6 精霊の怒り1
6
「精霊がお怒り?」
「でも、加護持ちの女官たちはそんなことは言っておりませんでしたのに」
マリッサ王女も、ハートマン女史も、加護を持っていないので、判りようがないのだった。
「俺も『風』持ちだし、俺の『風』もハルトの『光』も、結構高位だからな」
精霊にも格、というか、位の上下があり、それはそのまま、霊力の強さである。
「女官たちを加護する者は、格が違い過ぎてひれ伏すばかりなのだろう」
グレイはマリッサに一礼して、言った。
「ここで変化するお許しを頂いても?」
「獣化するなど無礼な!」と気色ばむハートマン女史を制して、マリッサは答える。
「この子のためになるなら、何でもやってみて下さいな」
ほう、気丈なお姫様だ。
グレイはそのまま、毛皮の敷物に手をつく。
変化は、一瞬。
巨大な狼の出現に、マリッサは息を呑む。
ブルブルっと、(ハートマン女史への当てつけ・・・ではないぞ)身体を震わせると、白いシーツに向かって、「くぉん」と、一声。
ぴくん、とシーツが揺れた。
やがて、ゆっくりと、子供の素直な黒髪が現れ。
肩までシーツをおろした子は、そっとささやいた。
「・・・ぐぇい?・・・」
「おん」
と、次の瞬間、ぶわっと、さっきとは桁が違う激しい風が渦巻き、グレイは吹き飛ばされそうになった。




