色々ありまして、さまよってます。
連載…始めました。
続いて、ちゃんと終わればいいけど。
そもそも…初めての海外にヨーロッパを選んだのが悪かったのか。
FacebookやInstagramに魅せられて、掛け持ちバイトで稼いだ金を注ぎ込み、勤務交代も何のその、残業に残業を重ねてもぎ取った休みをこの旅行に当てた。
「それ、いいように使われてるだけじゃね?」
大学で知り合った友人は俺のバイト先がブラックだと言った。
確かに…そう思わなくもないが、給金も高くはないが遠い親戚が紹介してくれたバイト先だ。
無下には出来なかったんだ。
だからと言って、こんな目に合うとは誰が思うか。
ふと過ったのは、友人の言った言葉。
「玲は、きょう運の持ち主だからな。」
彼の言う『きょう』が、凶であることは間違いない。
『ヨーロッパ、ドイツの廃墟に行ってくる!!』
そう告げた俺を何とも言えない顔をしていた。
俺のキャラにヨーロッパはキツかったのだろうか。
初めてのドイツ。
この国を訪れた目的は廃病院として有名なベーリッツ・ハイルシュテッテンを見るためだ。
ネットを経由して知り合った廃墟マニアである日本人留学生の健児と知り合えたのもきっかけだ。
ヤツがどれだけ、件の廃病院の素晴らしさを語ってきたか。
いや、彼にしてみれば俺をドイツに誘うことが計画実行の始まりだったのだろう。
俺の持つ旅費を、金になるだろうPCやモバイルを奪うつもりだったのだろう。
眠り薬を盛られてすやすや眠ってしまった俺は盛大なくしゃみで目を覚ました。
目覚めた俺はパニクっていながら、周囲の状況整理を始めることにした。
太陽はまだ空にあるはずなのに木々が生い茂る森の中は薄暗く俺は心細さを感じていた。
じめじめした大地は土と木の匂いがした。
でっかい木にもたれ掛かるような姿勢で俺はいた。
ヒンヤリ冷たいケツ。
はて?ここは何処だ?
見上げると微かにガードレールらしき物がボンヤリ見える。
靄がキツい。
春先なのにまだまだドイツの気候は厳しいみたいだ。
えっ?落ちたのか?驚いて体を起こそうと動かそうとした。が、身体中に一瞬痛みが走ったが、思った程ではなくこれなら動けそうだと冷静になれた。
えっーと、自分の名前…御劔玲。20歳。
よし、自分のことは覚えている。
ドイツに旅行中だったはず。
そうドイツに到着して、空港に迎えにきてくれていた健児の案内で彼の友人の車に乗ったんだ。
荷物、スーツケースはトランクに入れた…な。自分の周囲には…勿論ない。斜めかけ鞄は抱き締めている。
震える手で中身を確かめる。
パスポート…ある。
財布…ある。
ノートPC…ある。
とりあえず、安心。
スマホ…ない。
ま、しがない個人情報しか入ってない。
『お前は地震が起きても絶対寝続けるな。』
今は亡き父の言葉。
『そうそう!で、寝ながら抱き締めているものは、目覚めない限り放さないのよね。』
キャラキャラと笑う、同じく今は亡き母の言葉を思い出す。
「?」
口の中に違和感、切れてるのか?
てか、まぶたも腫れてないか?
モバイルの真っ暗な画面に映る自分の顔は試合終わりのボクサー状態だった。
こんだけ殴られてるのに起きなかったから、怖くなって山に捨てられたのかな。
良く生きてたなぁ。
軋む体を何とかして大木を支えに立ち上がった。
えっーと、とりあえず、うん、この上のガードレールを目指すために登るのは無理だな。
仕方ない…ちょっと休める場所を探そう。
できたら、空が開けてて、電波状況が良いところを探そう。
やばい…。
そう思ったのは、何やら天候が思わしくないから。とか、遠くでオオカミみたいな遠吠えを聞いてしまったから。とか…。
やばい…ちょっと怖い。
自然と早くなる足。
つぅーか、俺、インドア派だし、体力ないし、靴、普通だし、何か体のあちこち痛いし…。
ま、まじ…死ぬかも。
追い立てられるかのように、混乱した俺は森の中を走ったり、登ったり、時々落ちたりした。
体力の限界。
そう悟った時、先程まで降っていた雨が止んでいることに気付いた。
いったいどらくらいの時間を歩いていたのか…木々の隙間に見えるのは満月。
こんな事態に陥っているくせに月を見てちょっと安心した俺は視線を月から外してぎょっとしたのだった。
つづく