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幕間
幕間
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「ピアノは大好き。
でも、人と競争するのは嫌い。
海辺にぽつんと置かれた、一台のピアノ。
灰色の空、荒れた海。そして一台のピアノ。
映画のワンシーンだったのか、絵画だったのか、夢で見たのか。
現実だったら、潮風でいたむぞ。調律がくるうぞなんて考えてしまいそうだけれど。
その風景が、目に焼き付いて、離れない。
音は一瞬。音は残らない。誰かが聞いてこそ音楽なのに。
空と、海と、浜辺だけの、この風景の中で、ずっとピアノを弾き続けていたいと思ってしまう」
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「社会不安障害だと?」
「今は対人恐怖症をそう言うんだそうよ」
「ばかな、わしらの娘がそんなやわなものになってたまるか、ヤブ医者め」
「前を見て運転して、あなた」
「ちょっとばかり神経が昂っとるだけさ。
来月のコンサートと、秋には大きなコンテストが二つも控えとる。
病は気からと言うだろう。
おい、きいているか! お前は天才なんだ。
聴衆なんかかぼちゃだ。スイカの山だ。
人の顔なんか見るな。どーんとかまえとれ」
「ハンドルから手を離さないで!
振り返らないで!
しっかり運転して頂戴、あなた!」
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