4話 鬼畜のヘレス
◯宿屋
リキッドはお使いにきていた…。
少年のお仲間さんに手紙を渡さないといけない
真昼だというのに、空は暗い。一雨きそうだ。
少年に言われた宿屋を訪れ、女将さんに部屋を案内された。
部屋は酒瓶で溢れていた。
一体いつからいるんだというレベル。
そこには1人の女性がいた。
浴衣姿で、着衣が乱れている…。
昼間だというのに顔が赤く染まっているのは、さっきまで呑んでいたのかもしれない。
大事そうに猫を抱えて眠っていた。成人した女の子だ…。
仕方がないから起こす
ヘレス「(目をこすりながら)ありり?誰りゃろ。リエンの友らち?」
リキッド「(手渡す)その人からの手紙を預かっている。すぐに動いた方がいい」
ヘレス「(猫をなでながらテンション高めで)私はヘレストレス・オーネスト。通称天秤のヘレスと呼ばれてりゅよー」
リキッド「(驚いて)ヘレスって、地方では言葉にするのも禁忌とされる…あの鬼畜のヘレス!?めちゃくちゃ有名人だよ。変態と恐怖の代名詞じゃん」
ヘレス「(落ち込みながら)本人を前にして、鬼畜…変態って失礼なことを…」
リキッド「(疑いながら)証明して…欲しいかも」
ヘレス「(開き直って徐々にテンションをあげて)うぃ…鬼畜の証明?いやいや…送還師として名高い私の力を見たいと。まぁ確かに蓮座想観は、私だけのユニークスキルだからね…目立っちゃうよねーうひひひひ」
ヘレス「(両手を広げ、膝にのっている猫に注目させる)さぁさぁさぁ、ここに御座しますは我が愛猫。この子を廊下の外に送還して見せましょう」
蓮の花が猫を宙に浮かせる。
ヘレス「(なんまいだーなんまいだーとつぶやき合唱する)蓮座想観 転生送還」
リキッド「(取り乱して)いや…いいから…もうわかった。可愛そうだから…ストップ!」
蓮の花は猫を包んだかと思ったら、猫を押し潰した。
気持ち悪い音とともに花は真っ赤に染まる。
リキッド「(目を強くつむる)うぅ…ごめんなさい…私のせいで…」
ヘレス「(腰をあげ)さぁ、無事に廊下に送還出来たかなー」
ヘレスは襖を開けると猫が気持ち良さそうに寝ていた…。
リキッド「(暗い顔)オリジナルが死んで…コピーが生まれたともとられるから禁忌とされるんだよね…送還師というよりも転生の象徴…」
ヘレス「(腕をくみ偉そうに)私は、100回は軽く死んでるから…もう気にしてないよ〜。慣れだよね…こういうの。覚えてる景色があれば飛ばすことができるよ」
ヘレス「(自慢げ)教わる人がいないから自分で開発した技が多いよ〜。見てみる?5個しかないけど」
リキッド「(微妙そうな顔)わりと天才肌だから…怖いんだよね。技が知られてない分余計に…ユニークスキルは想定することが難しいから」
ヘレス「(テンション高め)褒めすぎだよ」
リキッド「(胸に手をあて)私は、リキッド…よろしく」
リキッド「(首を傾げ)あなたに仕事がまわったということは、倫理を無視した送還かな…」
ヘレス「(思い出そうと)…リキッド?どっかで聞いたような…やっぱり聞いたことないような…。まぁいいや。地下監獄への幽閉してたやつが脱走したからね…秘密裏に回収しないといけないらしいよ」
リキッド「(微妙な顔で)秘密裏かぁ…なんか今外部に情報が漏れたような…」
ヘレス「(首を傾げ)なんか言った?リエンの使いでしょ。事情は知ってるでしょ」
リキッド「(静かに頷く)吸血鬼の送還だろね」
ヘレス「(ぐーサインして)うぃ、その通りら!手紙で場所はだいたいわかったから…案内してくれ」
リキッド「(肩をかしながら)大丈夫?千鳥足じゃないかな…もぅ…雨降りそうだから急いでよ」