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「お、おいドラケン。しっかりしろ」


 ヨシヒトも動こうとするが、自分が思考するよりこの世界の自分が動く体はとても遅い。

 自分の頭と体が別々に分かれたみたいだった。


『それはこの世界に存在するにはレベルが低すぎます。そもそもこのサーバで「ヴァルヴ」に接続出来たのは凄くすごい事ですよ。

 このサーバはあまり知能系ステータスが発展していないようです。魔法という思念系ステータスをすこく高く設定したのですが他の世界より自分で考えるという事ができないようですね。「ヴァルヴ」の扉は全サーバ共通な条件にしていますが、異常な世界サーバ故に色々バグが起こっているようですね。

 あなたという存在も起因しているようです。

 なぜ記憶を消した同一個体が会話できるのでしょう。それに処理速度がニンゲン程度になっているようですね。今の今までわかりませんでした』


「何をいっている? そもそもなんなんだ、そのレベルとは」


『それも含めて、全てがこの先にあります。

 話半分になりましたが、今あなたが接続しているのは第9833番回路ですね。その世界にはまだ三つの回線が生きています。

 しかし、それらは一度も稼働した事はないようですね。』


「な、なんなんだよ。会話ができないのかよ」


 ヨシヒトは目の前の女に見知らぬ恐怖を抱く。


『世界は未だ変革の時間にあります。それはこのサーバでも同じ』


 いつしか体はいつもと同じぐらいに動くようになった。しかし、その視線は彼女から話す事ができないでいた。


『さて、着きましたよ』


 その言葉で今がどこにいるかを理解する。 


 真っ白く調律の取れた建物は地上から見上げると雲を突き抜けどこまでも続いていた。

 左右対称になっている。ここは「ヴァルヴ」という世界の中心だという。


 周りをぐるりたみ回すが、個々周辺はこの塔のようにそびえ立つとても高い建物以外には何もない。


『セントラルタワーと言います。全体を管理している量子コンピュータが理論上1京繋がれた処理速度を持ちます。

 まぁ、あなたでも理解できるように倍数表現をしましたが、実際そんなのの比ではありません。

 あなたが知っているコンピュータというものは未だに世界の一つすらシュミレートする事ができないのですから』


 恐怖でしかない。ヨシヒトが知っている世界じゃない。

 それは自分が触れてきたSF作品のような話であった。

 しかし、それはそんな話で語れるようなお粗末なものではないと直感した。


「俺が元いた世界というもののここで管理されているのか?」


『そうですね。そうなりますが、今まであなたと同じように世界渡りのバグと会話したのはほとんどが古いものになりましてよくわかりません。

 実際にはここで管理されている世界は、また同じように世界をシュミレートしている場合があります。

 つまり、その仮想世界が仮想世界を作り出し、それが無限に連続している可能性もあるのですよ。

 あなたの2番前に会話したオスは、実はヴァルヴシステムからかけ離れた理論形式で動いていました』


「その、ヴァルヴとはなんなんだ。実際にはどんなシステムなんだ? 幾つの世界を管理している? お前たちはどれほどの文明を持っているというんだ?」


 その疑問は溢れ出てくるものである。

 ヨシヒトにとって、彼女は恐怖の対象であるのと同時に興味、関心の対象でもある。

 そして、最後の希望でもあった。


「お前たちが世界を管理しているのであれば、そこで生きている人間を生き返らせることもできるよな!」


『はぁ。それはどうでしょうね。先ほども言ったように別の理論体系のプログラムで動く世界にはあまり干渉できません。私たちが不合理なプログラムシステムの仕組みを理解したくないからです。それは、最も効率の良いシステムではないからです。

 最初の質問から答えましょう』


 そう言って歩き始める彼女に着いてその塔に入る。

 ドラケンは今、完全に忘れられていた。


 すでにどれほどの質問を無視されたか、数えていなかったが。どこの質問から答えるというのだろう。



 入った瞬間に頭痛がした。

 記憶が乱されるように、今の自分が狂って行くように、精神を揺さぶる何かが行われる。

『そうですか。やはり認識できるという事は、システムは生きているのですね。

 どこからログインしているのか不明ですが』


 彼女の声がしてその精神の乱れはおさまる。

 吐き気も気分の悪さも、今の一瞬だけだったようだ。


「な、何をした」


『いえ、あなたから不自然な人格プログラムを感知したので検査しました。あなたはヴァルヴの住民で合っている様ですね』


「つまり、どういう事だよ」


『あなたはサーバ管理された世界にいるという事ですよ。いえ、居た。というべきでしょうか。

 No. 00012。えーと、地球という惑星にのみ知的生命体が現れた、いわゆる私たちの過去を再現した世界ですね。

 なんだか嬉しいですよ。そんな場所からようこそおいでくださいました』


 それでもどういうことか理解できないでいた。

 思考能力の格差が天と地ほどあるからだろうか、それともヨシヒト自身に問題があったのだろうか。

 

『では、質問に答えて行きましょう』


 彼女が指を鳴らした瞬間、その場にテーブルと椅子が二脚、それにティーポットとカップが二組乗ったカートが現れた。

 それに驚くヨシヒトに彼女は優しくはにかんだ。








 しかしまぁ、よくできた玩具おもちゃですね。これは私たちへの当てつけでしょうか?

 

 この男は自分と同じ世界からログインしている事が半分確信的だった。

 この世界ヴァルヴに存在している肉体を持つ生命はほぼ死滅したと言っていい。

 全ては肉体を捨て去った電子的なプログラムの塊となっている。人間を構成している「脳」をコンピュータで再現したものである。

 それは一種のAIだろうが、自らがそれを否定し、それは人間だと言った。


 だが、まだこの世界にも肉体を持った原始的な「人間」が住んでいる。

 ヴァルヴの国全体は、何千年前からも変わらない美しさを保っているが、この国、「惑星くに」を少し出ればまた違った光景が広がっているのだ。

 そこで活動している違法AIが闊歩している無法地帯、不法都市。


 おそらくそこら辺からログインしているのだろうが、このヴァルヴシステムを使ってまでその尻尾を掴む程度でしかなかった。

 どんな人間がこの男の後ろについているのか理解もできない。

 いや、このデータバンクにはその対処法がない。


 完全無欠のコンピュータ「ヴァルヴ」が乱される事は万に一つもあり得ないのだ。


 おそらく世界渡のバグはその違法ログインをした誰かが行ったのだろう。 

 それにこの男もその誰かに操られているのだろう。

 

 だがしかし、目的がわからないのだ。

 その誰かは、何がしたくてこの世界にこの男を送り込んだのか。いや、何をさせたいのだ。


 


 65000年ぶりに稼働した人工人間生成装置は今だに電源が切られる事無く数十以上もの肉体を作り始めていた。




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