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ヨシヒトは、焦る。カノンに対して、なんの感情を持っていないとは言え、人間であるのだ。
その人間を殺してしまった。その可能性が考えられる現場に、
「お、おい。カノン!?」
そういって、駆け寄る。まだ、呼吸はしていた。
「し、死ぬな。俺のせいにするな!」
「ヨシヒト…………さん」
しゃがんで、そのツノをアイテムボックスに回収した。それが逆に仇となる。
刺さったそこから血が吹き出し、そして、一面を濡らす。
「あが、あっ」
断末魔か、それとも何か。
彼女、カノンは、細かく震える。
筋肉が痙攣しているのだろうか。
カノンはいろんな液体を垂れ流し、それを止める意思すら感じられない。
彼女自身の意識がそこに存在しているのかさえも疑問であるが。
「ま、待てよ。これは、俺じゃない。俺のせいじゃないぞ」
アイテムボックスから出したその鋭利な物体がカノンを刺し殺した。
それが事実だとしても認めない。
これは僕のせいじゃないのだから。
カノンの呼吸は止まっていた。
もしかすると、まだ生きているのかもしれない。生きようともがいているのかもしれないが。
この時に、冷静な判断ができる第三者はいない。
そこにいるのは、ヨシヒトだけ。
「俺は、殺していない」
その場のドロップアイテムと一緒に、カノンの死体が回収された。
それは、ヨシヒトの意思ではない。
ただ、その場にあるドロップアイテムを回収するように自動設定した、それだけのこと。
つまりは、カノンの死体を、ドロップアイテムとして認識してしまったのは、ヨシヒトの意識であって。
「殺してない」そう、呪怨のようにずっと唱え続ける。
ヨシヒトは、願っていた。
死んだとしても、自分は何も悪くない。
「そうだ。生き返らせればいいんだ」
ふと、思った。
ここが異世界なら。ここがダンジョンでいろんなアイテムがドロップするなら。
もしかして、ゲームの中にあるような「復活の薬」なるものが存在するのではないのだろうか。
いや、それを探して、これから一生探検する。十字架を背負って生きていかなければならないことを考えると、自殺したくなる。
幸せを探して異世界を生きると決めたのに。
人間を殺しただけで、人生を中断したくなる、この意思は。
ヨシヒトという人間とは何か。
「別にいいじゃないか。こいつも死んで本望だろう。いろんな人から軽蔑され、いろんな人に差別されるような人生から解放してやったのだ。感謝こそされ、恨まれることはしていないだろう」
そう、自分に、持論を思い込ませるうちに。
ピロン。という音とともに、ポップアップが目の前に現れる。
『個体名:カノン。の所持していたアイテムがアイテムボックスに統合されます』
それとともに、彼女が所持していただろうアイテム一覧が、表になって現れる。
「隠密のマント。レアリティA +か。
これは、カノンに言っていた低位のアイテムというのがこれか?」
それは、大量にあった。
何百枚と、彼女はこれを所持していた。
アイテムのイメージも3Dで表示されている。
それは、今ヨシヒトの着ている「隠密と転移のマント」と酷似しているのだ。
結局、彼女が言う低位のアイテムは、少なくともそんな範疇ではないことがわかる。
少なくとも、これはレアリティがA以上もあると考えれば、売ればそれなりに高い価値があったのではなかろうか?
いや。カノンのことだ。
たくさん見つけて、たくさん所持していることで、そのアイテムの価値がわからなかったのだろう。
たくさん見つけることで、すぐに見つかるものだと、勘違いしてしまっていたのだろう。
これだけで一財産だろうに。
「いや。これを使えば」
少なくとも、昨日行った場所までには、エルフやどドワーフの冒険者はいないだろう。
それ以降に探索しようと思えば、彼らに見つかる危険性も考慮しなければならない。
高位の冒険者だとして、索敵能力も高いに違いない。ハイエナ行為も、いいことではない。逆に糾弾されるような、そんなものでもある。
よって、「復活の薬」なるアイテムを探すには。
あると思わしき場所は深層だが。
そこには、エルフとドワーフがいるかもしれない。
彼らを出し抜く為には。
このアイテムは絶好のアイテムなのではなかろうか。
「深く潜れば、もしかして、俺が殺したことにはならない」
自分で自分を説得する。
「生き返らせれば、俺はこいつを殺していないじゃないか」
いい意味でも、悪い意味でも有名な「カノン」と言う人間は、いなくなれば、逆にわかる。
結局、ヨシヒトと言う人間について来て、その次の日に行くへをくらませたとなれば、1番に疑われるのは、もちろんヨシヒトであるので、結局は、打つ手なし。
「復活の薬」があると仮定して、行動していかなければ、ヨシヒトの精神が、持ちそうにない。
「オペレーション、ハイエナ。復活の薬をゲットせよ。スタート」
奇跡にかけるしかないのだ。




