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精霊王の庭   作者: 葉月秋子


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6 異世界の音楽



「では、教会も音楽院も、共通の楽譜と言うものは持たないのですか」


「流派ごとに、違った書き方をしておりますね。

 そして盗まれないように、故意に複雑化したり、暗号化したり、一子相伝の秘曲として伝えたり。

 ノアルダームの神聖六霊教会の合唱団は有名ですが、その分派閥争いも激しく、過去に敵対派の楽譜が焚書されるという事までありまして、古い楽曲はあまり残っていないのですよ」


「吟遊詩人たちも似たようなものですね。

 こちらは文字を知らぬものも多く、弟子は師匠の技を盗み見、聞き取って覚えていくのです。

 その分聞き取る耳は鋭く、絶対音感持ちも多く居るようですが」


「『小鳥』さまの異世界の楽譜は画期的です。

 基本の一音と五本の線だけで、誰もが理解し、奏することが出来るのですから」


「基本は単純なのですが、どんどん複雑になっていくようです。

 これはやはり、新たな音楽院を創立する必要がありそうですわ。

 器楽、声楽、楽譜製作、異世界言語から楽器製作まで、一から始めなければなりません。

 この音域の広さと言ったら。

 どんな楽器があれば、これを完璧に演奏できるのでしょう」


「『小鳥』さまは時々、「お手々が小さい」とため息をついていらっしゃいます」


「『小鳥』さまの囀りは誰にも真似ができませんしね。

 人間の耳に聞こえない音で歌われる時があると、アールが言っておりましたよ」


「不敬な。卑しい獣人などに、高尚な音楽がわかるものですか」


「もう、偏見はおやめなさい、ハートマン。

『いとし子』様があれほど懐いておられるのですよ」

 

「先代様は詩作と料理に秀でていらっしゃいましたが、当代様は音楽の革命を起こされるのですね」



 マリッサ王女、ハートマン女史、クリス、エリサ、サラが、優雅にお茶を飲んでいる。


「宮廷の礼儀も守れぬ獣人ばかりに懐いておられるのは問題です。早く彼らを遠ざけないと、淑女教育を始めることも出来ませんわ」



 その『いとし子』は、というと、ハートマン女史のうるさい目が無いのをいいことに、熊化したグリンロードたちと共に、庭に続く林の中を絶賛散歩中であった。


「♪くーまにまーたがーりーおーんまのけいこー♫ー$%#♫ー$&"$♪ーー」






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