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 それは、深いダンジョンの奥。

 エルフの超級冒険者である、カイエルはその得物である長剣を振り回す。


「なんと、本日は獲物が少ないな」


 相対するモンスターはジャイアントバット。深層97層の一般モンスターである。

 と言いつつ、そのモンスターは基本的に群れで行動し、ジャイアントバット一匹を発見すれば、そこには後100体は存在するほどだと言う。

 

 結局、カイエルが倒したのは、ジャイアントバット132体であり、平均を大きく上回る。

 しかし、カイエルのダンジョンでの基本行動階層は150を大きく上回る為に、100層にいかないこの場所でどれだけモンスターが群れていようが、結局は雑魚なのでなんら問題はなかった。


 100層を超えれば、ジャイアントバットほどの大きさではないが、それ以上の群れで行動するモンスターなどはたくさん存在する為に、全く問題はない。


「それに、このダンジョンに何かあると言うが、結局昔と何も変わりはないな」


「そうだな。珍しく意見が合うようだ。

 ギルドの新人にもあまり見込みのある奴はいなかったしの。

 最近はシケておる」


 ドワーフの超級冒険者。彼は自身よりもはるかに大きな鉄槌をもち、明らかに異様な速さでそれを振り回している。

 一回振るごとに五体前後のモンスターが巻き込まれる。

 しかも、彼の顔には汗一つかいていないので、おそらくは本気でもない。

 ある程度の実力を持った人間でも、この早さで鉄槌が叩きつけられれば骨折以上。死亡も考えられる。


 ドワーフの名前はドラケン。200年前の王国クーデターの際、騎士団長をしており、それから冒険者へと転身。それから、ダンジョンを異常な早さで駆け抜け、冒険者ランクはSランク。それに深層よりも深い場所で見つけられる、ダンジョンドロップ、【破壊の神鉄槌】を手に入れてからは、現存している人族では、誰一人と手がつけられなくなった化け物である。


 彼は、今エルフと競争していた。


 エルフであるカイエル。彼はまだ若い。


 エルフの平均寿命が400と言われているが、しかしカイエルの場合、まだ二桁なのだ。


「39の子供の割には、結構やるではないか」


 カイエルは、ドラケンに全く歯が立たない。しかし、意気込みだけはドラケンに噛み付いて離さない。

 カイエルも深層冒険者。超級冒険者であり、その実力は、一般をはるかに超越する。

 この世界全体で見ても、上位の数%に入るくらいの実力者であるのには間違いはないのだが、その彼を赤児の手を捻るように軽くあしらうのがドラケンである。


「なんの。この程度で褒められたくはない」


「人間で考えれば、まだ10歳程度であろう。そんなエルフが俺と戦線を共にするとはな、はっはっは。歳はとりたくはないもんだ」


 この世界。此の都市も全て。

 人間が基準となる。


 理由は、人口の8割が人間であるからだ。

 そのほか。エルフやドワーフ。亞人族は、彼らで組織を持っており、人間とは交流はあるが、別体系である為に、あまり関係はない。


 長く人間社会で生きるドラケンは、人間基準に全てを考える。

 たまに、自分がドワーフという亞人ということを忘れて。


「老人は、僕に技術を教えて死ねばいいんですよ。若い世代に自分を残せるのは、老人の生きがいでしょう」


「そういうな若輩者め。まだ俺は現役だ」


 そういうが、ドラケンを人間にあてはめて考えてみれば、60代を少し上回っているのだ。

 しかし、彼は、カイエルよりも動きが機敏で、瞬発力はくらべられない。


 そんな会話をしながら、彼らは一般人には考えられないほどのスピードでダンジョンを駆け下りているのだった。

 会話ごとにポップするモンスターは、基本的にはドラケンの威圧で動けなくなるので、その威圧が効かずに、こちらへ向かって来るものだけを殺し、先へ進む。


「それにな。老人はいたわるものだ」


「やっぱり、老人なんだろ。老害め」


 軽口を叩けるほどには、まだ余裕がありすぎる。


「ところで、ダンジョンの異変とは、なんなのだろうな」


 カイエルは頭を悩ませる。

 結局、戦闘能力に長けたカイエルだが、彼は人間的には10歳なのだ。彼がドラケンの足元並みに戦闘能力があるといえば、生まれて此の方ずっと戦闘をしていたのだろう。

 勉強をあまりしてこなかっただけに、知識が偏りすぎている。

 結局は、戦闘能力はドラケン以下。それに知識、頭の良さもドラケンよりも大きく劣っている。

「それを調査するもの、俺たちだろう? それで? 今日は俺に勝つんだろ」


 挑発するようなドラケンの言葉に、二人のスピードはまた早くなる。

 ドラケンの威圧も強くなり、此の階層のモンスターはその場でうずくまることしかできなくなる。

 結局、二人はなんの戦闘もすることなく、130階層にまで進むのだ。


「ここは?」


 カイエルのつぶやきに、ドラケンも「ほぉ」と感嘆を漏らす。

 そこは、ダンジョンの天井まである大きな扉。その装飾は、王国、帝国に比べられないほどに豪華絢爛であり、その側面の壁にも同じような装飾、絵画が描かれていた。


「これが、ダンジョンの異変か?」


「違うぞ。俺も久しぶりに見たが、これはシークレットエリア。隠し領域だな。

 ここに入れば、中の強化されたモンスターを殺すことでしか外に出られないが、その代わりに殺した時にドロップするアイテムは、素晴らしい性能を発揮する」


 そう、ドラケンの此の鉄槌。【破壊の神鉄槌】も別ダンジョンのシークレットエリアで手に入れたのだった。

 だが、彼の場合、こんな浅い階層ではなく、もう少し深い階層であった。

 おそらくだが、ここのドロップアイテムは、ドラケンの鉄槌ほど良いものではないだろう。

 それでも、此のカイエルにとっては、いや人類にとっては果てしないほどのアイテムだろう。

 

 国宝級。ワールドアイテム。そのくらいまでは貴重であろう。その分、能力も強力であろう。


「まぁ、これはそのレベルでは収まらんが。

 カイエルよ。ここはお前さんが行け。危険だったら俺が助けてやるが、力試しだ」


 ドラケンはそのシークレットエリアの扉を、カイエルに言って開かせた。


 そこは、まっすぐに道になっている。

 その道沿いに、ともし火が壁に掛かっており、暗くはない。

 が、その炎は青色である。


 

 シークレットエリア。その道の炎の色で難易度が変わることを、ドラケンが知ることはない。

 いや、此の世界、誰もその事実までたどり着いたものはいない。

 

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