2 『いとし子』の行く末
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『精霊のいとし子』は幼い女の子という事で、マリッサ姫の住まいに近い離宮を下賜され、もと姫の養育係であったハートマン女史を筆頭にたくさんの女官たちが用意された。
「だが、今では女官たちがあの子を怖がってな」
「怖がる?」
「時々ひどく荒れるらしい」
玩具や楽器を壊したり、女官の服を破いたりする。
また気に入らぬことがあると、世話をしている者が指を怪我したり、腰を痛める事になる、と。
「そんな様子はなかったがなぁ」
ノアルダームの神聖騎士団から隠れて馬を進めた数日間。
狼化したグレイとアールにすっかり懐き、小鳥のように囀りながら、楽しく馬に揺られていた。
いや、たしかに、どちらかが狼化していないと、落ち着かなかったが・・・
「先代に続き当代も、わが国が『いとし子』を保護したというのに、これでは披露目の祝いも出来ぬ。
発見の告知は既にしてしまったから、公開があまりに遅れれば、不審の念を抱かれる」
ノアルダームは、精霊を祀り、精霊王を神と崇める、「神聖六霊教会」の総本山。
『精霊のいとし子』の扱いに難癖をつけ、教会の保護下に置くべきだと、引き渡しを要求しかねない。
と、話しているうちに、渡り廊下でつながる離宮の入り口にたどり着き。
「悠斗・トーマス・ダージリンと友人が、『精霊のいとし子』にご挨拶にまいった」
しかし、応対に出た女官は、こう答える。
「ハルト殿下は、どうぞお通り下さい。
しかし、御友人をお連れになる事は、ご遠慮くだされますよう」
「なんだと?」
「騎士団を放逐された卑しい獣人ふぜいが、『精霊のいとし子』に目通りはかないませぬよ」
女官に続いて出てきた女性の声に、グレイの背中の毛がぞわっと逆立った。




