12 伝言石
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「おい、グレイ、貴様、狼化したまま 一緒に王都に来い。
『いとし子』を見つけた大きな功績に報いて、騎士団に復帰させてやる」
いや、ごめんだね、と、もと第七騎士団長だった男は答える。
二度と騎士団に戻る気はない、冒険者の方が気楽でいい、と。
子供には狼化したアールをつけて、第七騎士団から数名呼び寄せれば済むことだ。
「『精霊のいとし子』捜索の依頼は完了だ。
褒賞金はギルドに送っておいてくれ」
じゃ、元気でな、と子供に手を振ると、グレイはそのまま出て行ってしまう。
突然の別れにぽかんとしていた子供は、グレイが戻ってこないのを知ると、ハルトをじーっと見つめる。
「ん?なんだ?」
金髪の大男がうろたえ顔で聞くと、子供の口がへの字に下がる。
「ぐぇい?・・・」
「うーん・・・あのなー・・・」
への字の口がますます下がり・・・
「もふー・・・」
室内なのに、なんだか不穏な風が吹き、机の上の書類がばさばさと音を立てる。
ハルトはドアを開けて怒鳴った。
「第七騎士団のアールを呼べ!
それから、砦に女性の騎士はいないか!」
気ままな冒険者に戻り、砦から離れながら、グレイは馬上でゆっくりとくつろいでいた。
「ぐぇいー」
『風』があの子の声を届けてきたような気がする。
愛らしかったな。アールなんか、しっかり絆されていたようだ。
しかし、宮仕えするのはもうたくさんだ。
王都から遠いこの砦でも、グレイの素性を知る者たちの視線が集まるのがわかる。
騎士の身分を剥奪された獣人と蔑む、冷たい視線。
いいさ。俺は一匹狼でいるのが性に合う。
後ろ髪を引かれるが、これから王宮に入る『いとし子』にしてやれることは、もう、ないのだ。
「大事にしてもらって、幸せになれよ」
しかし、二カ月もたたず、ギルドに顔を出したグレイは、王都から転送されて来た、彼あての伝言石を受け取る事になる。
おい、物質転送なんて、石一個でも、眼の球の飛び出るような料金がかかるんだぞ。
いや、王族なら、支払いは国庫から出るか。
魔力を流すと、再生されたのは、砦で別れたハルトの、情けない声。
ただ一言、『おい、助けてくれ』、と。




