5 お披露目前
「♪あーるのーらーらーのーーすーみーがーだーわー♪」
クリスの歌う、のびやかなバリトンの声に、うっとりする女官たち。
大きな丸い眼鏡を鼻に引っ掛けて、必死で楽譜を書きつけるサラ。
少年期に教会の聖歌隊で声楽の基礎を叩き込まれたクリスは、異世界の音程を外すことなく正確に繰り返すことが出来た。
異世界の言葉となると、幼い『小鳥』さまの口が回らないので、今一つだが。
聞いていて頭をかかえてしまった『小鳥』様を見ると、何か少しおかしかったのか・・・
もう、メロディーだけ生かして、こちらの言葉に置き換えてしまった方が良いかもしれない・・・
そうなると、作詞の才のあるものも必要か・・・
「そろそろお披露目をしてもよろしいでしょうか。
私の父の、王様の傍に坐って皆からの挨拶を受けて、そのあとバルコニーから民衆にお手手を振るだけ。
ずっとハルトと私が、おそばに居りますから」
マリッサの言葉に、子供はしかめた顔を砂漠猫の胸にうずめて、いやいやと首を振る。
「♪#'%こあいの。$#&♭♬こあいのいっぱい、やーよー」
ふわり、と不穏な風が吹き抜ける。
「怖くはありませんわ。ずっと私のお膝の上に居ればいいだけですのよ」
しかし小さなつむじ風がざっ、と庭を吹き抜け、咲き誇る花々を散らす。
マリッサはふう、とため息をついた。
『いとし子』の感情を敏感にとらえて、激しく動いてしまう『精霊』たち。
ハルトの『光』より上位の『精霊』たちを誰もコントロールすることが出来ず、『いとし子』が少し落ち着き、意思の疎通が可能になった今でも、ちょっとした拍子に暴発してしまう。
このままでは、祝賀に集まった人々のせいで『精霊』たちが騒ぎ出し、パニックを起こした『いとし子』の周りで大騒動が持ち上がる・・・事になりかねない。
「%$"&・・・ぐぇいは?」
「え?」
「ぐぇいしゃは、ないの?」
「グレイなら、今は城を離れております」
砂漠猫のジェンナが聞き取って答えた」
「%#$むうーーー3$」
「グレイは冒険者ですから、外でお仕事がございますのよ」
マリッサが続ける。
騎士団を辞した獣人は、城の中では居場所が無かろう。
『いとし子』は口をへの字に曲げて、不服そうだが。
「♬#$♪h@%ぐぇいは♪"#%で、もふーだから%3♪#"$#なのにー#$&」




