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8 とやんぽいん2
ハートマン女史たちが辞した後、侍女がいれかえてくれた紅茶を前に、一人残ったマリッサ王女はほーっとため息をついた。
「いとし子様」のお披露目をするには、まだまだ人馴れが足りない。
感情が揺れれば、すぐに精霊たちが暴走してしまうのだ。
ここに来ていただいてから、少し背が伸びて、普通の子供よりも成長は早いようなのだけれど、言葉のほうはまだまだ拙く、なかなか意志を通じさせることができないでいる。
いったいどうしたら・・・
その耳に子供の楽し気な笑い声が響いた。
あら、今日はずいぶんとご機嫌がよいこ・・・と・・・
目を上げると子供の黒髪が林の木々の梢を越えて目に入り、すぐに引っ込む。
もう一度、ひょいと見えてひっこむ子供の頭。
「キャーハハハー」
テンションの高い笑い声。
「キャッ!」
御付きの侍女が小さく叫ぶ。
ガチャン!
淑女の作法にはあるまじき大きな音を立てて、王女の手からカップが落ちた。




