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「なっ」


 江津は、ヨシヒトから見ても少し顔面が崩れているように感じた。

 あの制作途中の銅像よりも、実物の方が少し気持ち悪い。

 豚のような鼻に、左右で少し目の大きさが違う。そして、顔は油でテカっており、豪華な装飾のされた服を着てはいるが体型からしてとても丸い。

 

 異世界にあるような典型的なキモデブ貴族のような。

 ヨシヒトの第一印象はそうれだった。


「お前。かぁいいな」


 カノンを見て一言発した。

 そして、ポケットから「何か」を取り出しカノンへ向けようとしたとき、ヨシヒトが


「おいデブ!」


「あああ? 誰に向かって口聞いてんだぁああ?」


 その「何か」はヨシヒトの方へ向けて発射された。

 

 ように感じた。


「な、何だ」


「く、くそ。

 こ、壊れたのか?」


 身構えたヨシヒトは興ざめしたように


「道具に頼らないと何もできないのか? 雑魚が」


 そういって、アイテムボックスを展開しようとした瞬間に

「申し訳ないのですが、ヨシヒト様。

 ここで帰っていただけませんか?」


「は? どうしてじゃ。ヨシヒトは何もしてないじゃろう」


 スーツ姿の男が部屋に入ってきてそういった。

 その背後には屈強な男集団がおり、並並ならぬステータスを持っていることはすぐにわかった。


「いえ。本当に申し訳ないのですが、彼は国王から一番信頼されている人物でして。

 彼から嫌われれば、気分屋の国王から何を言われるか。そして何をされるかわからないので。

 正直に申せば、安全面からのご提案なのです」


「そうか。カノン。いくぞ」


「待て待て。わしをおいていくのかの?」


「爺さん同士、少し話せばいいんじゃないか?

 先に宿に戻っておく。おい、カノン。早く準備をしろ」


「え、ええ〜ー。待ってくださいよヨシヒトさん。

 ここの御料理を食べてからでいいですかぁ?

 だって、出禁になったのヨシヒトさんだけですし」


 名残惜しそうに、ドレスを脱ごうとするカノンの肩に手を置こうとした江津は、それを察知したカノンにひらりと身を躱され、行き場のない手を不自然にポケットに戻し、それから口を開く。


「彼女は、僕が責任を持ってご案内しよう。

 そうそう。僕からは指一本触れないことをここに誓う」


 「僕からはね」と、念を置き江津は神級契約術式を、言霊師に頼んだ。

 つまり、端的に言えば「契約魔法」であり、その契約を破ればそれに応じた罰を受けることになる。


 サラリーマン風の男性の後ろに控えた一人が、魔術師のようでその契約がなされようとしていた。


「そうだな。カノンに何かあればその心臓が爆散するのはどうだ」


「わかった。契約にそう印そう。

 僕からカノンーーーーーーというのか可愛いな。に触ることがあれば、僕の心臓が爆発する。

 一方で、カノンさんから僕に触れることがあれば。

 つまり、そういうことだ。何も起こらず、僕はカノンさんをもらう」


「何をいってんだ? 脳みそ腐ってんじゃないのか?

 別にカノンがどうなろうとも構わないが、そもそも俺が所有しているわけでもない」


 そうして、契約が成立した。


「あのぉ。ヨシヒトさん」

「どうした?」


「私、帰りたいんですけど」


「と言ってるが?」


 江津に言うが、


「一ヶ月、ここに滞在する。

 そう言う契約だろう」


 契約魔法が成立したとき両者の目の前に出現した、契約の書面。

 その中には、少しフォントが小さく『なお、期間は一ヶ月間とする』とある。

 後出しジャンケンをされたようにムカつくが、


「そうか。じゃあ、そう言うことだ。

 カノン。あとで迎えに来るぞ」


「あ、ああーー。おいていかないでくださいーー」


「大丈夫だ。ドラケンもいる」


「は? わしは国王と話したあとすぐに帰るぞ。

 ギルドの酒場で予約してきたからな」


「ああああああ、助けてくださいいいい」


 カノンは、周囲のメイドから出されたお菓子を食べながら、大量の涙を流していた。


「そもそも、意図して触れることなんてないんですよ。

 気持ち悪いデスゥウゥぅ」


 カノンの鳴き声がこだまする中、一人、ヨシヒトは城の外へ歩き始める。






「さて。何をしようか」


 悪い計画をしようとしているわけではない。本当に何もするあてがないので途方に暮れていた。

 その寂しい背中が、城の門、貴族外の門から外に出ることを確認した江津は、「何か」をカノンへと向ける。


「!?」


 《アストレア・コープ》それは。過去を改変する力。


 しかし、その力はカノンには何の影響もなかった。


「一番古い記憶が、一ヶ月も経ってない? そんなことがあっていいのか?

 だが、そんな風には見え、ないぞ? どう言うことだ!?」


 カノンの記憶は、ダンジョンの出口で生き返ったときから始まっていた。




「ああー。渋いのう。渋い渋い。

 何が王様じゃ。大した金を持ってないくせにのう。

 結局世の中金じゃ。力じゃ」


「そんなことないのではなくて。

 お金を持ってなくても幸せにはなれますわ」


「それはお前さんの持論じゃろうて。

 それとわしは違うんじゃ。

 わしは金と酒があればいいんじゃ」


 ここは、パブ。

 女と性と、酒と肉が入り乱れる酒場の一つ。


 ギルドでの飲みの後、互いの健闘を称え合ったドラケンとその他男どもは、二次会としてここにきた。

 それも全てドラケンが支払いを持つせいで、何十人と男どもが付いてきた。


 その中には、成人したばかりの草食男児もいたし、冒険者になったばかりの若造もたくさんいた。

 それも今や、全裸になりテーブルの上でダンスバトルを繰り広げている。

 

 ポールダンスを披露するペアもおり、ここはカオスの戦場であった。


「あーー渋い。

 渋いのう」


 その日の支払いは、金貨で15枚。


 銀貨10枚で4人家族が一月普通に暮らすことができる金額だ。そして、銀貨100枚で1枚の金貨になる。それの15倍。単純計算で、150ヶ月。一般人が10年間以上も暮らせる金額を一晩で使うことになった。

 その支払いは、ドラケンを通じてこの国が負うのだ。

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