5話 屍憑き
〇道中
通り道ということで、リエンに顔を合わせに行った。
へレスが道の真ん中で横たわる
リキッドはヘレスを台車に乗せて走りに走りまくった。
〇港の倉庫近く(夕方)
目的地に到着した頃には、雨がぱらついていた。
乗り物酔いで気持ち悪そうなヘレス
何時間も走らされて疲労感が溜まっているリキッドが立ち並ぶ。
リキッド「(疲労困憊で膝をおる)我ながら…よくやってあげてるよ。本当に…」
ヘレス「(口を押えて気持ち悪そうに)…最悪な気分だよ。何回吐いたことか…酒はしばらく飲みたくない…。なんか、私…宿屋の浴衣姿なんだけど…。全然外行きの格好じゃないし…」
リキッド「(見渡し)…なんか…人が多くないかな…」
ヘレス「(手をゆっくりふりながら)…うーん…なんかこっちみてるね…!ところで知ってる?吸血鬼の最大の弱点」
リキッド「(台車にもたれかかり)突然なに…?」
ヘレス「(二日酔いの薬をのみながら)吸血鬼の弱点は、食事にこそあり」
リキッド「(わけが分からない風に)弱点?毒血にすり替えるとかは無理だよ…ニンニクを無理やり食わせる?」
ヘレス「(微妙そうな顔)…屍憑きなら…不可能じゃないんだよ。そんな毒まみれの屍憑きに噛み付いたりなんかしたら終わりだし。天敵とされる唯一の存在かもね」
リキッド「(敵に挟まれて嫌そうな顔)この状況でそれを言うって…」
ヘレス「(焦りと不安)まぁ…ね…あれだよ。囲まれていうのもあれだけど、転生送還師としては生気を感じないものには敏感かな…」
リキッドとへレスは背中を合わせる。
リキッド「(屍憑きを氷の刀で両断しながら)150体近いかなー。すっかり囲まれている。巣でも突いたんかな」
ヘレス「(焦り)宿屋に送還する方法も視野に入れておいて欲しいなぁ…」
リキッド「(手を広げて雨粒を受け)それはいやかな…。雨足が強くなってきた…。そしてここは港…。1番私の力が発揮される場所…やるだけやる」
ヘレス「(首を左右に強くふる)水想観かぁ〜。でも数が数だからなぁ。諦めよう…」
リキッド「(真剣な目、口元にやり)攻撃したら、多分私は倒れるから…どっか安全な場所に運んで欲しい…」
ヘレス「(不安)自信満々なのかい…。足を切っても床をはってくる連中だよ。」
リキッド「(口元ドアップ)凍らせる…」
リキッド「(海水が勢いよく持ち上がる)水想観 暴走龍」
海の水が…巨大な龍の形を形成していく。
龍の呻き声とともに屍憑きを次から次へと飲み込んでいく。
全て平らげたかと思うと…龍は昇天していった。
リキッド「(長めの数珠を持ち)修じては観じ、観じては行ぜむ!汝が悪想念を打ち払い、御霊を清め得む!氷想観」
リキッド「(振りかぶって)氷壊…」
次の瞬間に砕け、残った残骸は地面に叩きつけられ全てを粉々になった。
へレスは床に縮みこまっている。
ヘレス「(リキッドが倒れ込み下敷きになった)へぶしっ」
ヘレス「(怯えて)何この子、めちゃくちゃ怖いんだけど…。震えが止まらないんですけど!」
リキッドを近くの宿屋に送り届けた。
ヘレス「(扉を開けて)嫌やなぁ…吸血鬼ちゃんは無事かなぁ」
泡をふいて吸血鬼は気絶していた。
ヘレス「(ミヒの顔に手をあて)息はあるんやな…。やっぱり毒餌とかかな…この街らしいっちゃらしいな。屍憑きに対して偉い顰蹙買ったみたいやな」
ヘレス「(物色しながら)生命力がいくら強いからといって、いつまで持つかわからないわ。…医者にみせんといかんかな」
ヘレスはウエストポーチを漁ると、土鼠がいた。他を探すと小瓶があった。
小瓶には小銭がいっぱい入ってる。他にめぼしいものはない。
ヘレスは、中の小銭を全てだした。
屍憑きの体液と肉片を採取して小瓶につめた。
ヘレス「(嫌そう)これしか方法はない…か」
ヘレスは小瓶を口に頬張った。
ヘレス「れんざほーかんてんへーほーかん(蓮座想観 転生送還)」
2人は骨を砕くような不快な音をたてボロ雑巾のようになった。