12 精霊の加護2
「あなた・・・わたくしはどうしたらよいのでしょう」
人払いした瀟洒な一室。
すっかり自信を失って、ハンカチを握りしめ、座り込んだマリッサに、ハルトはおろおろしながら向かいの豪華な金箔張り猫足の華奢な椅子に座った。
「・・・どうしたんだ、あー、えー、ま、マリッサ」
思えば妻とこうして二人だけで向き合うのは初めてといっていいくらいである。
金髪角刈りの大男はひどく緊張していた。
「精霊様のご加護のないわたくしに、あの御子が育てられるとは思えなくなりました」
精霊と共に暮らしてきた幼子は、自由奔放に精霊たちと戯れる。
小さな加護を持つ一般庶民はけっこういるのに、なぜか人間の貴族、王族に、大きな加護を持つものは少ない。
精霊を感じる事も出来ぬこの身で、『いとし子』様をどうやって教育し、王侯貴族の決まり事に従わせることができるのだろうか。
「初めのころの荒れようを思うと、わたくしはもう、恐ろしくて・・・
大きな加護を持つあなたは、どうやって折り合っていらっしゃるのですか」
「俺・・・いや、私の精霊は、『光』は、特殊だからなぁ」
六大精霊のうち、光と闇は少々変わっていて、小さな精霊の数こそ多いが、強大な格の高い者は、あまり顕現しないのだ。
力が強すぎて、ちょっとやんちゃをしようものなら、いろいろ不都合が出るらしい。
戦いの場ではハルトの大きな力となった『光の精霊王』は、繋がりの糸だけを残し、精霊界で静かに揺蕩っているのだという。
「それほど気にすることはないと思うのだがなぁ。
まだ淑女教育などと固い事は考えずに、ただ、楽しく遊ばせてやっていればいいんじゃないか、な、なぁ。
そう、風と戯れていたというなら、同じ風の加護を持つグレイに相談したらどうだ。
一番はじめにつまづいたのは、グレイの助言が届かなかったからだというじゃないか」
そもそも、『すべてを統べる精霊の王』から、直々に『いとし子』を託されたのは、グレイだ。
「獣人は歓迎されませんのよ」
「渡り人の俺、いや私には、そこがよくわからんのだが。
この国は、いや、この世界のほとんどの国は、なぜ獣人を排斥するのか」




