6話 送還の弱点
〇1階・歯医者
別の場所に転生された。
蓮華の花が散り乱れ姿を現す。
ヘレスは床に突っ伏して動く気になれない様子。
ベロム「(慌てて)何、してんだ…女2人で裸で…変態なのか…」
ヘレスは口から小瓶を取り出した。
ヘレス「(悔し気に)何も言うな…もう…慣れてる。でも、私は悲しいよ。昼間に変態の代名詞と言われたからなのか…辛いよ。人間は本来産まれた時は裸なんだ。恥ずかしがることはない」
ベロム「(ガン見しながら)うつ伏せで、充分恥じらいを感じてるが…」
ヘレス「(強気に)何か着るものを貸してください」
ベロム「(意味ありげに効果音、真剣な顔)条件がある…」
ヘレス「(悔しさと焦り)条件だと…」
ヘレスは息をのんだ。
ベロム「(タンスをあけて)男物しかないのと、レンタル料をもらう」
ヘレス「(くだらなそうに安堵)…なんだ…そんなことか。まぁ…宿屋に行けば金が置いてあるよ…というか、それどころじゃねぇし…こちとら焦ってとんできたから」
ベロムの服を着るがぶかぶかだった。ベルトをしっかりと締め直す。
ヘレス「(ぶんぶん手を振り下ろし催促)何かこの女を縛るものを…出来るだけ頑丈なやつ」
ベロム「(顎に手をあて真剣そうに)やっぱり…変態だよなぁ…」
一瞬の沈黙をおいてヘレスは言葉を発した。
ヘレス「(怒りを隠し顔をひくつかせながら)…いや…それよりもこの子、毒にかかってるかもしれん。ここらで手頃に入る毒知らない?」
ベロム「(脈をとる)脈拍にも異常ないし、呼吸も正常…寝てるだけに見えるが…」
ベロム「(鎖を手渡しながら)タリウム、テトロドトキシン、水銀、ヒ素、カドミウム…毒薬なんかいっぱいあるだろ。暗殺向きではないが、あの近くですぐ手に入るのはヒ素だな…。港近くにいたんだよな…?川の上流に天然のヒ素化合物鉱床がある。」
ベロム「(考えこむように)コバルト由来のインクをつくってるとかで、近くの工場から汚染水は垂れ流し。ヒ素を含んだコバルト鉱物からカコジルという物質がでるんだが…」
ヘレス「(目が点になる。理解してない様子)カコジル?」
ベロム「(溜息)ヒ素の化合物…ニンニク臭がする…」
一瞬の間があく
ヘレス「(真剣な顔)ニンニク臭…もしカコジルだったら匂いで気絶した…ってことはありえる…よね?」
ベロム「(額に汗)…まぁ。一般的知識では吸血鬼はニンニクに弱い。カコジルの元になったkakodesは悪臭って単語からきている…だが、そんな当てずっぽうがあたるかよ」
へレス「考えもしなかったけど、生け捕りが目的なら・・・ニンニク…あるいは、睡眠薬、麻痺毒で事足りる…でもそれって…どういう…」
ヘレスは、吸血鬼ミヒャエラの関節を外しまくった上で太い鎖を巻き付けた…。
ヘレス「(上目使い)秘密裏に…行動して欲しいから病院以外で…信頼出来る人をあたって毒物かみて」
ベロム「(動揺)何で俺が…」
ヘレス「(べロムの指とへレスの指が組み合うようにし、期待するように目を輝かせて迫るように)ベロムとリキッドって良いコンビかもね。頼りになる。頼らせて」
べロムは嫌そうな顔をした
ナレーション「あれから、1週間が過ぎた。吸血鬼の殺害は未遂に終わり無事に送還された」