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精霊王の庭   作者: 葉月秋子


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23/40

11 異世界の音曲

11


「地球の音楽ということか?」

『渡り人』だった男は答えた。


「音楽の違いなど、俺にわかるはずが無かろう」


 と、妙な所で胸を張って言う。

 自慢する所か、そこは。



「たとえば、どんな」

「俺に聞くな」

「一曲だけでも」

「俺は歌わん」



 そうか。

 こいつ、ひどい音痴だったっけ。


「お前の歌で魔物が昏倒したという話は事実だったか」

「くそっ!俺のトラウマを抉るな!」



 ハルトに近づいたマリッサが、見上げる。


「お願いします、あなた」


「・・・あ・・・う・・・」


「『いとし子』様のために・・・」


「・・・お・・・俺は・・・な・・・」

 ハルトの太い首筋から血が上って来て。


「このままでは、わたくし・・・」

 マリッサが悲し気にうつむくと、とうとう生え際まで、真っ赤になった。



 角刈り金髪の真っ赤になった大男と、憂い顔の姫君とは、なかなか面白い取り合わせではある。


 

 やがて、咳ばらいを一つして、ハルトはため息交じりに言った。



「・・・あー・・・一曲しか歌えんぞ。

 妹が小さいころ英語塾に通っていてな」


 発表会の練習に、付き合わされたのだ、と。


「むう」


 と、覚悟を決めて、肩幅に足を開いて立ち、両手を後ろに。

 大きく息を吸って、口を開き。



「♪つぃんかーーーー、つぃんかーーーー、りるるずだーーーー♪・・・・・・」


 

 響き渡る割れ鐘のような凄まじいボリュームと外れ切った音程に、グレイの狼の耳がぺったりと伏せられ、マリッサがたじたじと数歩下がった。






 

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