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 城下町には沢山の人が溢れていた。楽しそうな子連れの夫婦に五月蝿い八百屋の客引き。

 そのどれもが実に不快でたまらない。

 正直に言ってヨシヒトはそんな気分ではなかったのだ。

 リノアに向けられた「攻撃」の様な何か。

 しかし実際にはそれが何かはわからなかった。

 

 それは確かに感じる何か。リノアに対してだったがヨシヒトは感じる事が出来たし、一方でリノアから離れるとその「攻撃」の様なものは感知できないでいた。


「絵津ね」


 そう呟くことしかできない。

 右を見ても左を見ても絵津を支持する様なポスターばかりが目に入る。

 洗脳でもされているのではないだろうか。


「洗脳………ね。」


  急に一人になったヨシヒトは気が紛れるものを探していたが、元の世界にあった様なゲームや本などがあるはずもなく途方にくれるだけだった。

 書籍は図書館へ行けばあると誰かに聞いたが、この国に図書館があるのかすらも怪しい。

 絵津という日本人が牛耳っている。

 そしておそらく洗脳する能力を持っているのだろう。


「リノアも洗脳されそうになったのか? いや、そんな事できるなら神になってるさ」

 

 あの攻撃の様なもの。実は絵津から発せられる洗脳ビームではなかろうか?

 だったら納得かもしれない。

 俺のリノアに対して「改変」しようとする「攻撃」に反応しないわけがないのだ。

 アイテムボックスに入っていたリノアはもうすでに俺のものであり、何人もそれを侵害することはできないのだ。リノアを除く。


 そう言う訳で「所有物」に対する「攻撃」を感知する事が出来たとすれば。


 ヨシヒトの中で仮説が立てられていく。

 それがどこまで本当で、どこまでが妄想かはわからないが。

 

「するとどうだろう。俺のものだと考えると俺のものとして認識させるとしたら、俺のものでなくても俺のものだと思い込めば全てが俺のものになるのではなかろうか?」


 気持ち悪い呪文の様な言葉が口から吐き出される。


 考えていけばいくほど、絵津の洗脳疑惑からは離れていき、自分の持っているアイテムボックスに興味が移り変わる。

 しかしその通りだ。

 そこらへんに転がっている「何か」も、家を構築しているレンガであっても。あれが俺のものであると認識できればアイテムボックスに入るのではないだろうか?

 そして、入ったアイテムは永久的にヨシヒトのものになるのだ。


「物は試しなんだよな」


 手を叩き客引きをしている八百屋のおじさんの背後に大量に積み上がっているリンゴの様な赤い果物を見る。

 集中。

 果実の真横に扉を開く様なイメージをする。

 空間が歪む。


 その光景に誰も気がついていない。

 実際にはそこに何もない。

 一瞬。


 果実が一つ消えた。


「ん? にいちゃん。そこで何見てんだい? そんなに見てもタダでってのはいけない。少し負けてやるから近くへ来たらどうだい?」


 がちむちの客引きおじさんは、ヨシヒトの視線に気がついて声をかけてきた。


「あ、ああ。すまないがこの国の金を持っていないんだ」


「旅の人かい? そういやぁあんまり見ない人種の顔だね」


「人種。ね。あんたも差別するのか? 俺の国には肌の色でとやかく言う人間が多くてね」


「と言うことはにいちゃんは魔族かい? そうは見えないけどね。いや、これも偏見か。すまないね、そう言った話は慣れなくて。

 この国にはあんまりそんな差別の様なものはないよ。奴隷市だって絵津様が廃止したんだから」


 彼は腕を組みながら語る。


「この国だって最初は貧しかったんだがな、絵津様が仕切り出して数年でとてつもない発展をしている事がわかる様になってきたのさ」


「絵津って誰なんだ?」


「シー。ちゃんと様をつけないと警察がくる。

 そうだな。絵津様は、宰相の息子? だったかな? ? いや、外国の要人だった気が………。

 あれ?」


 男はそのまま考え込む様に頭を抱えて動かなくなった。

 簡単な質問しかしなかったが、何がいけなかったのか。ヨシヒトは罪悪感に苛まれる。


 そのままヨシヒトはその場を去り、アイテムボックスの実験を重ねていくことになる。

 先ほどの果実は一つを残し全てアイテムボックスに入れる事が出来た。

 次に隣に並んでいたオレンジの様なそれも同じ要領でアイテムボックスに吸収する。


 八百屋でいくつかのコツをつかんだヨシヒトは、道を歩きながら目ぼしい店に目を向ける。


 

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