第三章 1 『精霊のいとし子』
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ランドヴェールの王都、ヴェラリア。
国王ヴェラリウス七世は、尊大な国王の仮面を脱ぎ捨て、困り切った表情で、愛娘マリッサ王女と話し合っていた。
「まだ人前に出せんと言うのか。
発見の告知を出してからそろそろ三か月。
貴族どもの非難が高まってまいった。
『いとし子』の披露目を引き延ばすのも、そろそろ限界じゃ」
「少しずつ、打ち解けて下さっては、いるのです。
でも、まだ見慣れた数人の者しか、おそばに近づくことが出来なくて。
最初の対応を間違えた、わたくしの失敗ですわ」
「『精霊』の怒りが収まらぬか。
『加護』持ちの貴族たちを付き人に加えたいのだが、そなたの出した条件、これは何だ。
高位の『加護』持ちはわかる。だが、「音楽の才」「絶対音感」「楽譜筆記」「言語学」、こんなものが出来る奴は教会の聖歌隊くらいのものだぞ」
「そうか、その手がありましたのね!さすがお父様ですわ!
さっそく教会に使いを出して・・・」
「うむうむ、いや、待て、それはいかん。
教会からノアルダームの総本山へ情報が漏れてしまう。
我が国が『いとし子』を持て余していると難癖をつけられかねん。
神聖六霊教会の「聖女」として迎えたいと、何度も打診が来ておるのだ。
とにかく、獣人たちを引き離せ。このままでは第一、第二騎士団の連中をおさえきれぬ」
「それが・・・難しいのです。
ご報告いたしましたでしょう。
『いとし子』様は、人間に慣れておられぬと。
一人一人を見分けることがお出来にならないのです。
一度、女官たちに頼んで、目に快い容姿の騎士の方々を集め、遠くからお見せしたのですけれど」
「気に入った騎士は、おらなんだのか?」
「ご覧になって、怖そうに。
『かぼちゃ、いっぱいね』と」




