は。
いや、犬だって、知らないよその犬にいきなり抱きつくのはまずいんだぞ。
あまりに警戒心がなさすぎだろう。
しかし、子供は俺の首っ玉に抱きついたまま、毛皮に顔を埋めて、楽しそうにくすくす笑う。
ま、怖がられなくて、良かったか。
「よし、お嬢ちゃん。
俺はランドヴェールから頼まれて、君を探しに来たんだ。
これから、君をお城に連れて行くから」
と言って、身をほどき、少し下がって、人化する。
人化と同時に、収納に入れてあった衣服は、ちゃんと纏っている。
と・・・子供の顔がみるみる歪んだ。
「もふー・・・」
いや、人間になったけど、怖くないよ。
さあ、おいで、と手を伸ばすと、泣きそうになって身を縮める。
「もふー・・・は・・・?」
「いや、どっちの姿も俺だから」
「や、もふー・・・」
しかし子供は俺の手を避け、小さな唇が震えだす。
わ、まずい、泣かれる・・・
仕方なくまた狼化すると、子供はほっとしたように肩の力を抜いた。
狼の姿の方が安心するって?
いったい、なんなんだ、この子は。
子供が撫でまわすままに、しばらく狼の姿で寄り添っていたが、このままいるわけにもいかない。
しかたがない。あまりやりたくないが。
俺は少し離れてまた人化した。
やはり、子供は嫌がって身を引く。
しかたがないな。
服のボタンをいくつかはずして、首元を広く緩めた。
身体の一部だけ変化させて留めておくのは、魔力の微調整が難しい。
そう、こうして頭部だけを狼に変えるのは、揺れる吊り橋の途中に留まっているような不快な感じがするのだ。
そして改めて、子供に手を差し伸べる。
「さあ、これでよいか?
どちらも、俺だ。わかったな」
目と口をまん丸く開けて、首から上だけ狼化した俺を見ていた子供は、やがてにっこりして両手を拡げ、言った。
「もふー。らっし。だっこ」
そして俺は、やっとのことで、子供を抱き上げることが出来たのだった。




