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「喉が渇いた。これは死ぬかも」

 

 所持品には水がない。どこまで歩こうが、どこも同じ。前に進んでいるのかさえ心配になるレベルだ。

 しかし、進むにつれて、変わってきたことがある。

 喉が乾くが、体はあまり疲れないのだ。

 かれこれ、数時間は歩いていた。少しペースが早いので、時速8kmと考えて50kmは歩いている。水を我慢しているが、どれだけ歩こうが、疲労が感じられない。


「これは病気か」


 そして、歩くのが面倒になり、その場に腰を下ろす。

 所持品はない。この腰のポーチには筆記用具が入っているだけ。

 と、思っていた。


「本気で喉が渇いた」


 目薬があれば、それでも飲みたい。水に飢えていた。


「………………」


 ポーチを開けた。


『異世界の歩き方』


 一枚のパンフレットが入っていた。

 そして、丁寧に日本語でそう書いてあった。


「異世界ね」


 『ここは、次元の狭間。草原だけの空間。何をしても、何もない、ただの空間。今は魔力に満ちています。異世界に空気に適応してもらうためです。

 異世界の歩き方1。

 異世界にはダンジョンがあります。

 異世界の歩き方2。

 生命を殺すと、レベルアップして強くなります。

 異世界に歩き方3。

 スキルという、する事なす事をバックアップしてくれるシステムがあります。


 さぁ、異世界に行こう!!』


 「なんだ、それ」


 異世界。ダンジョン。そんなの知らない。このパンフレットを作ったやつは、何を考えているのだ。

 そんな世界に、召喚されるのか、死んで転成するのか。

 そもそも、僕にそんなことをして何に得になるのか。


「僕はただの一般人だぞ」



ーーーーーー適合率70%。スキルを選んでください。


「あー、なんか聞こえる。幻聴やばい」


 実は、内心ワクワクしていた。漫画やラノベの世界。そんな、異世界ファンタジーが、始まると、この時は思っていたのだから。


【強盗:売っているものを奪いやすくなる。

 窃盗:人のものを奪いやすくなる。

 アイテムボックス:対象を収納できる。容量は使用者次第。

 モンスターハンター:異人種を殺しやすくなる。

 双眼鏡:目が良くなる。どの程度かは、使用者による。

 生成:素材を思うように加工できるようになる】


 目の前に現れる半透明なディスプレイに、書いてあるものはそれだけ。

 

「こ、これは微妙な」


 異世界無双できるかと思えば、とことん微妙なスキルばかり。アイテムボックスや、生成は後々有利にはなるだろうが、戦闘能力皆無な自分が持っていてもあまり意味がないだろう。

 異世界にはダンジョンというものがあるのだから、モンスターハンターあたりが使えるか。

 いや、幾つ選べるのかによるか。

【二つ、選べます。レベルアップや、そのほかでスキルを得ることができます。その時も同じように選び取得できるようになります。

 でも、スキル選択権は、「異世界の歩き方」を所持しているか否かです】


 答えてくれるその声。


「まぁ、アイテムボックスは重要だ。それを選ぶとして、もう一つ。モンスターハンターのスキルか。それが妥当だろう」


 努力したくない系主人公になれる僕は、このパターンを知っている。

 こうやってスキルを選んで異世界に行くパターンは、スキル無双で、肉体的強さではない。

 ステータスがあったとして、あまり強くないのだろう。

 少しでも、強くなれる手段があったほうがいい。


 まぁ、面倒なので、あまり考えていないが。

 人生なるようになるさ党の僕からすれば、実際どのスキルを選ぼうとどうでもいいのだった。


「じゃあ、その二つで」

 

 言いながら、デスプレイをタッチする。

 一回画面が発光したのち、画面が切り替わる。


【最初のダンジョン都市を選んでください】


【魔界都市ディーン

 戦場都市スカラハム

 自由都市アーバン】


 ダンジョンがあるという、三つの都市の名前か。

 どこでもいいと思うが、妥当に

「自由都市、アーバンだな」

 それ以外考えられない。理由は、戦場には行きたくないし、魔界と言ってるから、魔王とかいそうだから。

 あまり面倒ごとには首を突っ込みたくないのだ。

 自分が楽できれば、それでいいのだ。


「僕のために、人が全てしてくれればいいのに。結局、自分の意識があるが、何もせずにしたいことをする。そんな生活がしたいもんだね」


 独り言は、続く。


「これまでも、勉強勉強なんて面倒なことを押し付けてきて。

 結局、自分らが生み出したお金という概念で、それで縛られて行きているだけじゃないか。

 土地があれば自給自足で自分だけで生活できるのに。それすらもするスペースがない。いや、それを使用にもお金がいる。結局のこの世界はお金が全てなのだから、じゃあ、お金が欲しい。

 何もしなくてもお金が欲しい。

 それがダメなら、少しの努力で、何百倍のお金が欲しい。才能が欲しい」


 異世界。それは、現実逃避の場所。

 何も特殊な能力を持たずに行けば、日本人は誰でも生きられないだろうし、


 どうして、漫画の中の主人公は、自分から面倒ごとに首を突っ込むのか。


「僕は、異世界に行くのなら、欲のままに何もかもをしよう。したくないことはしない。

 したいことをする。

 もしもお金の概念があるのなら、一生困らない分のお金を稼いで、それから楽になりたい」


 ダンジョンがあって、いろんな生物がいる。

 それだけしか情報のない異世界で、そんな妄想を描く。


 もしかすると、すぐに殺されるかもしれない。

「それはそれでいいかもね」


 

 現実世界。大学を卒業したとして、仕事に就職して、同じことを繰り返して、結局お金を稼ぐ。

 別に、自分がいなくてもいいじゃないか。と、不安を持っているこの年頃。


 溜め込んだ欲望と不安。

 

 異世界に行けば、全て解消できる。


「いや、何かを食べるにも、対価がいるとすれば・・・」



 半透明なディスプレイ。戻るボタンがないか探す。

 左下に存在している。


「スキルのモンスターハンターを変更。生成にする。

 泥から白米でも作れば、お金がいらないよな」


 孤独は、幸せになるために欠かせない、必須材料。


 異世界で、僕は幸せを探します。





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