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第3章


01


 北の方に突如出現した天へと聳え立つ塔は途中から雲に隠れており、どこまで続いているのかわからない。

 灰色のそれは、数年前にポンと出現しこれまでに幾度となく冒険者を喰らったのかわからない。


 しかし、生還した者たちは、持ち帰った圧倒的財力で貴族の位を購入でき、それから遊んで暮らせるほどに豊かな暮らしができた。

 その事実は、無謀な挑戦だと知りつつも、冒険者の足を止めることは叶わなかった。


 この世界には、冒険などしなくても稼げる稼業なんて数えられないほど存在している。

 一方で、この世界の神秘はオーバーテクノロジーを用いたこの現代世界を生き易くする。


 結局、この時代の人間たちは、全て過去の遺物と世界の恩恵だけを消費して生きていくのだ。

 だからこそ、神の天罰も、世界の淘汰も受けず、淡々と、この世界で生を消費できるのだ。


 そんな世界に転生した一人の少年がいた。


 【江津礼央えつ れお


 彼は、数年前にこの世界に迷い込んだ転生者の一人である。

 世界に転生する人間など、実は数えられないほど存在する。この世界でもそうだ。


 この世界は、地球よりも遥かに生きるのが楽だ。

 地球と同じような設備が常設されており、インターネットも電子書籍もある。ドラマや、アニメといったサブカルチャーも盛んに作られるようになっている。

 ベーシックインカムを基にした、固定給料。

 そして、少しだけ国に貢献すれば名誉年金だって手に入る。

 転生者の知識を使って、適当な絵を描けばそれは評価され、広告収入で生活することも可能である。


 だが、この世界の人間はなぜそれをしないのか。

 

 答えは明確。


 魔法を使ったほうが楽に生活できるからだ。

 イメージが力となる魔法は、電子機器の操作よりも楽に暮らしを豊かにできる。


 田畑を耕すにも、簡単な調理をするときも、物を運ぶときも。

 人間よりもはるかに巨大な怪物を倒すときも。


 つまり、どれだけ便利な技術があろうと、それよりも楽に金を稼ぎ、生活できるのであれば、楽な方を選ぶのだ。


 どんな世界でも、どんな人間にも共通していることだ。


「そう。俺は、楽して生きていたいんだ」


 江津は、楽をするために知識を振り絞った。

 前世、あまりにも楽をすることが許されなかった学生生活。

 どうして、周りの人間と同じことをしないといけないのか。


 周りと同じことをするが、その方法が違っていてはダメなのか。

 一から百まで周りの人間と同じで作業しなければ、誰がダメになるのか。なぜだ。


 同じ人間を作り出すための工場が学校であり、そんな中、江津だけは楽がしたかった。


 そうして、自分とは違う人間が気に入らない集団に目をつけられ、学校裏でリンチを食らって、それからの記憶がこの世界から始まる。

「俺は、死んでこの世界に転生した。だったら、とにかく楽をして生きていたい」


 そのためにやることは、この世界の知識を得ることだった。


 その結果はすぐにわかった。


 この世界は、自分の知っているゲームの世界である。と。

 だが、一つだけ木になる点がある。


「このゲーム。面倒で辞めたんだった」


 永遠に楽ができるRPGとして買ったが、それは二週目からの話で、詐欺CMで購入したものだった。

 楽ができる。というのは本当のようでいくつかのプレイ動画は自分の思うような世界を作り、自分のやりたいような生活ができていた。


 だがそれは、ラスボスである《アストレア》を殺し、加工したアイテムを使うことで可能になる。


 ラスボスを殺すまでの最短は200時間を超え、江津は何千時間も繰り返し、結果として先に進めなくなった「天空の階段」のダンジョンでつまずいていた。


 しかし、今回の転生は。


 すぐ目の前に「天空の階段」が存在していた。

 そのダンジョンを出現させるために、ゲーム内時間で10年。リアル時間にして1000時間を江津は費やしたが、攻略ができないでいた。


 その攻略記事は余すところなく、画面に穴が開くほどにまで読んだが、それをクリアできずに諦めた。


「いや、今の俺には能力ちからがある」


 それが、この男。江津礼央がこの世界で歩み始めた第一歩で。


 「何故か」塔の上に《アストレア》が殺されその心臓が加工されたアイテムであるはずの《アストレア・コープ》が存在しており。


 それを入手するまでの出来事である。


















 ヨシヒトとカノンは、ドラケンの案内のもと次なる国に入国していた。

 その検査は簡単なもので、出身と僅かな路銀を渡すだけで通ることができた。


 そんな杜撰な管理をしていれば、どんな極悪人だって国に入国できてしまう。

 どんな事態になっても対応できるという、一種の怠慢であろうか。


「だがのう。そんなにすぐに新しいダンジョンができるわけもないかろう」


 ドラケンがヨシヒトに言うが


「いいえ。ドラケンさん。あの塔は多分ダンジョンですよ。

 そうに違いありません」


 リノアが指をさす方を見て、


「あー。そうじゃのう。あれはダンジョンかもしれん。

 わしのしらんダンジョンが、こんな近くにあったなんてのう」


 と。手の平くるっくるで意見を変えていた。


「最初の目的地は、あそこでいいか。そしたら」


 そんなヨシヒトの言葉に頷くと、荷物もないその軽装の3人は、歩みを始めた。

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