展開の早さに付いていくのが、精一杯です
床まで垂れる銀色の髪をイケメン2号さんは、無造作に掴んだ。
「伸びたな…。」
「お前が寝すぎなんだよ。」
イケメン同士の会話。
ここまでくると自分の想像力だけでは片付かないなぁ。
「目覚めるつもりもなかったさ。人の世は面倒くさい。」
「まぁな。かと言って異世界に渡ることは神が許さんだろ?」
ライモンさんの大きなため息が霊廟に響く。
「我養い親とは言え、我儘だ。」
「子供だからこそお前に生きていて欲しいんだろ?」
「だからと言って、異世界に目覚めの鍵を求めるか?」
ライモンさんの視線が後ろで所在ない俺に向けられた。
「へっ?」
イケメン2号さんの長い前髪からチラチラ見える紅い瞳が俺を見てるのが分かって視線を反らした。
「これは?」
【これ】扱いにも落ち込むことはないぞ、俺…。
「俺を目覚めさせた主だ。異世界の住人だった。」
イケメン2号さんが、ポカーンと口を開けたまま固まって…笑った。
「すげえな、ライモン…お前愛されてるじゃん。」
「嬉しくない。」
ニカッと笑うイケメン2号さん。
彼はライモンさんを押し退けるように俺の前に立った。
この人も背が高い。
「名前は?」
「み、御劔…あ、玲です。」
イケメン2号さんは、俺を上から下まで見てまたニカッと笑った。
「俺は、ジオン。ダークエルフだ。こいつを目覚めさせてくれて感謝する。」
付いていけないぞ。
「あ、あの?」
「ん?」
この展開は何ですか?と聞きたい。俺は、理想の廃墟に巡り会えた感動で頭でも打って、いや、この廃城の石ころで頭打つなんて本望だし。ってか、そのショックで変な世界に迷い混んだのか?それともこの廃城自体が夢?そもそもドイツに来たのも夢?いやいや…確かに金貯めてチケット購入した。ネットで知り合った…アイツ…誰だ?そうそう日本人留学生の!ともドイツの空港で待ち合わせたはず!あれ~?記憶が…あの後俺は、どうしたんだっけ?なんで此処にいるんだ?
「…るじ、」
アイツの大学の友達とやらの車で…。
「主?」
車の中でコーヒー…
「玲!!」
「うわっ!…あれ?」
目の前にはイケメン…この人は…………。
「ライモンさん………。」
あれ?俺…。我に返った。
「あれ?イケメン2号さん……えっーと、」
俺の様子にライモンさんが安堵の息を吐いたのがわかった。何かすんません。
「ジオンなら、氷の間に行った。」
氷の間?
「アイツの愛しの君が眠っている氷窟だ。城の地下と繋がっているはずだからな。」
リア充かよ。
「眠っているって、イケメン2号…ジオンさんみたいにここじゃないんですね。」
何とか状況を飲み込もうとしていた。
「仲間たちは皆好きな場所で眠ったらしいが、彼女はジオンが側にいると疲れそうだと共に眠ることを拒否したそうだ。」
「?」
彼女じゃないのかな?迷惑がられてるなんて。
「そう言う訳ではないだろうが。」
「此処に眠っているのは後何人いるんですか?」
見たところジオンさんのような聖杯チックなのは2つだった。
「後、一人だな。」
1つの紅い石が装飾された聖杯。ダチョウの卵ほどの球体が見えた
「もう1つありますよ?」
「あぁ、彼女は、形だけ彼に合わせたんだろう。」
ん?またもや分からんが。
「この紅い石が、俺の近衛であり、仲間の紅蓮が眠る石。そっちのは、伽凛だな。中身は殻で別の場所に眠っている。」
俺の夢にしては設定を知らなすぎる。
「今は、どうなっているか知らないが、薬剤庫で眠ってるな。」
「へっ?」
「これだけ崩れている。伽凛のお気に入りの場所が現存しているかは分からん。」
なるほど…。って、あれ、何か圧力ってとこか、ぐわぁーっとしたもんを背後から感じるけど…。
「崩れて、も、もし、その人が眠っている石か何かが壊れたら、どうなるんですか?」
「さぁな。」
あっさり。
『早く、出せ!!』
紅い石から低い怒鳴り声がして飛び退く。
またしても目映い光が満ちて、光の中から大きな影が浮かんだ。
で、かい…し、ゴツイ…のは、甲冑のせいか。
2メートルはあるその人は、兜を取ろうとして…。
「!!」
「あ…。」
首が……倒れなかった俺を誉めて欲しい。
「もげたぞ。」
「うっさい。」
腕に抱られた頭から声がした。
「くそっ、……まぁ、いい。伽凛は?」
もげてるのは、放置?
「恐らく、台所だろうな。」
「言っとくが、万が一伽凛が死んでたら、俺の件も加えて殺すからな。」
物騒な人だ!
首を抱えたまま騎士風男は走り去っていった。
結局、顔は見れなかった。
「ライモンさん…あの人は?」
「帝国が俺に付けた近衛。帝国に離反して行き場が無くなったから¨首なし騎士¨に体を変えてみたら、嫌だったみたいで、少なからず俺を憎んでいる男だ。」
体を変えた?
頭の中で浮かぶのは疑問符だらけだった。
ライモンさんは、俺の疑問を悟ったのだろう頭を掻いて教えてくれた。
「あー実験したんだ。」
「?」
「俺を庇って死んだ紅蓮をどーにか出来ないかと思って、アレでもアイツ…帝国でも随一を誇る魔法騎士だったし、そのまま土に還すには勿体無いし。」
ニッコリと笑顔のライモンさん。
「古い魔導書に書かれていた"首なし騎士"って作れないかなと思ってね。丁度良い所で彼が死にそうだったから、試してみた。で、見事成功。」
実験したのか。自分を守ってくれた騎士の体で。
「主?俺はね、彼のため、強いては伽凛のために彼を不老不死にしたんだよ?」
えっ?
「伽凛はね、人間などとは比べ物にならないほどに長寿なエルフだからね。愛する彼とは共に生涯を歩めない。だから、彼にした実験は、実に有意義なものなんだ。愛する恋人同士を引き裂きたいとは、主も思わないだろう?」
そ、それはそうだけど、なんか釈然としない。
「伽凛が生きていたらきっと美味しいお茶を淹れてくれる。さ、我々も。」
促されるように俺は霊廟を後にした。
続く




