12 異なる音階
12
「♪はうあいわんだーーーーーふぁっちゆーあーーーー♪」
しーーーーん・・・・・
・・・・・・
「・・・だから嫌だと言ったのに・・・」
怯む二人に、真っ赤になったハルトはがしがしと頭を掻いた。
だが、子供は。
じっと耳を澄ましていた子供は。
「・・・ど・ど・・・そ・そ・・・ら・ら・・・そ・・・」
と、小さくつぶやいたのだった。
「どど、そそ?」
「おおそうだ。ドレミで始まるんだったなぁ」
「どれみ、ってなんですの?」
「音の高さの呼び名だな。
さすがにこれは、俺でも知っているぞ。
ドレミファソラシドだ」
「どしらそふぁみれど」
子供がリズムを付けて逆から言った。
マリッサの顔が、ぱっと輝く。
「これは、音階の名称ですのね!
誰か、わたくしのカルファーンを持ってきて頂戴」
届けられたのは、何本もの木の板が並んでいるような楽器。
小さな撥のようなものがついている。
「これは一本ずつねじで調節して、音の高低を変えられるようになっていますの」
ど、ど、とつぶやきながら、マリッサの手入れのいい手がねじを微妙に動かす。
グレイの首から手を離して、子供が興味津々で覗き込んで来た。
マリッサがポーンと板を鳴らす。
「どー」子供が合わせた。
「そう、これが『ど』の音なのね。
八音あったわね、じやあ、次は・・・」
ど、れ、み、と音を合わせてみて、マリッサは顔を輝かせて振り返った。
「わかりましたわ。『いとし子』さまの世界の音楽は、音程が・・・音の分け方が違うのだわ。
だからこちらの音曲は耳慣れず、御不快になったのね」
なんだかよくわかっていない男たちを放り出して、楽器を真ん中に床に座り込んだ幼児と姫君は、夢中になって音合わせをはじめ・・・
暫くして、王女のカルファーンは、ハルトのだみ声とは似ても似つかぬ、単純な高低の優しい小曲を紡ぎ出したのだった。




