13話 見苦しい2人
3章
◯道
ヘレス「いやー、助かるよー!壁紙まで変えてもらって」
リキッド「掃除してばっかりな気が…」
ヘレス「まさか…たぬき柄の壁紙に、たぬきのグッズを揃えられるとわ…一本とられたよ。」
空気が振動し、空からなにかが降ってくる。
リキッド「なんの音?」
ヘレス「たぶん、大砲の音だねー。この港町は昔、海賊の被害や侵略を防ぐ城塞だったんよ。そこに出来たのが今のスラム街。」
リキッド「空から降ってきた包みは?」
ヘレス「あはは…それは…。聞かない方がいいかな」
恐る恐る包みを開く
リキッドは声に出さず、腰を抜かした
ヘレス「マフィアのみせしめだね…逆らったらどうなるかという…。手足が包みに入っていたんでしょ…」
リキッド「どこまで………一体どこまで腐ってるんだこの街は!」
ヘレス「ムルムルとピソークの両国が領土主張したせいで荒れた街…。被害者は加害者を生み、加害者は被害者をうむ。歴史の犠牲になって荒れた街だからね…今は法が乱れて取り締まることも…」
リキッド「許せない!」
ヘレス「ちょっどこに行くんよ!目的地知らないんじゃない?それに、こんな目立つことする奴らが用心棒居ないと思う?危ないよ」
ヘレスはリキッドにしがみついた。
リキッド「やめ、やめれぇー下半身にしがみつくなぁ…スカートが!パンツごと下がるから」
ヘレス「一回落ち着こうよ!」
リキッド「落ち着くのはお前だー」
隣でも似たようなことをしている少年と少女がいた。
2人は14歳ぐらいにみえた。薄汚れた服を着ていた。この街の中でも、特にそれは目立っていた。
少年は、フードつきのパーカーをしていた。フードの中には大量のお菓子が詰め込まれている。少女は1冊の本を持っていた
アムール「落ちついて…馬鹿なんじゃない?」
ミル・リトン「ズボンを引っ張るなよ」
2人の叫び声が周囲に響く。
スカートとズボンが下がる
一同「へ、変態だぁー」
リキッド「ううん…コホン」
ミル「やめときなよ…危ないから」
リキッド「私は強いし、問題ない。それより、あなたの方が心配だな…弱そうだし」
ミル「僕は、決して弱くないし」
リキッド「死人を出すわけにはいかないし…」
ミル「…歳上…と言っても僕とそんなに変わらない同じ子どもでしょ?僕が弱いなら…君も変わらない」
リキッド「私は、強い」
ミル「僕の方が強い」
ヘレス「止めた方がええんかなぁ…」
リキッド「きなさい…軽くひねってあげるから」
ミル「上等!」
2人の殴り合いが始まる。フードに詰まったお菓子があたりに散らばる
ヘレス「歳下を殴る少女か…、女を殴る男か…」
アムール「見苦しい…闘い」
ヘレス「思いやりから引きとめようとしてるんだけどね」
アムール「似た者同士がやると…馬鹿っぽい」
2人の闘いは終結した。
リキッド「…ら…楽勝」
ヘレス「うん、何発か貰ってたけどね…」
ボコボコにされたミル・リトンは横たわりながらも負け惜しみを言った。
ミル「…こんなんじゃ…行かせるわけにはいかない」
ミル「アムール…本を貸してくれ!」
アムール「何をする気?」
ミル「ちょっと脅かすだけ…これも人助け。ひくわけにはいかない」
ミル・リトンは無理矢理、本を奪いとる。
ミル「グリーシー・グリーモアウッドの名において命ずる!我に力を貸し与えたまえ」
何かが、ミルの身体の中をグニャグニャと動き回る。それは太いミミズのようだった。数百を超えるようなそいつらが全身をさまよう。やがて、そいつらは落ち着いた。ミル・リトンの目は、白目は無くなり真っ暗な瞳がこちらを見つめる
リキッド「…降霊術士か…グリーシーグリーモアウッドの悪魔…蟄霊種の何か…と言ったところかな」
凄まじい咆哮に、リキッドは耳を塞いだ。
リキッド「狼かな…何の力かな…」
四足歩行で、ジグザグにフェイントをかけてリキッドに迫る
リキッド「氷壁…」
ミル・リトンは氷の壁に衝突して、気絶してしまった。
リキッド「油断から…だと思うけど…あまりに直線的…どんな能力かすらもわからなかった」
ヘレス「…もしもーし大丈夫?ダメだこりゃ」