表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/51

16.五年間の話

閑話。











 昼は結局パスタになった。フレイたちの方が後に帰ってきたので、先にラウハが調理を始めていたのである。アキとレイマは手伝おうとしたが、戦力外通告がなされたらしい。


「アイナ~。手伝って~」

「いや、こっちこそ手伝ってもらってるから、ありがと」

「どういたしまして!」


 アイナと、メルヴィが手伝いのためにキッチンに入っていく。エステルが憤然と言う。

「私も手伝っていいか!?」

「え、じゃあ、あたしも!」

 ニナも一緒に主張し始めたので、何となく混とんとしてきた。まあ、混ぜて和えるくらいのことはできるんじゃないの、と言うのはアイナの言だ。お姫様が相手でも、言っていることは結構ひどかった。

「そう言えばアキ。お前の姪っ子に会ったぞ」

「アンナか? 可愛いだろ」

 名前を聞かなかったが、あの子はアンナと言うらしい。アキの意見には同意であるが、話には続きがある。

「俺の足に抱き着いて泣かれたんだが」

「おま、何泣かせてんだよ!」

 アキがカッと目を見開いて言った。フレイは「不可抗力だ!」と叫ぶ。

「イラとはぐれたんだよ!」

 そこに、見知ったアイナを見つけて寄ってきたが、間違ってフレイに泣きついたのだろう、と思われる。

「しかも、抱っこしたらぎゃん泣きされた……」

「ぎゃはははは! だせぇ!」

「いや、俺も昨日ぎゃん泣きされたから……」

 笑ったのは、まだぎゃん泣きを経験していないレイマだけだった。アキは打って変わって「わかるぞ」とばかりに肩をたたいた。


「そこ、暇なら二階の部屋片づけてきて。っていうか、フレイはせめてズボン替えてきなよ」


 アイナからもっともなツッコミが入り、男性陣は動き出した。確かに、フレイのズボンはアンナに濡らされたままだ。

 着替えて、使用予定の部屋に入ると、そこは何もない……と言うわけではなかったが、意味不明なものが置いてあった。


「なんじゃこりゃ。機械?」


 レイマが手近な箱のような物体を拾い上げて首をかしげた。確かに、機械っぽい。

「アイナが使ってない部屋で作業とかしてたのかもな」

「ああ……母さんにワーカホリックって言われてたしな」

 アキの言葉に、フレイもヴィエナの言葉を思い出してうなずいた。あり得る。家の中の掃除をしているお掃除ロボットもアイナの手作りだと言っていたし。今のところ、アイナの創作ロボットは掃除関係の者が多い。アイナは掃除が嫌なのかもしれない。

 とりあえず危険物と思われるものを集めて大きめの箱に入れていると、アイナが部屋に顔を出した。

「お疲れ。ありがとう。お昼出来たよ」

「おお~。待ってました」

 レイマが伸びをして言った。時間的には大したことがなかったが、何が出てくるか不安で緊張していたのだ。

「アイナ、この部屋にあるものって……」

「失敗作の機械もあるけど、だいたい部品かな。爆発物はさすがに家の中では扱ってないよ」

「……」

 それはつまり、外なら扱っていると言うことか? だんだん、アイナがマッドサイエンティストなのではないか、と言う気がしてくるフレイたちだった。


 作業を中断して階下に降りると、女性陣は何やら奮闘中だった。


「あ、ねえ、誰か。ジャムの瓶、開けてくれない?」


 ヨーグルトにかけようと思ったけど、開かないの、とラウハは困ったように言った。ニナなら開けられそうな気がしたのだが、すでにためし済みで開かなかったらしい。

「お~。貸してみ」

 この中で一番力があるであろうレイマがジャムの瓶を受け取った。力を籠めてひねる。が。

「なんっじゃこりゃ! 開かねぇんだけど!」

 筋肉が緊張しているのがわかるほど力を込めているが、開かないらしい。レイマに開けられないなら、フレイにもアキにも開けられないだろう。

「っていうか、一回開けた形跡があるよね。アイナ、どんな閉め方したの」

 ニナが眉をひそめて遠慮なく言った。アイナがレイマから瓶を受け取り、「普通に閉めた」とだけ答える。


「力の入れ方の問題じゃないの」


 と、アイナは瓶のふたを開けようと力を込める。いや、さすがにあかねーだろ、と誰もが思った。


「ほら」


 のだが、アイナの手の中で瓶が容器と蓋に分かれた。みんなが唖然とする。

「なんで!?」

「おい、ちょっと待て。アイナ、お前、どんな腕力……」

 ラウハとレイマが声をあげた。まあ、レイマは普通にショックだろうな……。

「腕力っていうか、握力だけどね。力のかけ方の問題でもあるし」

「お前……握力だけ強かったりすんの? 手ぇだってこんなに小さいのに!」

 と、レイマがアイナの手を自分のものと合わせる。アイナは冷たい目でつっこんだ。

「手が小さいのは関係ないだろ。むしろ、女にしては大きい方だし。っていうか、激しく余計なお世話だよ」

「いやぁ、普通に気になるだろ。あ、魔法?」

「んなわけないでしょ。馬鹿なの?」

「アイナ、ひでぇ!」

「レイマが遠慮なさすぎなんだよ」

 アイナはそういうとレイマの手をぺいっと振りほどいて何事もなかったかのように言った。


「アラビアータとカルボナーラ、どっちがいい?」


 何その選択。と思わないではなかったが、こちらは作ってもらった側なので何も言えないフレイたちであった。
















 午後からも作業をしていて問題に上がったのは部屋割りである。アイナはそのまま自分の部屋を使うにしても、他をどうするか。


「まあ、片づけさえすれば部屋はたくさんあるからね」


 アイナ宅は三階建てなので、最上階は屋根裏部屋だ。最悪、荷物はそこに持ち込めばいいとアイナ。やはり、女一人なので、三階はあまり使っていないらしい。

 一応、客室は一階にあり、昨日はエステルたち三人がこの部屋を使った。二階の方が良ければ二階にするのだが。


「いや、借りているのは私たちの方だ。そちらで決めてくれ」


 とエステルに投げられて、さすがのアイナも困ったようでアキを見て言った。

「私、どの階が護衛しやすい、とかわからないんだけど」

「あー、まあ、本来なら人が多い階にいるべきなんだろうが……ニナやメルヴィも一緒だから、大丈夫だろう」

 という彼の言葉を信じて、エステル、ニナ、メルヴィは同室一階、二階の現在ピアノが入っている部屋をラウハが、午前中に多少片づけた二階のもう一部屋をフレイとレイマで使おうと言うことになった。ちなみに、アイナの私室も二階である。もちろん、アキは向かい側の自宅。

 決まってしまえば、あとは部屋に荷物を運びこむだけである。苦労したのはベッドの移動だが、アイナがそうした、狭い扉に大きなものを通す、と言うことが得意で彼女の指示を受けながらベッドを搬入した。


「いや~、お疲れ様。ちょっと休憩しようよ」


 先にベッドを入れ終え、片づけも終わったらしいラウハが提案した。全員が賛成、と同意した。

「アイナは昔、髪が長かったんだな。ラウハも、ショートカットだったのか」

 髪の長さだけ見れば、二人が入れ替わっているようにも見える。エステルがアイナとラウハが映っている数年前の写真を見て言った。ニナとメルヴィも覗き込んでいる。


「ラウハはともかく、アイナは切ったってこと? 失恋?」


 ニナ、遠慮がない。レイマと同じタイプだ。だから、アイナの彼女に対する反応もレイマに対するものと似ている。まあ、女の子だから多少遠慮はあるようだけど。

「髪を切るからって失恋とは限らないでしょ。気分だよ」

「……っていってるけど、機械の動作実験中に髪が巻き込まれたからその場で切っちゃったんだよ」

 と、ラウハの情報提供である。アイナはむっとしたように唇を尖らせたが、それ以上は何も言わなかった。

「結構最近の話だよね。一年くらい前?」

「それくらいかな。エーレスさんに切りそろえてもらったし」

 ラウハの養い親であったエーレスは、一年ほど前に亡くなっている。彼に髪を整えてもらったのなら、それは確かに一年は前のことなのだろう。

「その時、ショートカットだったからだいぶ伸びたよね」

「そうだね」

 アイナとラウハが懐かしそうに眼を細める。自分たちがいない間の話を聞くのは、楽しくもあるがどこかせつなくもあった。












ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


瓶の蓋って自分でしめたなら固くても開けれる……ような気がする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ